作品タイトル不明
【番外編】
フレデリカの元を去った後、俺は辺境へと向かう、乗合馬車の待合所へとやってきた。
砂埃と馬の臭いが混じる、薄汚れた場所だ。
そこには、ローレンスが長椅子に深く腰掛け、うなだれるように座っていた。
「ぎ、ギルマス……?」
「ああ」
ローレンスは一瞬、幽霊でも見たかのように大きく目を剥いたが、すぐに口元を緩めた。
ガシガシ、と音が出るほど乱暴に頭をかく。
「やはり……お見通しだったか……」
「ああ。お前はわかりやすすぎだ」
俺はローレンスの隣にどかりと座る。
古びた木のベンチが、ギシ、と嫌な音を立てた。
行き先はデッドエンド村。こいつの故郷だ。
単に実家に帰る、というわけではないのだろう。
「実は……村が大変なのだ。それで……力を貸して欲しいと思って……」
ローレンスが膝の上で拳を強く握りしめる。
街に出てきたわけか。だが、フレデリカが身重なのを知って、救援を頼むのを辞めたというわけだ。
「馬鹿者が。それで被害が拡大したらどうするつもりだったのだ?」
「……めんぼくない!」
ローレンスがガクリと項垂れ、肩を落とす。
「ふん……。余計な気を回すな。時間の無駄だ」
「しかし……フレデリカさんに申し訳なくて」
なるほど。俺が彼女のそばを離れたら、フレデリカが悲しむだろう。そう思って、遠慮したのか、この男は。
「なめるなよ。アレは俺の女だ」
俺はニヤリと口角を上げた。
誰よりも俺のことをよくわかっている、女なのだ。
「……それもそうだな! いやぁ、アクトさんはいい人を手に入れた」
「ふん……」
俺はふん、と鼻を鳴らし、そっぽを向いた。