軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日談11話:風竜の復活

ファイアードラゴンの一族と思われる卵を、ソウヤが預かることになった。

四大竜の過半数が、火竜の後継を育てることに賛成した。……ファイアードラゴンが死に、クラウドドラゴンが仮死状態とあれば、残りはアースドラゴンとアクアドラゴンしかいない。その二人(?)が意見を揃えれば、過半数どころか全会一致である。

「なんで、オレなんです?」

まさか子ドラゴンを預か――押しつけられたソウヤである。アースドラゴンは顔を逸らした。

「我は老い先短い。いつ終焉が来るやもしれんからのぅ。若い者に委ねるのがよかろう」

「死んだら、そこの台座に載せて蘇らせます」

時空回廊で呼び戻してやる、とソウヤは思った。面倒を押しつけられるのは御免である。

「残念だがな、ソウヤよ。天寿を全うする場合、時空回廊で復活はできんのだ」

アースドラゴンは真顔で言った。

「ただ時間を戻すわけではない。寿命を削って、その分を戻すのだ。だから、ここで傷なり失ったものを再生させても、外見は若返っても、寿命が伸びるわけではない」

「……」

本気トーンで言われてしまうとは、何も言えなくなるソウヤである。できれば冗談半分で流してくれたほうがよかった。

ソウヤがアクアドラゴンに視線を向ければ。

「私は嫌だぞ。何故、自分に関係のない属性のドラゴンの面倒を見ねばならんのだ」

身も蓋もないことを仰る水竜。

「面倒くさい。それに私は水のドラゴン。火のドラゴンとは相性が悪い」

魔法の属性で、よく反発対象になる火と水。ゲーム的な言い方をすると、確かに苦手属性ではあるが、現実でもそこまで影響するのか? 魔術師のソフィアや、大魔術師のジンのように、そこまで魔法と属性の関係について詳しくはないソウヤである。

「そうなのか、爺さん?」

「まあ、そうだろうな」

ジンは肩をすくめた。

「たとえば、アクアドラゴンが水に潜ったら、ファイアードラゴンがついてこれると思うか?」

「想像がつかないな」

果たしてファイアードラゴンは泳げるのだろうか。やはりイメージ的には違和感である。相性については、何となくわかった気がした。

「ま、いいんじゃない」

野次馬を決め込んでいたミストが口を開いた。

「アナタ、影竜のところの双子から、親みたいに慕われていたでしょう? 子育てはできるんじゃない」

「そうだぞ、ソウヤ」

アクアドラゴンが、ミストの援護射撃に乗っかった。

「こういうのは経験者にやらせるに限る。間違ってもソウヤなら、悪いようにはせんだろう」

――……そういう言い方されると、なあ。

「しゃあない。面倒見るよ」

頼まれると弱いのは、性分である。こればかりはこれまでの生き方の積み重ねである。

「でも、オレもドラゴンの風習ややり方ってものを知らない。そこは手伝ってくださいよ」

ソウヤが言えば、アースドラゴンは重々しく頷き、アクアドラゴンは面倒を回避できてご満悦の顔になった。

「お前も次の大地竜になるのだ。言ってみれば同じ時を生きる友となろう」

同期と言いたいということなのだろう。ソウヤは苦笑するしかなかった。ただ、古参竜たちが言うように、次のファイアードラゴンが凶暴でないなら、それで救われる命もあるだろう。これも一つの世界平和への貢献か。

・ ・ ・

三日後、クラウドドラゴンが仮死状態を脱した。時空回廊は、時を戻し、しかし一方で三日の彼女の寿命を削って、傷ついたドラゴンを再生させたのだ。灰色の大竜は翼を広げて、大きくノビをした。

「お帰り、クラウドドラゴン」

『ソウヤ、それにミスト』

「お帰りなさい、クラウドドラゴン!」

風の大竜に抱きつくミストである。クラウドドラゴンは困惑する。

『これはどういうこと?』

「覚えていない?」

魔王との戦い。ソウヤが魔王を倒したその瞬間、自爆によって死にかけたこと。クラウドドラゴンは傷ついていたミストを庇い、その生命力を削られ、仮死状態となった。

灰色竜から、おっとり美女の姿になったクラウドドラゴンは、状況の説明を受け、理解した。

「そう……。そうだったのね」

「そういうことなので、アナタは命の恩人」

「そしてミストが助からなければ、オレも助からなかった。だからオレにとっても恩人」

ソウヤが頷けば、クラウドドラゴンが顎に手を当てた。

「さらに、あなた達が助からなければ、ワタシもあのまま仮死状態で数千年。あなたたちは恩人、ということになるのかしら」

「なんだ、そりゃ」

アクアドラゴンが口をへの字に曲げた。

「何はともあれ、戻ってきて嬉しいぞ、古き友よ。伝説の四大竜も、お主がおらんと私と爺竜しかおらんなるからな!」

一人、他人事を決め込んでいた爺竜ことアースドラゴンだが、そこで口を開いた。

「起きてすぐに悪いがな、四大竜に復帰して一つの懸案がある」

アースドラゴンは、例のファイアードラゴンの一族のものと思われる卵の件を、早速話した。ソウヤが大地竜の後継となったことも含めて。

「ふうん。新しいアースドラゴンね……」

「どこからどう見ても人間だがね」

ひどい冗談だと言わんばかりのソウヤであるが、クラウドドラゴンは、その事はあっさりと流した。

「大地竜の話は、風の竜には関係ない。アースドラゴンが後継にソウヤを選んだのなら、それはそれ」

――そうですか……。

いっそ反対したら、まだやり直しがきくのでは、と少し期待していた。

「火の一族の件も、ワタシには関係のない話。ソウヤが引き受けるなら、それでいい」

――やはり、なんちゃってドラゴンのオレが、火属性のドラゴンを育てるという大役についても反対しないのか……。

クラウドドラゴンは、気まぐれである。関心事には積極的だが、それ以外のことは淡白で、どうでもいいのだ。

――まあ、それはそれとして。

「改めて、お帰り、クラウドドラゴン」