軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第91話、情報交換タイム

丸焼き亭のアニータ店長に、ソウヤは醤油を加えた新しいステーキタレを紹介した。

「バロールの町で醤油という新しい調味料ができたのですが、それをブレンドしたやつです。味は保証しますよ。ミストが太鼓判を押しましたから」

「ミストちゃんが評価したなら、間違いないわね!」

アニータも、ニコニコだ。

あのドラゴン娘は、肉とタレに関してはグルメでその評価も厳しい。丸焼き亭の一部の肉料理について、ミストにダメ出しされたことがあって、アニータもミストの舌には信頼を寄せている。

さっそく、新作タレを試してもらう。

「……うん! いいわぁ、これ。味に深みが出たっていうの? 香りもいいわぁ」

好感触だった。ソウヤは付け加える。

「港町じゃ、醤油は漁師たちが魚や貝に使っていたんですよ」

「へぇ。それはショーユのほうも試してみたくなるわね。ソウヤさん、このタレ、あとベースのショーユも買いたいわ。おいくらで、どれくらい売ってもらえるのかしら?」

「まいど! 今あるのは――」

ソウヤはニヤリとする。――さっそくのお買い上げ、ありがとうございます!

というわけで、丸焼き亭に調味料も売り、滑り出しは順調と言える。醬油は、これまで行った町や集落の宿屋、食事処などでも声をかけていくつもりだ。行商ルート、大活用。

――そうそう……。

ソウヤは、短くメモ程度の手紙を書く。内容はシンプルに『醤油、売れたよ!』だ。

アイテムボックスの共有機能を利用した転送システム――転送ボックスと命名――に手紙を入れて、バロールの町はマーク・タルボットの持つアイテムボックスに送る。

さて、かなり距離はあるが、正しく届いたか。なにぶん、ここまで離れた共有化効果は初めてだ。ちゃんと届くか、試してみないとわからない。

あとは、手紙を受け取ったタルボットが返事を書いて、それがソウヤのボックス内に来れば実験は成功と言える。

待つ間、ソウヤは丸焼き亭から移動。エイブルの町の冒険者ギルドへと向かう。

受付嬢に声をかければ、そのままギルドマスターの部屋へと通された。Aランク冒険者は、ここではVIP対応だ。

もっとも、ただランクが高いからだけではなく、ソウヤが商人であることも影響している。町の外の情報を収集するのに都合がいいと、そういうことだ。

ギルド長のガルモーニは、ソウヤを迎えた。お土産に王都で仕入れたワインを出してやれば、いつもの情報交換タイム。

「どうだった、王国東部は?」

「港町は活気があったよ」

雑談をしているという建前なので、お互いに砕けた口調になる。少なくとも友人と呼んで差し支えないのではないか、とソウヤは思っている。

「新しい調味料が出来てね。醤油というんだ」

「へえ、いいものかい?」

「丸焼き亭に行くといい。もうそっちに卸した」

それよりも、だ。

「王都から東部へ行く道中の街道で、獣人が出たって騒ぎになっていた。……何か知っているか」

「さて、こっちは南部街道だからな。東部街道の話は聞かないな。……旅人が襲われたか?」

「その辺り、よくわからない」

王都のギルドは把握していなかった。少なくとも東部街道が使えないほどの大惨事ではないのだろうが……。

「オレ、道中で二回も集団全滅の現場に出くわしてる」

一度目は、謎の馬車が盗賊に襲われて。

二度目は、獣人かもしれない謎青年が、これまた謎の戦士団を全滅させたらしい現場。

「そりゃ不運だったな。だが盗賊のは獣人絡みではないのだろう?」

「だろうね。身元がわからないから気味が悪くてな」

「商人でもなく、貴族でもなく、か。紋章とかあれば手掛かりになったのにな」

「あれば教えているよ。残念ながら、そういうのもなかった」

「入れ墨は?」

「何人かしていたけど、共通しているものはなかったな。組織のマークでも入ってればよかったのに」

「ふむ……」

ガルモーニは、カップにワインを注ぐ。

「正体がわからないのは、まったくの無名か、あるいは意図的に正体を隠しているか」

「何だって?」

「いや……。単なる思いつきだ。ほら、うちにカエデって子がいるだろう?」

「シノビの女の子か」

三ヶ月前のヒュドラ騒動、そしてダンジョンスタンピードの際に、知り合った冒険者だ。

「彼女が何か?」

「両親が、国に関係する暗殺組織にいたんだ。彼女自身、暗殺術に長けている。……あぁ、これは周りの連中には言うなよ」

「……オレ、口は堅いよ」

言いふらすつもりはないのでご安心を。

「武器とか回収していないか、ソウヤ。カエデに確認させたら、もしかしたら手掛かりがあるかもしれん」

「そうだな」

このままわからずじまいというのも気持ち悪い。とりあえず、この件はガルモーニに任せるとして、ソウヤは話題を切り替えた。

「復活ポーションとか、エリクサーとか、その手の話はあるか?」

「あったら、お前に報せているよ」

ガルモーニは笑った。ソウヤが、希少な復活系の魔法薬や聖石などを探しているという噂は、ギルマスの耳にも入っている。

「そう簡単に見つかりゃ世話ないよ」

「だな」

「そういえばお前、この前、一個見つけてなかったか?」

「手元にはないよ」

治癒の聖石のことだろう。ダンジョンで見つかった貴重な石だ。だがこれは、すでに勇者時代の戦友であるベルタ・ランドールの復活に使っている。……果たして彼はいま元気にやっているだろうか。

「やっぱり、商人としては、ああいう貴重な回復薬は商品として持っておきたいのかねぇ」

自身を納得させるようにガルモーニが言った。

「売ったら大金になるだろうしな」

「オレが探しているのは、売るためじゃないよ。回復させて、復活させたい奴らがいるってだけさ」

「死者の復活?」

「違う。まだ死んでないよ」

死者の復活については、宗教関係と暗黒魔術師の死霊術とか面倒が絡むので、それとは違うことは言っておく。

「ただ、そういう全快するようなものがないと、元気に歩き回ったりできない人たちがいるってことだよ」

「それを聞いて安心した」

ガルモーニはホッと息をついた。死者の復活うんぬんというと、ゾンビなどがリアルに徘徊するような世界なので、扱いが難しいものがあるのだ。

「そうか……。見つかるといいな」

ポツリと、ガルモーニは言った。