軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日談24話、その後の話――リアハ姫の近況

銀の翼商会は活動を続けた。規模を縮小したこともあるが、古参メンバーたちもそれぞれの道を行き、残っているメンバーは、エンネア王国での魔法大会以後に加入したメンバーがほとんどとなった。

古参と言えば、リーダーであるセイジと、ソフィアだけになっていた。

「実は、あと一人、リアハ姫もいたんですけどね」

「グレースランド王国の姫君ですね」

トド・アンダールも、グレースランドの戦姫の噂は聞いたことがある。魔王軍への先制攻撃として、人類連合がエンネア王国とニーウ帝国を中心に編成された時、グレースランドの姫君も参戦して、前線で剣を振るったという。

「あの人も、銀の翼商会にいたんですけど、ソウヤさんがいなくなってから、ショックを受けすぎてしまって、作業にまったく手がつかなくなってしまったんですよ」

なので、親友であるソフィアの勧めもあって、母国グレースランドに帰った。銀の翼商会にいると、いちいちソウヤのことを思い出してしまうから。

もう一人の親友であるヴィテス曰く。

『リアハは精神が脆いところがあるから』

それで、国に戻った彼女だが、しばらくは塞ぎ込んでしまってグロース・ディスディナ城にこもっていたという。

「それだけ、ソウヤさんに好意を抱いていたんでしょうね」

聞けば、持ちかけられる婚約話を、ことごとく蹴っているとか。トドは首を捻る。

「それっていいんですか?」

「あまりよくないみたいです。後継者の問題もあるようですから」

「あれ……そういえば、お姉さんがいますよね? リアハ姫には」

「レーラさんですね。でもほら、あの方は聖女なので」

「ああ……」

トドは納得した。

聖女は生涯、結婚しない――らしい。それは教会が言っていることではあるが、清らかであるために、聖女は独身を貫くと言われている。

「それでは仕方ないですね。では、グレースランドの次の王様にはどなたがなるのでしょうか?」

「? リアハ姫ですよ」

何を言っているんだ、という顔をするセイジである。

「グレースランド王国の次の王は、リアハさんです。リアハ女王陛下。後継者問題というのは、彼女の次の、という意味です」

「あー、そういうことでしたか。すみません勘違いしておりました」

トドは苦笑いである。グレースランドは女王ありの国である。だから、聖女であるレーラは王位を継げないので、その妹であるリアハが自動的に王位を継ぐのだ。

「だからまあ、急いで結婚しないといけないことはないです。……とはいえ、何が起こるかわからない世の中なんで、早めに後継者を作っておかないといけないとは、言うんですけど」

「それはそうですね」

だから王族や貴族といった身分だと婚約が早い。最速だと、生まれる前から、親同士が決めてしまう。

「生まれる前からって……よくよく考えると凄い話ですね」

「まあもちろん、希望の性別で生まれた場合は、という条件なんですけどね。その条件に合致したら、即婚約らしいです」

トドの言葉に、セイジは乾いた笑いしかでなかった。

「でも、そう考えると、グレースランド王は、娘に婚約を押しつけないんですね」

「珍しいですよね。ああいうご身分の家って、結婚相手は親が決めるものって普通なのに」

リアハに選択肢があり、それを断っているのだから。

「あー、でも娘に婚約確認する場合もあるみたいですよ」

「そうなんですか?」

「ええ、婚約申し込みが複数あって、親側としてはどれを選んでもあまり変わらない場合とか」

そういう時は娘に選ばせるんだ――勉強になるな、とセイジは思った。そこでトドは言った。

「もしかしたら、次の女王だからこそ、相手を本人に選ばせているのかもしれないですね」

相手側は、リアハと婚約しても、王様になれるわけではないのだ。

・ ・ ・

「お父様には申し訳ありませんが、まだ婚約だとか、そういう気分にはなれません」

リアハは、さっさと席を立った。グレースランド王は、ため息をつく。

「そうか」

――お父様には悪いけれど。

心の中で詫びつつも、婚約など考えたくないリアハだった。はっきり言えば、嫌悪感すら感じていた。

自分が好きなのは、ソウヤだけだ。そう思うほど、他の男性を紹介されても、裏切っているような自己嫌悪に陥るのだ。

――私はソウヤさんが好き。

ただ、客観的にみれば、自分は彼の恋人になれていなかったと思う。ソウヤが優しいのは、リアハだけではなく、たとえば姉のレーラにも、彼は優しかった。

――すべては私に勇気がなかったせいだ……。

悶々と、そばにいて、でも一歩が踏み出せなくて、結局――勇者ソウヤは、魔王と戦い、この世を去った。

――やっぱり、ショックなんだ。

魔王と戦って死んだ、と言われるのは2回目だ。もっとも前回は死んでおらず、カモフラージュだったと聞かされた。

では今回もそうなのかと言えば、今度は偽装する理由もなく、皆が勇者の死を受け入れている。

――……一度は乗り越えたはずなのに。

幼い頃、勇者と聖女レーラの死。あの時も衝撃を受けたはずなのだが、リアハは思い出せなかった。小さかった頃のことは、本当に覚えていないものだ。

――今更どうすることもできないのだけれど……。

リアハは城の窓から城下町を見下ろす。魔王軍から守った町は、今日も平和を謳歌している。

――時間が、この悲しみをいつか流してくれる。

彼のことを諦められるまで、今は耐えるしかない。そして受け入れられた時、その時は父の勧めに従い、婚約も一つのできるようになるかもしれない。

それとも――リアハは思う。

「私も、復活のアイテムを探しに出かけたほうがいいのかしら?」

ただ待つだけではなく、姉レーラが、『銀の救済団』を結成して、旅立ったように。