軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日談146話、玉座の間がない

どうしたものか。

ミストと影竜は顔を見合わせていた。そこへソウヤとジンが追いつく。

「何をやっているんだ?」

不審に思い尋ねるソウヤ。ミストは首をかしげた。

「それがね、ないのよ」

「ない? 何が?」

「玉座の間」

影竜が言った。

「ガルとかいうイケメンが先行しているのだろう? そいつもいない」

「そんな馬鹿な」

ここまでの通り道で、カリュプスメンバーたちの亡骸を見た。ソウヤは、その全てをアイテムボックスに回収した。その中に、ガルの姿はなかった。追い抜かしたのでなければ、彼がいなければおかしいのだ。

「ここが行き止まりなのか?」

「たぶん、そう」

ミストは顔をしかめた。ジンは口を開く。

「これは、結界かもしれない」

「結界?」

「城の構造、外から見たそれと、室内の構造が違う。我々が向かっていた玉座の間への道が、結界で塞がれたのだろう」

老魔術師の推測に、ソウヤは眉をひそめる。

「今さら、結界は遅いんじゃないか?」

それとも、先行していたはずのガルが迫ってきて、守備する魔族兵が突破されてしまい、最後の防衛手段とばかりに結界とやらを発動したのか。

ミストは言った。

「そもそも、ガルもいないし。その結界が張られる前に、中に入ってるってことかしら?」

「つまり、あれか?」

影竜は腕を組んで、難しい表情を浮かべる。

「その結界を張った奴……。この城のボスは、ガルと一対一で戦うために、この結界を張ったってことか?」

ソウヤ、ジン、ミストが驚いた目で、影竜を見た。

「……な、何だ? 何かおかしなことを言ったか?」

「影竜のくせに、核心をついてる気がするわ」

「おい、ミスト!」

「何故、そのボスがガルと決闘を望んでいるかの理由についての説明がないが――」

ジンは自らの顎髭を撫でつける。

「ガルたちからすれば、宿敵を追ってここまで来ているわけで、因縁という意味では、それらしくもある」

ガルは、カリュプスを滅ぼしたブルハを憎んでいる。彼とその仲間たちの復讐であるが、狙われているブルハに、ガルたちのそれに付き合う動機はあるのか?

――まあ、知らないだけで、あるのかもな、あちらにも因縁が。

ソウヤはそう思うことにした。

「ともあれ、ここで黙って待っているわけにもいかないよな? 正直、結界ってどうなっているのかさっぱりわからないが……爺さん、何か手は?」

「どこかに痕跡があると、辿れるのだが……」

珍しくジンが自信なさげに言った。

「この結界、おそらく異空間系だ。ここではないどこかと繋がっていて、現実のここではないのだろう」

老魔術師は歩き出す。最深と思われる壁に沿って、ぐるりと回る。ソウヤも後に続く。一周すると、ミストと影竜が待っていた。

「この中に、玉座の間があるってか?」

「だとしたら、小さ過ぎるね」

「あー、確かに」

一周した壁で囲われたところの大きさは、ちょっと大きな個室といった程度しかない。玉座の間といえば、広々とした場所を想像するから、本当にこちら側とは別に異空間があるのだろう。

「ここより奥はなかったってことは、確定だろうなぁ。で、爺さん、魔法か何かで結界は解けないのか?」

専門家の意見を聞けば、ジンは腕を組んだ。

「さっきも行った通り、こちらと向こうの境目、その痕跡を見つければ、何とかな。要するに鍵穴を探せ、ということだが――おっと、ミスト嬢、強引に破壊しようとしないでくれよ」

無理矢理、こじ開けようとすれば鍵穴だって壊れる。ミストがブレスで壁を吹き飛ばそうとした空気を察して止めるジンである。

「ソウヤ、手伝ってくれ。どこかに継ぎ目があるはずなんだが、ひどく小さいようだ」

「わかった、手伝うが……。具体的にはどうすればいいんだ?」

「魔力の流れを感じろ。違和感がある場所、それが継ぎ目の可能性が高い」

「おう」

ソウヤは瞑想するように目を閉じる。アースドラゴンから授かった力で、魔力を探る。ジンが手伝えというからには、相当継ぎ目とやらは小さいようだ。雑ならば、

当にジンが見つけているだろうから。

「わ!?」

突然、影竜が声を上げた。せっかく目を閉じたソウヤもびっくりして目を開ける。

「いきなり何だ?」

そちらを見れば、影竜は一人で――

「ミストは、どこへ行った?」

「そのミストが突然、消えちゃったんだよ!」

影竜が声を張り上げた。

「さっきまでそこにいたのに! 壁に触っていたら、突然! どういうことなんだ?」

「……継ぎ目に触れたんだろう」

ジンが、きっぱりと告げた。

「不用意に空間の切れ目に触って、吸い込まれたのだろうな」

つまり、と言ってジンは、ミストが立っていた場所の近くに立った。

「探しているものは、この辺りにある」

「あのアホ」

影竜が顔をしかめるが、ジンは涼しい顔である。

「いや、むしろ手掛かりを見つけてくれたんだ。手間が少し軽くなったよ」

老魔術師は前向きであった。

・ ・ ・

「あれー、ここ、どこかしら……?」

ミストは、見知らぬ場所にいて、眉を下げる。

城の中のようだが、その居住区画といったところか。何やら不快な悪臭が漂っているが。

「気に入らないわね」

状況はわからないが、転移で飛ばされたか、偶然にも探している異空間に入ってしまったか。

「後者ならラッキーだけど……さて」

どこから入ったかわからない。それでは戻って報告もできない。ミストはため息をつくと、竜爪槍を構え、気配を探りながら探索を開始した。