軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第555話、監獄襲撃

ミストが見たニーウ帝国の皇帝の姿を、クラウドドラゴン経由でヴィテスに再現してもらった。

ソウヤやレーラなど勇者パーティー組は、魔王討伐の旅の最中に一度面識があったから、再現を確認したが、さすがに10年経っていると多少印象も変わっていた。

――少し猫背になられたかな?

五十代……六十近いのではないか? 寿命の伸びていた現代と比べると、この世界の六十はかなりのお年である。

救出作戦が練られたが、軍事作戦において、かつて王として軍隊を率いていたジンのおかげで、話はトントンと進んだ。

彼が用意し、対魔王軍戦用に連れてきたリッチー島傭兵同盟のおかげで、銀の翼商会単独でどうこうしなければならないということがなくなったのは大きい。

「作戦目的は、ニーウ帝国の皇帝ブロンの救出である」

ジンは言った。

「彼の保護が最優先。助け出すからには、間違っても死なせることがないように留意して行動してもらいたい」

老魔術師は、ソウヤを見た。

「ブロン皇帝の救出は、ソウヤ。君たちが担当する。理由は――」

「オレたちが、皇帝陛下と面識があるからだろう?」

「そういうことだ。知っている人間なら、皇帝陛下も混乱は小さいだろう。救出作戦において、救出対象にちゃんと味方とわかってもらうのが大事だ」

見ず知らずの相手がいきなり助けにきた、と言っても信用できるかは難しい。その国の関係者などならともかく、何かしら救出に現れた人間に納得できるものが必要なのだ。

「監獄内の魔族兵の掃討は、リッチー島傭兵同盟の上陸部隊が担当する。……ソウヤ、君たちは他の捕虜たちのことは気にしなくていい。こちらで助けるから」

「ああ、任せるよ。爺さん」

優先順位を間違えてはいけない。あれもこれもと欲張って、肝心の救出対象を助けられなければ本末転倒だ。

特にソウヤは、困っている人を見捨てておけないタイプなので、全員助けようとして余計な時間をかけさせないように、ジンが配慮する形である。

「よし、それでは始めよう」

作戦名『サンダーボルト』が発動された。

・ ・ ・

パルーチャ監獄は、干上がった湖の上にあり、陸路でのエントリーは正面の門のみ。跳ね橋を上げれば、中の者は外に出られない。周囲は湖の底まで切り立った高い崖となっており、飛び降りたら即死の高さである。

だから、リッチー島傭兵同盟は、空から監獄を攻めることにした。

傭兵同盟艦隊から、小型エスコート6隻が警戒が比較的緩い干上がった湖側からアプローチをかけた。

低空を進む6隻のエスコートは、全長30メートルほどで、電撃砲を二門装備する軽武装艇である。

速度は出るが、間違っても監獄に収容されている人々を大勢載せられる船ではない。なお、その甲板上には上陸部隊を乗せた浮遊ボートが2艇ずつ搭載されている。

ソウヤたちは、小型エスコート『ウルペース』に乗っていた。吹き抜ける風は冷たく、浮遊ボートで待機していると肌寒さすら感じる。思わず身震いしたらミストが背中に抱きついてきた。彼女の豊かな胸の感触が背中を刺激する。

おい――とっさに文句のひとつも言おうとしたら、ミストだけでなくレーラもピトリと抱きついてきた。

「寒いので」

とっさに彼女の言葉が聞こえ、なるほどとソウヤは文句を封殺された。確かに少し寒いかもしれない。

ちなみにソウヤの船には他に、リアハ、カーシュ、メリンダ、カエデ、ナダが乗っており、同じく乗り込むもう1艇には、オダシュー以下、ガル、セイジ、ソフィア、ティス、ダル、フラッド、グリードが乗っていた。

ソウヤは左右を見渡す。僚艦でもある『ケルウス』『カペル』の姿が近くにあり、他に3隻のエスコートが前を進んでいる。いずれも比較的低い高度を飛び、遠距離から敵に発見されるのを極力遅くしようとしている。

魔力通信機からは、ジンとリッチー島傭兵同盟のやりとりが、断続的に聞こえていた。

『こちらイージー5、目的視認。パルーチャ監獄だ』

『了解、イージー5。こちらウィザード。ライトニング、はじめてくれ』

ジンの声が聞こえた。

『ウィザード、こちらライトニング、監視塔へ攻撃を開始する』

雲を展開するサフィロ号に後続する飛竜母艦『ノタ』より、ワイバーンライダーが駆る飛竜が飛び立ち、すでに監獄上空へと侵入していた。

『ライトニング1、急降下』

『ライトニング2、急降下――』

爆弾を抱えたワイバーンが高高度よりダイブする。矢のような急降下でワイバーンがパルーチャ監獄へとグングン迫る。そしてライダーが攻撃目標への投下軸に乗ったのを確認し、爆弾を切り離す。

ふっと軽くなったワイバーンは降下角度を緩めながら滑空するように離脱する。落とされた爆弾は、パルーチャ監獄の四角にある監視塔に、それぞれ吸い込まれていき、爆発した。

急降下爆撃だ!

ソウヤは、近づきつつある監獄の監視塔に次々に爆弾が当たるのを目撃した。

現代のそれと違い、爆弾が誘導するわけでもない。水平飛行から落とすより、遥かに命中率がよい急降下爆撃だが、それをきちんと目標物に当てる技量は、まさにワイバーンライダーたちの腕のよさを証明している。

投弾し、次々と離脱していくワイバーン。あの急降下だって、落下していく時のスピードと圧迫感に、恐怖を感じるものだ。引き起こしができなければ地面に激突して赤いシミになってしまうのだから、一歩間違えれば自殺である。

――そういや、うちの爺さんが言っていたっけ。急降下爆撃機乗りは、戦闘機乗りより度胸がないとできないって。

曾祖父は、昔海軍にいたと祖父から聞いたソウヤである。

ワイバーンによる爆撃が終わる頃、ソウヤたち上陸部隊を乗せた小型エスコート戦隊が、パルーチャ監獄上空へとたどり着く。

元は城だったという監獄の城壁の上で魔族兵が慌てふためいている。飛来した飛竜に気をとられて、飛空艇の接近に気づかなかったようだ。

『ウイザードより、イージー・スコードロン。地上の敵の掃射を開始せよ』

落ち着き払ったジンの声が通信機より響いた。小型エスコートが船首に搭載した電撃砲を監獄に向ける。

次の瞬間、前衛の3隻のエスコートが、燃える監視塔と城壁上で右往左往する魔族兵に電撃を浴びせた。