軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日談136話、正面で暴れる者たち

正面から城に攻め込むというのは、人間の感覚からすれば少々無謀と考える。

しかし、種族も変われば感覚も違ってくる。

たとえば、ドラゴンたちからすれば、何か裏手に回るとかそのようなことは考えず、正面から戦う。

他の種族を上回る圧倒的なパワー。ブレスを使えば、大軍とてひとたまりもない攻撃力は、城攻めでも遺憾なく発揮される。

とはいえ――

ソウヤは、魔族兵を叩き潰していくドラゴンたちを見やる。

この『正面から』という感覚は、人間の考えているそれと、ドラゴンたちの認識は異なる。

人間の正面から、というのは正々堂々という気持ちもこもっているのだろうが、この感覚は、ドラゴンにはわからない。

彼、彼女らの正面から戦うというのは、ごく自然の感覚で、そこに正々堂々や卑怯という感情はない。

我々は目の前にいる敵と戦う。敵と相対しようが、背中を向けていようが、こちらは『正面を向いている』のだから、正面から戦っている――そう考えるのだ。

ドラゴンというのは、自分本位である。他の種族の感覚がどうのなど考えない。我は我はである。

だから、他種族が『正面から』とか、『堂々と戦う』などと言っていると、こいつは何を当たり前のことを言っているのだ?――となる。

お前は後ろを見て戦うのか、とか、最初から堂々と戦っていなかったのか、などと思うわけだ。

では卑怯な手を使われたら、当たり前だと流せるのかというと、それはそれで話は変わってくる。ドラゴンも、相手の卑怯、卑劣には人並み以上に怒る。要するに、自分に甘く、他者には厳しいのだ。

「ああ、もう鬱陶しいっ!」

ミストが声を荒らげた。後から後から湧いて出てくる魔族兵に、いい加減痺れを切らしたのだ。

ドラゴンブレス!

苛立った彼女のそれは、重盾で固めた魔族兵の壁を一階の壁などとまとめて業火に焼き尽くした。

「これは危ない」

ジンが防御魔法を使って、ブレスの熱気を遮断した。熱によって怯んだ魔族兵に、ソウヤは容赦なく金棒を叩き込んだ。ぐちゃりと潰れる敵。

ソウヤの左手方向の敵が、ミストのブレスで吹き飛んだが、右からやってくる敵は、影竜と共に防いでいる状態だ。

その影竜は言った。

「確かに、個々の敵を相手にするのも面倒になってきたな」

「正面から入ったからなぁ」

ぼやく一方で、ソウヤはまた一体、魔族兵を返り討ちにする。

「それでなくても、これだけ派手にやれば、守備隊が集まってくるものだし」

わかりきったことである。敵の方から来てくれるのだから、全部倒せていい、なんて調子のいいことを言っていたミストだが、面倒になってくると先のようにブレスで、城ごと破壊しようとするのだから――

「いやまあ、間違っていないし、まとめて倒せるなら効率よくというの正しいけどさあ……」

ソウヤはオーク兵の胴体に金棒をぶち当て、ボールよろしくぶっ飛ばすと後続の魔族兵らにぶつけた。

「ミスト! ガルたちがいるかもしれないんだぞ! 巻き添えでやっちまった、なんて洒落にならないんだからな!」

「わかって、いるわよ!」

竜爪槍をぶん回し、ゴブリンやリザードマンを切断、貫通、投げ飛ばす。

「ちゃーんと、人間がいない方向に使っているから、安心しなさい!」

「……それが言葉通りだと、いいんだけどな」

ボソリとソウヤは呟く。

ドラゴンは調子がいい。本当に気をつけてやったのか、言われるまで忘れていたかわからない。

「それを言ったら、アクアドラゴンやクラウドドラゴンはどうなのよ!」

ミストが叫んだ。

「あの人たちだって、ブレスでガンガン城を削っているじゃないの!」

「人?」

ドラゴンは人なのか云々――

ソウヤがオーガの金棒を逆に打ち返すと、ジンがたしなめる。

「それ以上はいけない。それに突っ込むのは野暮というものだし、それは種族差別に繋がる」

「何でもかんでも差別というのは感心しないが」

巨漢のオーガの体が宙を舞った。

「息が詰まる世の中だ」

「まったく同感」

ジンの放った電撃弾十発が、魔族兵十体を貫きバタバタと倒した。

「分別はつけてほしいものだ。常識から考えてという言い方は、私は好かないが、物事をしっかり考えた上で発言してもらいたいものだ」

「いったい何の話をしているのだ?」

影竜が爪で、リザードマン兵をサイコロステーキよろしくバラバラにする。

「他愛のない世間話だよ」

老魔術師は言った。

「というところでお知らせだが、城内の敵のおよそ半分は片付けた」

「まだ半分!?」

ソウヤが目の前に飛び込んできたゴブリンに金棒のアッパーカットを当てれば、ミストも飛んできたゴブリンの頭を槍で打ち込み、奥にいたオーク魔術師にぶつけた。

「もう半分!」

ドラゴンは好戦的だ。復讐戦であるから、とことん容赦がない。

ジンの索敵魔法は城内の敵をすべて感知するという破格であるが、ソウヤたちの戦いはすでに半分を超えてしまっていた。

「雑魚掃除をすることは、ガルたちを助けることになるけど……」

そろそろ、彼らの後を追ったほうがよいかもしれない、とソウヤは思った。半分の敵を倒したからと言って、残りの半分の全員が一階に下りてくれることはないだろう。幹部だったり、後方支援係だったり、あるいは持ち場を留まって警備する者たちなどなど。

「向かってくる奴らは打ち止めになるだろうから、オレたちもガルたちの後を追いかけよう」

雑兵減らしは、ガルたちのためになるが、直に待っているだけでなく、こちらから攻め込む必要が出てくるだろう。

「ソウヤ、残念な知らせがあるが……」

ジンが心持ち低い声で告げた。

「カリュプスの面々だが、もう何人か斃れている」

魔族との戦いによって。

「む、また一人――」