軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日談130話、城内潜入

ペルスコット家の戦闘部隊は、地底城から離れた場所にいて、やってくる魔王軍残党と戦っていた。

地底城を見られたからには生かして帰さない――地底城の守備を命じられている当直の守備隊長は、侵入者を撃退すべく、兵を送り出したが今のところ、上手くいっていない。

「どういうことですか?」

幹部である吸血鬼のカネールは、現状確認のために守備隊長に問いかける。場所は外周の城壁で、そこから地下空間を見渡せる。

猪顔の魔族守備隊長は、太い声で答えた。

「敵は少数です。それが三つ。監視によれば総勢20人はいません」

「ふむ。それだけ?」

「ええ、それだけです」

守備隊長は頷いた。カネールは眉をひそめる。

「しかし、いまだ鎮圧できずにいる、と?」

「はい。恐ろしく腕の立つヤツらです。侮ったわけはないのですが、こちらの部隊は、そのことごとくが返り討ちにあいました」

面目ない、と守備隊長は頭を下げる。

「ふうむ、結局、戦力の小出しになって、各個撃破されたと……」

「戦力を見誤りました。初期段階で、敵のおよそ2倍は送り込んだのですが――」

「足りなかった、と。それは、何とも評価に難しいですねぇ」

守備隊長の対応は、批判されるべきところはない。初手から、敵より多く送り出したというのであれば、それはこちらの兵と敵の戦闘力の差がものを言ったということだ。敵の正体がわからないから、城からでは戦闘力の差など把握できようはずがない。

相手がドラゴンだった、というのであれば、2倍でも足りないが……。

「そうか、ドラゴンが化けているということもあるのか!」

「はあ……?」

守備隊長が要領を得ない顔になる。カネールは、竜玉を巡る戦いで遭遇した人に化けたドラゴンのことを思い出して、声を弾ませた。

「うん、その可能性もあるか。これは迂闊!」

「……」

一人で盛り上がるカネールに、ついていけない守備隊長である。これで幹部でなければ、何を言ってるんだと小突いているところだ。

「相手はドラゴンですね?」

「いえ、人間です」

「……」

真顔で返され、カネールは閉口する。

「ですが、地底城まで乗り込んできたわけですから、只者じゃあありません」

「偶然に発見した、というには、人数は多いようですし、未だに交戦中ということは……今も戦っているんですか?」

「はっ。敵は近づいてきていませんが、逃げるでもなく、その場に踏みとどまっています。こいつはまるで、何かを待っているようだ」

「くっ、増援があるということですか! これは本格的に地底城を攻め落とそうとする人間どもの作戦! いつからだ!? いつからこの場所を敵に知られた!?」

カネールは頭を巡らせる。早口の彼に、守備隊長はポカンとしてしまう。

「いいですか? わかっていないようなので説明しますが、ただの斥候でも、偶然発見されたわけでもない! 人間たちはこの場所を前から把握し、準備を整えてきた! これは本格的な攻撃です! これは危機的状況ですよ!」

「よろしいですか?」

「何です?」

「本格的な攻撃なら、なんで20人しかいないんです?」

守備隊長は言った。

「もっと人数がいて、今頃城壁付近まで攻め込まれていて――というのが、その場合の普通では?」

「……それもそうですねぇ」

すん、とカネールは冷めたようにトーンダウンした。

「あなたの話では、敵は何かを待っているようにその場に留まっている。これも確かに妙ですねぇ。予め攻略部隊を用意していたなら、踏みとどまるようなことをする必要もありませんし……」

最初から軍勢を踏み込ませれば済む話だ。……軍勢を用意していなかった? あるいは到着待ち? いや、それでも偵察とおぼじき20人がその場を動かないというのも変である。

陽動? 地底城から兵を出させるのが目的だとしたら……?

「ハッ!? しまったぁーっ!!」

「な、何です、カネール様!?」

驚く守備隊長。カネールは高い声を発した。

「これは、囮です! 至急、城内に緊急配備をするのです! 敵が入り込みましたよっ!」

「ええっー!? いやいや、敵はまだ入り込んでいませんが」

「まだ? いえいえ、もう入り込んでいるに違いありません! いいですか!? 表の20人は、我々を引きつける囮なのですよ! こちらの注意を引いている間に、敵は城内に侵入したんですよっ!」

「何のためにです?」

「お馬鹿! そんなもの、我々を殺すために決まっているじゃありませんか! 敵の規模はわかりませんが、大人数でしたらそれだけですでに危険ですし、たとえ少数だったとしても、要人暗殺とか城を爆破するなり手はあります! いいから、とっとと城内に緊急配備をしなさいっ!」

「ハッ、ハハーッ!」

守備隊長は慌てて、指示を出しに走る。カネールは城壁に立ち、ここからではよく見えない敵と味方の交戦を見ようと目を凝らす。

「まったく……。ぼんくらにもほどがありますよ……っと?」

カネールの視界の中、一瞬何がぐにゃったような違和感が現れた。見間違いか、カネールはよく見ようと正面を見据える。

何もないように見えて、しかし、圧迫感が凄かった。

「マジックアイっ!」

魔力の目を通してみる。視界一杯に巨大な船――実際はボート型小型艇だったのだが、それが迫った。

「どっしぇぇーっ!?」

カネールの顔面にボートの船首がぶつかり、そして強硬着陸したそれに、吸血鬼は踏み潰されるのである。

着地と同時に、透明化魔法が切れる。そこへ船から飛び降りたのは、ガルたちカリュプス暗殺者たち。

「……」

ガルは無言で突入を指示した。地底城に、ついに暗殺者が突入したのである。