軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日談195話、冷から火

白騎士の猛烈なる冷気が、ソウヤたちの動きを固くする。

むやみやたらに戦うことを避けようとする者にとっては、こうした静かなる攻撃から始まるタイプはやりづらさがあった。

だが、世の中にはそうした遠慮する者ばかりではない。

すっとミストが深呼吸した。

否、ただの呼吸ではなかった。彼女は問答無用で、ドラゴンブレスを吐き出した。

激しい破壊の一撃は、白騎士に防御の構えを取らせたが、あっという間に飲み込まれた。ドラゴンブレスが消えた時、バラバラと氷の破片となって騎士の姿はどこにもなかった。

「……あー、ミスト?」

ソウヤは半ば呆然と、相方を見やる。霧竜娘は、余裕の微笑を浮かべる。

「大層な格好をしていたけど、思っていたより雑魚だったわね」

「普通、ドラゴンブレスの直撃を受けて立っていられるものではないと思うが?」

ジンも皮肉げに言った。守護者だからといって、ドラゴンブレスに対して無傷でいられるわけではない。

ソウヤは首を横に振る。

「いきなりドラゴンブレスとか。ぶっ飛んでるな」

「いきなりではないわよ」

ミストは出来の悪い弟をたしなめるような顔になった。

「先に冷気で仕掛けてきたのは向こうよ? 正当なカウンターだわ」

「……それはまあ」

そう。ソウヤは嘆息した。

確かに戦いとはお行儀のいいものではない。挨拶をしてから戦いましょうなんて礼儀は普通はなく……あるにはあるがそれは強者の余裕、個人の決闘などに限る。

こと戦闘では、己が課したルールのもとに戦っている。それを相手に期待するのは危険であるし、押しつけてもいけない。そもそも相手のルールに従ういわれなどないのだ。かえって裏をかかれる材料を相手に与えるようなものだ。

冷気の白騎士は、ソウヤたちに対して運動能力低下を促す攻撃を、何の予告もなく、文字通り問答無用で使ってきた。

ミストの言う通り、先手をとったのは相手のほうだ。仕掛けたからには、ドラゴンブレスで吹き飛ばされようが文句をつけられる立場ではない。

「まあ、ああいう冷気タイプって下手に斬りかかると凍ってしまうとか、変なギミックを持ってそうだしな」

ソウヤはイメージで思ったことを口にする。昔から冷気系に対して、近接攻撃系は相性がよくないイメージがある。

「ただ、まさかドラゴンブレス一発で退場になるとは、思っていなかった」

「拍子抜けよね」

ミストは同意した。バトルジャンキーなところがある彼女としても、もう少し手応えがある相手だと思っていたようだった。

気分としては牽制をうったら、それで終わってしまったというところだろう。

「ドラゴンブレスは牽制で放つものではないと思うよ」

老魔術師は呆れ混じりに言うのだった。いきなり最大級の攻撃を放っておいて、牽制とはこれいかに。

「いいのよ。ワタシ、寒いの嫌いだし」

好き嫌いで吹き飛ばされた守護者。ソウヤは一定の同情をしつつ、さらに先へと進む。

しかし、先ほどの白騎士は、例の四姉妹守護者とは別のようだったが、最後の守護者は出てこないのだろうか……?

そう思っていたら、急に空気が熱を帯びた。まるで火山島から時空回廊までの溶岩ルートで感じる熱気のようでもあった。

一本道のはずだが、もしかして外に戻ってきてしまったのではないか――そんな思いがソウヤの脳裏をよぎった時、ジンが目を細めた。

「お出ましのようだ」

視線の先、三人の行く先に、一人の影。

戦乙女――銀髪ストレートヘア、白銀の鎧には赤いラインが入っている。手にするのは槍。女性としては長身。火、もしくは炎の守護者。四姉妹の長女であろう。その表情は非常に冷めていて、やや無表情寄りであった。

「炎の守護者だな。てっきり、見るからに熱血っぽいのを想像していたんだが……」

ソウヤは顔が引きつる。

「かなりクールっぽいな」

その代わり、威圧感が半端なかった。降りかかる熱気の中に、熱した鉄の塊を口の中に突っ込まれたような圧迫感が混じる。

火はそこにある。ただ静かに。しかし触れるモノを燃やす力を秘めて。

無言のプレッシャーとは、こういうのを指すのだろう。予想に反して物静か。しかし強い。同時に、美しいとも思った。

それとも口を開いた瞬間、イメージが崩れるタイプだろうか? 炎の守護者と聞けば、どうしても熱い言葉や、熱血っぷりを想像してしまうが。

ジンは視線を炎の守護者とソウヤの間で行き来させ、そして言った。

「何を考えてる?」

「美人だなと思った」

ソウヤは正直だった。

「とても強そうだ」

「強いというのは同意できるが……美人というのもまあわかるが、たぶん君が今抱いているイメージとは違うと思うよ、彼女は」

四姉妹守護者のことを知っているジンは、そう言うのだ。

「彼女は……、サラはとても面倒くさがりなんだ」

「……うん?」

「ねえねえ、お爺ちゃん」

ミストが口を開いた。

「ちょっとここの温度、高くない?」

「高い。というかそろそろ50度を超える」

「え、そこまで?」

ソウヤはびっくりする。それほどの暑さは感じないが――

「それは私が魔法で調整しているからだ。彼女、一歩も動かさずに戦いを終わらせようとしているぞ。……っとここで急に気温を上げるのをやめてくれないか」

ジンが文句を言い出した。炎の守護者は、ふん、と気怠そうに鼻をならした。

「役目でなければ、コタツで寝ていたいんだがな。さっさとくたばるか、帰ってくれ」

冷気から一転、すさまじい熱気が辺りに広がる。ジンの環境コントロールが追いついていないほどの気温急上昇。寒暖差で風邪、ではなく脱水症状になりそうだった。

「そういう奴には――」

ミストが強く息を吸い、次の瞬間吐き出した。ドラゴンブレス! その怒濤のドラゴンの吐息だが、炎の守護者は手にした槍、その穂先を向けた。

「ファイアーブレス」

槍からファイアードラゴンもかくやの炎の渦が放たれた。