軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日談156話、古き者たち

バァ金属なるものが、武器の素材によいらしいと聞いたソウヤ。自分が使う武器なので、疎かにはできない。

希少らしいから探しにいくことを決めるが、手掛かりはなかった。

ソウヤにバァ金属を見せたロッシュヴァーグも。

『これは旅の途中でそのまた流れの冒険者からもらったものじゃからな。どこで手に入れたかわからん』

聞けば、その冒険者も誰かからもらい、その金属について何なのかを武器職人でドワーフであるロッシュヴァーグに尋ねたのだという。それで調べまくった結果、どうやら伝説のバァ金属らしいとまで突き止めた。

そんなわけで、ソウヤは友人から小石ほどのバァ金属を借りて、伝説の金属もしくはその材料となる鉱物を探すのである。

伝説と言えば、ジン・クレイマンの浮遊島も伝説の一つではあった。ソウヤは、頼りになる老魔術師に尋ねる。

「――これなんだがね、爺さん。何かわかるかい?」

「……」

ジンはその金属を預かり、手の平で転がすと遠い目になった。

「この世界にも、あったのか」

「爺さん?」

「私もこの世界では、これには初めて遭遇したんだがね――」

「この世界では、って言った?」

「私が異世界トラベラーなのは、前に話したな」

様々な異世界を渡り歩いた魔術師。元々はこの世界の住人ではないジン・クレイマン。クレイマンという名前もこの世界での名義であり、世界ごとに名前を変えている。

「とある世界では、ブァイナ金属と呼ばれていた。不変の金属とも言われていたな」

「バァイナ?」

「ブァイナ?」

発音に悩まされるソウヤをよそに、ジンはやはり遠くを見る。

「どういう理由でこの世界に流れてきたのか……。いや、あるいはここが発祥の可能性もあるし、あるいは複数の世界で存在している金属なのかもしれない」

どこの世界にも鉄や銅など金属が存在するように。

「とはいえ、私はこの世界ではこのバァ金属というものを見つけてないのでね。手掛かりはない」

「そうか……。いや、ありがとう参考になったよ」

ソウヤは礼を言うと退出した。次の心当たりのもとへ移動するためだ。そんな元勇者の背中を見送りながら、ジンは顎髭を撫でつつ、考える。

「あれ、どうやって作るんだっけ……?」

・ ・ ・

ソウヤは次の心当たりを訪ねた。

地面に埋まっているものなら、我らがアースドラゴン師匠が何か知っているのではないか。そう思い、彼のねぐらへ足を踏み入れたのだが……。

「アースドラゴン爺さん……?」

巨大なドラゴンの姿――本来の彼の姿で寝ていた。息はあるが、その生命というべき魔力がだいぶ弱くなっているのを感じ取る。かなりの老齢――長寿のドラゴンにあっても最年長の彼である。

『……ソウヤか』

すっと目が開いたアースドラゴンだが、すぐにその目を閉じた。

『最期に訪れるのがお主とはな……』

「最後?」

嫌な予感がした。そして口に出すことを恐れつつ、だがソウヤは察してしまった。命が尽きようとしている。

「アースドラゴンの爺さん……」

『そんな声を出すでない。いよいよわしも天寿を全うする時が……きた。それだけのことじゃ』

アースドラゴンはじっとしている。

『数万年も生きれば、老いもする……。いや数万は盛りすぎたかな。ふふ、いつから生きておるのか、もう思い出せもしない』

詰まったような息を吐くアースドラゴン。呼吸音ですら、正常のそれとは言い難い。

『まあ、死ぬ時は、もっと苦しいものかもと思っておったが、病気もなく怪我もなく、このまま安らかに眠れる。身体がそのまま沈むようじゃ。もうほとんど頭を上がらん』

「つい最近まで、元気だったじゃないか……」

ソウヤは歩み寄ると、アースドラゴンの体を撫でる。

――ドラゴンの鱗って、こんなカサカサだったっけ?

『生あるものには、いずれ死が訪れる。わしの番がきただけということだ』

弱くなる時はあっという間だ、とアースドラゴンは笑った。

『後継者ができ、しかもそやつに寝首をかかれることなく寿命を迎えられた。わしは、幸せものじゃ』

わずかにアースドラゴンの目が開く。

『よいか、ソウヤよ。アースドラゴンの力を受け継ぎし者よ。大地の声に耳を傾けよ。大地に力を伸ばし、一体となれ。……さすれば、おのずと問題は解決する』

よいな、とアースドラゴンは再び目を閉じた。

『わしを、あの島に連れて行ってくれ。……大丈夫、お主が、そこに行くだけでよい。わしは、そこに――』

「アースドラゴンの爺さん!」

『――』

「………………爺さん」

ソウヤは右手で自身の頭を押さえた。そこにいたアースドラゴンの巨体は、すぅー、と大気に溶け込み、魔力となって消えていく。

アースドラゴンは天寿を全うした。ソウヤは込み上げてきた涙を拭う。短い付き合いだったが、自身の半身を奪われたような悲しみが押し寄せる。

その時、遠くからドラゴンの声が聞こえた。一瞬、アースドラゴンの咆哮かと思ったが、違った。

「……クラウドドラゴンか」

風の竜が鳴いている。力強く、しかしどこか哀愁を感じるそれは、四大ドラゴンの一角である大地のドラゴンを見送る声か。そしてもう一つ。

「アクアドラゴン……」

天への咆哮。古き友への弔いの声が、大地に響き渡った。