軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第631話、陽動攻撃

ファイアードラゴンに従うその眷属と一言でいっても、種類は雑多だ。

血を受けた者の子孫もいれば、配下としての眷属もいる。ただひとつ共通しているのは、すべて火の属性を持っていること。

彼らは血の気が多く、自分たち以外の存在には慈悲の欠片もない。

魔族だろうが、人間だろうが、焼き尽くす対象に過ぎない。聞く耳を持たない。その存在に価値を見いだしていないから。

ただのうざったい獣、虫と同じだ。ただ目の前にいたから焼く、殺す。

そんなファイアードラゴンの眷属たちは、ウェルド大陸に死と破壊をもたらした。

一方的な蹂躙。抵抗する存在は踏み潰す。抵抗しなくても踏み潰す。彼らは破壊を好む。他の生き物が黒炭になり、果てるのを見るのが楽しくて仕方がないのだ。

だが、それもここまでだ。

ドラゴンたちは、独特の飛翔音が聞こえてくると、集落を焼き払うのをやめて頭を上げた。

高速で飛来する白き飛空艇。それが眷属たちの頭上を掠めるように飛んで、大きく風が舞った。

自分たちを怯ませた存在に、下級のドラゴンたちは翼を広げて飛び立った。気に入らない。邪魔をされた――彼らの沸点は低い。

当たってもいないのに突っかかる当たり屋。目の前を通ったからと絡むチンピラの如く、眷属たちは向かってくる。

『成功です、勇者ソウヤ。眷属たちが追ってきました。その数15』

「また何もしていないぜ?」

ソウヤはプラタナム号のバイク型操縦席にいて、飛空艇を操っていた。

「ただ頭の上を飛んだだけで追ってくるとか、あいつらどれだけ縄張り意識強いの」

『こっちにドラゴンがいるのを感じたんでしょうよ』

甲板に出ているミストの声が通信機から聞こえた。

『あー、不快。ほんと不愉快な波長だわ』

『向こうもそう思ってるんだろうよー』

アクアドラゴンが拗ねた子供のような声を出した。

『私、あいつら火の一族嫌ーい』

『きらいー』

フォルスが真似た。甲板にはドラゴンたちがいるので、その気配もファイアードラゴンの眷属たちは感じているのだろう。

『あんまり飛ばし過ぎないでね、ソウヤ』

ミストは言った。

『あいつら、基本バカだから、引き離し過ぎたら追ってこなくなるわよ』

「それって難しいな」

ソウヤは苦笑する。

「オレたち、速過ぎるからな。なあ、プラタナム?」

『まったくですね。足の遅い奴らに、合わせてやらねばならないとは』

プラタナムが、ぼやいた。

『せめてクラウドドラゴン並に足が速ければ、楽なのですが』

追尾してくる眷属は15体。しかしこれは序の口だ。

「このまま引き連れたまま、次に向かう。魔王軍の浮遊城とやらに到着するまでに、どれだけの眷属を引っ張っていけるか」

『了解』

プラタナム号は応じた。クラウドドラゴンが通信機ごしに言う。

『時々、追ってくる眷属の何体か撃墜するのがいいわ。そうしたらあいつらは死に物狂いで追いかけてくるから』

『ドラゴンは報復主義だからな』

影竜が皮肉たっぷりに言った。

『執念深い火の一族なら、勝手に仲間を呼んで集まってくれるんじゃないか?』

「なるほど」

彼女たちの言う通りなら、思ったよりも簡単かもしれない。

『でもできれば――』

ミストが憂う。

『ファイアードラゴンには、最後に出くわしたものね』

『同感。あいつだけで、全部ひっくり返すからなぁ』

アクアドラゴンが同意する。

『予定も何もあったもんじゃない』

せっかく眷属を引き連れても、ボスであるファイアードラゴンが登場すれば、どう転ぶかわからなくなる。

ファイアードラゴンのひと声で全てが変わる。眷属もろとも巻きこみながら大暴れするならまだしも、誘導に気づいて解散を命じれば、元の木阿弥。

伝説の四大竜の一角であるファイアードラゴンは、単純ではあるが、眷属ほどバカではないという。

――でも、起きてほしくないことって、案外起きちゃうんだよな。

ソウヤは口には出さず、胸に秘める。

悪い予感というのは当たるもの。すでにフラグの予感がしつつも、ソウヤはプラタナム号を操った。

・ ・ ・

大陸をジグザグに横断しながら、破壊を繰り返すファイアードラゴンの眷属を誘い出す。

連中に電撃砲を撃ち込んで、そのまま撃墜してしまった例もあるが、それを見た他の眷属たちが、怒りの咆哮を上げながら、プラタナム号に向かってくるのだ。

「……こりゃ、普通の飛空艇じゃ、とうに追いつかれてるな」

翼の生えたトカゲという、下級の中のさらに下級でさえ、そこらの飛空艇より速い。プラタナム号でなければ、追いかけっこは成立しなかった。

「だいぶ増えてきたみたいだけど、もう三桁は超えたか?」

『残念ながら勇者ソウヤ。まだ88体です』

プラタナムは、心底残念そうに報告した。

『いま2体減りました』

追尾を諦めた、ではなく、甲板にいるミストがドラゴンブレスを後方に見舞ったのだ。

眷属たちが追いつけないから諦めようかと、速度が落ちる個体が現れ出すと、甲板のドラゴンたちがブレス攻撃で、追っ手を攻撃する。

それで仲間をやられて、再び逆上し眷属たちは頑張って追いかけてくる。

「怒りの感情は長続きしないというが……」

『そうなのですか、勇者ソウヤ?』

「怒り続けるってのは、案外疲れるもんなんだ」

モニターと睨めっこし、彼我の位置関係を確認する。時々、火事場の馬鹿力か一定時間スピードが上がる個体が何体かいる。そいつらのせいで、後ろとの距離が開きつつある。……調整が面倒だ。

『ソウヤ』

「どうした?」

『気をつけて。南西方向、あいつの気配がする……!』

あいつ――ファイアードラゴンか。まだまだ予定の半分くらいの行程だ。プラタナム号が報告した。

『南西方向より、複数の飛翔体を確認。うち一体は反応大。おそらく、ファイアードラゴンと思われます』