軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日談135話、相棒とは

ガルに挑むは、ガルの姿に化けた魔族。

魔王軍残党の幹部であるメレオーは、姿を変えることができる。ある程度体のサイズを変えることができるため、男性、女性問わずなりすますこともできる。

だが、ただの物まねではない。

「あいつ……!?」

様子を見ていたカリュプスメンバーたちは目を見開く。

「ガルと同じ動きを……!?」

素早さを含む動きについていくどころか互角。仲間たちでさえ見慣れたガルと見分けがつかないほどの動きを見せる。

目まぐるしく動き回るガルとメレオー。否、ガルとガルのようだ。

アズマが苦い顔になる。

「お前ら、まだどっちが猿マネ野郎か、わかってるよな?」

「今のところは……」

トゥリパが顔面を蒼白にする。

「でも、これ以上は、わからなくなるかも……」

ガルがスピードを上げる。もう片方、魔族が化けるガルもそれに追従する。後追いをしている方が偽者か――そう思った矢先、メレオーの化けたガルはさらにスピードを上げた。対してガルもその速度についていく。

剣同士が激しくぶつかる。一瞬の瞬きも許されない高速戦闘。その僅かな行動一つ見逃したら最後、どちらがどちらかわからなくなる。

カリュプスメンバーたちは動くことができず、注視せざるを得なかった。

「やるな」

ガルがボソリと言った。

「まるで鏡の中の俺と戦っているようだ」

「……まだ、これからだ」

さらにスピードアップ。位置が入れ替わり、どちらが優勢かもわからないほど拮抗している。

「……駄目だ、どっちがどっちかわからなくなった!」

アズマが瞬きを繰り返した。冷静に戦いを見ていたグリードは口を開いた。

「あの魔族、身体能力までガルを真似ているんだ」

しかしただ真似ているわけでもない。

「おそらくだが、あの魔族は人間の骨格、筋肉の付き方、体の構造を見抜く力があるんだ。あれで外見を真似てるだけでなく、動きの限界までそっくりそのまま再現しやがる」

「動きの限界まで……?」

体をガルそのものにすることで、ガルがとれる動きを、まったく同じ範囲で動かせる。だからガルと同じスピードまで、ガルがその速度を見せずとも追従するだけでなく、ガルより先に出すことができるのだ。

「ただの猿マネする魔族じゃないってことか……! だが、どうするよ?」

アズマは焦燥にかられる。

「下手に手を出せねぇ。……おれたちだけで先に行くか?」

ちら、と片方のガルの目線が、カリュプスメンバーたちを見た。次の瞬間、突然の煙幕が噴き出し、周囲の視界を覆い隠した。

「来るぞ!」

グリードが警告した。煙に巻かれ、互いを見失う。それほどの濃厚な煙だった。そして――

「ぐふっ!?」

「スナーブ!?」

くぐもった声に、アズマが叫ぶ。煙の中から、ふらっと影が過る。見えたのは無口な相棒であるアフマル。

「アフマル! スナーブは――」

言いかけたところで、仲間であるはずのアフマルがナイフで襲いかかってきた。アズマは咄嗟に武器で防ぐ。

「てめぇの攻撃挙動はミリ単位でわかるくらい、覚えてるんだよ!」

アズマは冷や汗をかく。普段の訓練を相棒としていたからこそ、反射的に間に合った防御だった。

「ちっ、この猿マネ野郎、あの一瞬でそこまで……」

煙が薄くなる。アフマルの偽者に、本物のアフマルが挑みかかる。同じ動きができる敵は、それを的確に防ぐ。

「ちっ、しゃあねえな。ガル、それとお前ら! ここはおれとアフマルで仕留めるから、先に行け!」

「アズマ!?」

グリードが驚くが、アズマは薄ら笑いを浮かべつつ、アフマル同士の戦いを注視する。

「数が多いと、とっさに変身された時に反応が鈍る! あいつ相手には、理想は一対一、もしくはよく訓練された二対一だ。人数がいても邪魔なんだよ! わかったら行け!」

「お前……」

グリードがガルを見れば、彼は頷き、踵を返した。トゥリパもそれに続き、スナーブがすでに事切れているのを見たグリードも駆け出す。

「お前ら、死ぬんじゃねえぞ……!」

その場を離れるグリード。アズマは苦笑する。

「……どうかな。あいつを倒すには、おれが死ぬのが確実かもしれねえわ」

アフマルとアフマルに化けた魔族の戦いは、ガルの時と同様、互角。

「ああやって近接戦をやっている場に割り込むのって難しいんだよな」

アズマはダガーを構えた。かろうじて、どちらのアフマルが本物かわかるが、これ以上続くと、おそらくわからなくなる。

「まあ、仮にわからなくなってもいいんだけどな。やるぜ、相棒!」

アズマは突進した。寸分違わず同じ姿、体型はおろか、黒子の位置まで同じというのは、何ともやりにくいものだ。

「本物と偽者の決定的な違いってのを、教えてやるぜ……!」

偽者アフマルが、アズマの突進を見た。その目の動き、わずかな迷いをアズマは見逃さない。

――本物は、そこで動揺はしないんだよ!

アズマの突きを偽者アフマルは躱し、ナイフを突き刺してきた。心臓をやられた。

「本物は……そういうことはしない、ん……だぜ」

その僅かな隙に、本物アフマルは、偽者アフマルの側頭部にナイフの切っ先をねじ込んだ。脳天への一撃は、偽者――メレオーを絶命させた。

魔族は倒れた。

しかしアズマもまたその命を落とした。長年の相棒であるアフマルは、そんな友の亡骸の前に膝をつき、しかしやはり何も言わなかった。

ただ一筋の涙がこぼれた。