軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日談16話、ドラゴンの挨拶まわり

ソウヤは、アースドラゴンから、大地竜の後継者に指名された。

まだ半分ドラゴンという中途半端な状態だったソウヤだが、いきなり四大竜の一角、次の大地竜を与えられたのだから、面倒この上ない。

抜き打ちテストを食らう気分というのか、会合を欠席して次に顔を出したら、いきなり代表にされていたとか、とにかく面食らったのである。

そんなソウヤが、ジン・クレイマンの浮遊島で、リハビリと、次の炎の大竜となる予定のファイアードレイクの赤ん坊フラムの世話をしていた時、アースドラゴンが声をかけてきたのだ。

『一族の挨拶にゆくぞ』

かくて、ジンの飛空艇ディアマンテ号に乗り、ソウヤたちはアースドラゴンの一族の者たちのもとへ訪問するのである。

「奴らに、次のアースドラゴンが決まったと、一応、知らせたのだがな」

仙人姿のアースドラゴンは、その長い髭を撫でた。

「顔見せはしておかんとな。故にソウヤ、我が一族の者どもの顔合わせをするのだ」

「……」

勝手に、というか一方的に大地竜の称号を授けられた身である。正直に言って複雑な心境だ。

「知らせたっていうのは?」

「念話というやつだ。我の一族とは、その気になればいつでも交信できるからの」

「……誰か反対していなかったか?」

そういう一族のドラゴンのもとへ行くのではないか、とソウヤは警戒している。……それで実力を示せとか言われるのではないかと、戦々恐々である。

アースドラゴンの一族である。人間が接するような下級のドラゴンとは訳が違うだろう。

「いいや、誰も」

大地属性ドラゴンの長は笑った。

「前にも言わなかったか? 我が一族の者たちは、どうにものんびり屋が多くてのぅ」

頼りないとは聞いた覚えがあるが、のんびり屋と言っていただろうか。ソウヤは疑問に思ったが、それについて指摘はしなかった。事実、誰も反対しなかったというのなら、そうなのだろう。

「いやあ、老師、我々も同行して問題ないのですか?」

ジンが問うた。我々も、という通り、ミストやクラウドドラゴン、アクアドラゴン、ついでにフラムまでついてきている。

「構わんよ。先に知らせてあるから、揉め事にはならんよ」

ドラゴンは自分のテリトリーに侵入されるのを嫌う。そこで四大竜はじめ、来訪があれば、普通は警戒するものだ。

そんなドラゴンでさえ、予め知らせてあるから大丈夫と言えるアースドラゴン。最初に通知しておくことの大事をしみじみと感じるソウヤである。――やはり、アポなしはいかんな。

そんなわけで、大地属性ドラゴンに会うために世界を股にかける規模の小旅行である。

――とある廃鉱の下で、岩を食っている岩石竜。

『おんやぁ、アースドラゴン様。お久しぶりだがね。まだくたばっとらんねぇ――ふむふむ、そっちの人間に見えるのが次のアースドラゴン様だで』

「ソウヤだ。よろしく」

『よろしく、ソウヤ。――おまぁも岩、食うか?』

岩石竜は、非常に穏やかだった。ガンとした大きな頭に角張った四角い顎で、バリバリと岩壁を破壊して食っていた。凄まじく凶悪そうな顔面ではあるが、ドラゴンは見た目で判断してはいけないと思う。

――とある巨大峡谷の下、薄ら霧が漂っているかと思ったら、ガスだった。

『……多少毒も混じっているがね。アースドラゴンはさすがとして、若竜よ、大丈夫か?』

「……まあ、毒は平気そうだが」

くせぇ――ソウヤとアースドラゴンは、地毒竜と対面した。周りのガスのせいで、他の面々は近づかなかった。ちなみに、ソウヤはドラゴン形態。

『さすが後継に選ばれた若竜だ。まあ、オレら大地属性ドラゴンは、独立独歩。あんまり交ざることはないだろうが、ひとつよろしく』

「こちらこそ……」

鼻がもげそう――ソウヤは、隣で平然としているアースドラゴンに呆れるやら感心するやら、である。

――とある火山。溶岩流れる熱き大地。ファイアードラゴンの火山島ほどではないが、過酷な地形。

『爺公、大丈夫か? さすがにお主にこの暑さはきついのではないか?』

溶岩竜は、風呂にでも入っているように溶岩に浸かっている。

『長居はせぬ。こやつの顔見せにきただけだからな』

『どうも……』

ソウヤは自分の周りをチョロチョロするフラムを捕まえて抱き上げる。

『ちなみに、そのファイアードレイクは、次のファイアードラゴンになる予定だ』

『フムフムフーム。土と火が仲良きことはよいことだ。よろしく頼むぞソウヤ頭領!』

溶岩竜はガハハと笑った。溶岩竜と聞くと、火属性ドラゴンに思えるのだが、この溶岩竜は、土属性――それもアースドラゴンが、火属性ドラゴンに生ませた子供らしい。

オス因子が強すぎて卵が産めなかったアースドラゴンが、他パートナーに産ませた一体らしい。どうやら、大地属性ドラゴンがそんな感じで、生まれたものばかりらしく、ここまではっきりした後継者がいなかったらしい。

――とある砂漠。砂丘が崩れて現れた砂竜……そのあまりの巨大さに、ソウヤは衝撃を受ける。

「でけぇ……」

砂漠を泳ぐサーペントも巨大だが、それすら一口できそうなほどの巨大なドラゴン。街ひとつくらい大きい。

『こんなナリなので、ほとんど何もできんが――、よろしく』

口を動かすことなく、念話でのみ会話するサンドドラゴンは、建物ひとつありそうな巨大な目で、ソウヤたちを見下ろすと、再び砂漠に潜って去っていった。

「あなたの一族は、変なものばかりね」

クラウドドラゴンが言えば、アクアドラゴンがひっくり返った。

「み、水を……萎む……」

「この程度で萎むか。ほれ、フラムを見倣え」

元気に砂を駆け回るフラムは何を思ったが、太陽に炙られ熱せられた砂を、アクアドラゴンにかけはじめた。

「あっつ!? あつっ、やめーいっ!」

「子供は元気ねぇ」

ミストはニコニコとそれを見守る。誰も助ける気はなかったようだった。

ともあれ、アースドラゴンに導かれて、ソウヤたちは、大地属性ドラゴンたちにそれぞれ会いに行った。

やはり通告していた効果か、ミストやクラウドドラゴンらがいても、怒り出したり警戒感を露わにするドラゴンはいなかった。大地属性竜は寛容らしいというのは、よくわかった。

人間であり、ドラゴンでもあるソウヤを半端者扱いすることなく、次のアースドラゴンと認めた。ここまで寛容なのは、むしろ、アースドラゴンというポジションに実はそれほどありがたみを感じていないのでは、とソウヤは思った。

権力欲というか野心のない連中ばかりだったから。