軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日談123話、たまには周りと交流したほうがよい理由

希少なドラゴンの鱗を出したソウヤ。しかしそれは、ドラゴンへの神格化が他より活発な歩国でやった結果……大騒ぎになった。

少し考えれば、そうなる可能性に思い至れたかもしれない。

四大竜の鱗を出した衝撃は、それはそれは凄まじく、数人の歩国家臣を相手にしていたと思ったら、騒ぎを聞いてやってきた他の者たちがドンドン増えていった。

そこでさらに悲鳴じみた大声をあげるものだから、あれよあれよという間に、部屋に入り切れないほどになっていた。

「……」

まずったなぁ――ソウヤは天を仰いだ。

ドラゴンなのだから、提供するとしたらドラゴンに関係するものと相場が決まっている。鱗だったり、血だったり、あるいは加護的な魔法だったり……。登場人物たちが困惑するレベルの代物である。

しかし、物語において、ドラゴンがもたらすそれらは、伝説級の希少なもので、それを売るなどと言われれば、同じく高価であっても宝石を出すのとわけが違うのである。

なまじドラゴンと人間が半々で、思考的には人間なのだが、ドラゴンたちとの生活で、その価値観がバグってきているのを、ソウヤは感じた。

ドラゴン素材は、そんなレアではないという感覚が、ソウヤの中で育っていたわけだ。それはドラゴンとして、いい意味で馴染んできていることでもあるので、悪い話ではない。だが、人間と交流を続ける上では気をつけないといけない部分でもある。

――それはそれとして……。

ソウヤをそっちのけで、あれこれ品を見て、興奮を隠せない家臣たち。と、一人の家臣がソウヤへと顔を向けた。

「そ、ソウヤ殿! カ、カイザードラゴン様の鱗はございませんか!?」

ブッ、と思わず吹き出しそうになるソウヤである。周りの家臣たちも驚愕する。

「ば、馬鹿者! 貴様、なんてことをっ!」

「カイザードラゴン様の鱗だと!?」

「あるのか!?」

後ろの方にいる者たちが、皇帝竜の鱗と聞いてざわめく。神聖過ぎる事柄ゆえ、パニックになりかけている。

「あー、カイザードラゴンかー」

ソウヤは、敢えてノンビリした調子で言った。

あの異世界トラベラーのジンは、人間である。不老不死らしいが、人間であって、ドラゴンの姿はあくまで変身である。だから、ドラゴンブラッドの影響でハーフドラゴンになったソウヤはともかく、ジンはドラゴン素材を持たないし、出さない。

「さすがに皇帝竜はなぁ。あれはオレも持ってない」

「ないのですか……」

口ではどうこう言いつつ、期待していたのか、前の方にいた家臣たちはしゅんとした。

「もしあれば、家宝……いや歩国の国宝になりましたものを」

「国宝かぁ」

ないものはないし、出ないものは出ない。人間は逆立ちしたって、他の生き物の素材を出せないのだ。

もし、それでカイザードラゴンの鱗なるものが出たとすれば、それはそれっぽく作った偽物だろう。……何故か、ジンが皮肉げな顔で、作り物のカイザードラゴンの鱗を渡してくる光景が脳裏に浮かんだ。

――あの爺さん、言えば、そういうのを作りそうなんだよな……。

だがそれは、どう考えても、カイザードラゴンの身体から落ちた鱗ではない。歩国の人間が求めるそれとは違う。

――いや、そうでもないのか……?

ジン――カイザードラゴンが作った鱗。カイザードラゴンの鱗。カイザードラゴンから落ちた鱗ではないが、そのカイザードラゴンであるジンが作った鱗であるなら、カイザードラゴンの鱗と言えなくはないのではないか?

――単なる屁理屈、言葉遊びだよなぁ、それは。

見方によっては、詐欺とも詐欺ではないとも言えるグレーな代物。周りが求めるものと意味合いは違うが、まんざら嘘ではないし、知らなければ通じてしまう。……知らなければ、という時点で、半分詐欺だと認めるようなものではある。

――爺さんに相談するか? いや、したところで、彼らの求める鱗は絶対にないわけだから、するだけ無駄か?

ソウヤは、周囲のざわめきを余所に、腕を組んで考える。

このまま『ない』ということにしてしまうのが一番な気がする。そもそも、実際にないのだから、どうこういうものでもないのだが、何でも取り扱える行商がウリの一つだった行商だっただけに、どうにもすっきりしない。

これはただの感情だ。が、下手にあれこれ思案した挙げ句、適当に言ったことが、まことしやかに事実として語られるようになるのもよろしくない。

カイザードラゴンの伝説に、ソウヤが言ったその場の出任せが残ってしまうのは、避けたいところである。

ない。それでよし!

ソウヤはそう決めた。

と、その時、監視していた吸血鬼と魔族コンビにどうやら進展があった。地下深くに、ひたすら潜っていたそれは、広大な地下空間に出たのだ。

「ソウヤ殿――」

「しーっ」

周りが耳障りなので、ソウヤは静かにするようにジェスチャーをすると、瞑想するように目を伏せた。

意識を、地下の方へと向ける。

例の二人組は、用意されていた小型の飛空艇に乗り込むと、地下空間を飛んだ。そしてその先には、奇妙な構造物があった。

――これは……。

魔王軍の残党捕虜の尋問で、何度か出てきた魔族の拠点、地底城ではないか。

・ ・ ・

魔王軍の残党の拠点、地底城。

ヴァンパイアのカネールは憂鬱であった。歩国での竜玉確保に失敗。その報告をしなければならないことが、憂鬱で憂鬱でたまらないのだ。

共に歩く魔族――インモルタル曰く、東方諸国で展開していた作戦の一つ、グーファイ国乗っ取りの失敗の報告をあげたばかりだから、我らがクイーンは、さぞ機嫌が悪いだろうと言っていた。

一度目の失敗には、寛大な者も、失敗が二つ、三つ重なれば、さすがに気分を悪くするだろう。

命じた者がミスを繰り返したならば、制裁されるのは当然であるが、他人の失敗の後に報告して、そのとばっちりを受けるのは御免蒙りたい。

地底城の玉座の間。陰鬱さを抱えたカネールと、事務的な態度を崩さないインモルタルがやってくると、現在の主が、魔王のいない玉座にひざまずいて磨いている様を目の当たりにした。

「さて、これは困りましたねぇ……」

こうなると、この主が、玉座磨きを終えるまで、声もかけられない。いつから掃除を始めたか知らないが、場合によっては数時間、立ちっぱなしでこの光景を見続けることになる。これ以上酷い、罰ゲームがあるだろうか? いやない。

カネールは相方を見るが、インモルタルは何も言わない。吸血鬼は深くため息をついた。

現在の主――魔王軍幹部だったサキュバス・クィーン、ブルハは、一心不乱に玉座を磨き続けた。