軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第554話、パルーチャ監獄

魔王軍大陸侵攻軍残党の上級指揮官の名前は、カラガンという。

捕虜となった魔族指揮官に対し、サフィロ号内の例の部屋にて、リムによる尋問が行われた。

今回、ソウヤは立ち会わなかったし、様子を見に行ったりしなかった。やはり尋問の場に居合わせるものではないと、心から思ったからだ。

その代わり、エンネア王国の諜報員であるカマルが魔王軍の情報を手に入れようと同席した。

十年前の魔王討伐の旅でも、尋問に慣れていた彼を以てしても、リムのそれは常軌を逸していたらしく、トラウマを刻まれたような青い顔をして出てきた。

「あの女は、どうかしてる!」

カマルの第一声はそれだった。

「よくあんなのに耐えられるな爺さん!」

やはり同席していたジンは、そんなカマルの言葉にも平然としていた。

「長く生きれば、色々見るからね。慣れたくはないものだが、慣れてしまったよ」

「慣れたくないというのは同感だが、私も職業柄慣れないといけないのだろうな」

カマルは言うと、ソウヤたちとサフィロ号の談話室へと移動した。

「捕虜尋問でわかったことを報告する。まず第一点、大陸侵攻軍残党は、魔王ドゥラークに前線の惨状を報告し、以後の指示を求めたそうだ」

謎の敵による奇襲で、大陸侵攻軍は壊滅した。今後どうすればいいのか、指示をお願いします――ということだった。

「撤退か、あるいは増援を待てばいいのか。以後の行動が来るまで現状維持のつもりだったらしい」

「連絡は、もうついているのか? その魔王とは」

ソウヤが聞けば、レーラのいれてくれたお茶を受け取りつつカマルは首を横に振った。

「それについては、伝令に船を派遣したそうだ。連中の本拠地と連絡を取れる魔道具があったんだが、それは昨晩の我々の奇襲で破壊されたらしく使えないのだと」

「それは伝令を出すしかないな」

ソウヤは頷く。エイタが口を開いた。

「つまるところ、ニーウ帝国内の魔王軍は、当面動かないってことか」

「本拠地――それがどこかは知らないが、増援を送ってきて、攻撃を命じられない限りはな」

カマルは自身の顎に手を当てた。

「人類側国家群に、準備をする時間はある程度稼げたとみていいだろう」

「それは朗報だ」

攻撃した甲斐があったというものである。ソウヤは仲間たちを見回す。カマルは咳払いした。

「で、次の報告だ。ニーウ帝国皇帝の所在が掴めた」

「皇帝の……?」

これにはソウヤ、レーラが驚いた。

「生きていた……?」

「ああ。魔王軍は、入れ替わった皇帝を帝国北西部にあるパルーチャ監獄に収監した」

パルーチャ監獄――帝国の罪人を収容する場所である。かつては城だったが、今では城としての優美さは失われ、罪人たちが死を待つ終の住処となっていた。

「本来は悪党を繋ぎ止める場所だったようだが、今ここは魔族に支配されていて、その統治の邪魔者を収監する場所へと変わった」

カマルの説明に、ミストが小首をかしげた。

「つまりは犯罪者の他に、皇帝やその他入れ替わりとなった人間たちが、そのパルーチャ監獄に集められているということ?」

「そうだ。犯罪者と言うより、魔族支配に逆らった人間というのが正しい。ちなみにここに収監されて生きて出られた者はいないそうだ」

かつては強制労働で死ぬか病死するか自殺するか、だったが、今ではそれに魔族の玩具になって死ぬも加わったそうだ。残忍なデスゲームやら、死ぬまで殴り合わせる決闘もどきを強要されたり、魔物の餌になったりと、ろくでもないばかりらしい。

「酷いことを……」

レーラが声を落とした。魔族に支配されるというのは、そういう悲惨なものが待っているということである。

エイタが質問した。

「それで、皇帝はまだ生きていると?」

「まだ何かに使えるのでは、と監禁されているそうだ」

カマルは一同を見回した。

「帝国を人類軍に加えるなら、ここは皇帝陛下を救出し、貸しを作っておくほうがいいと私は思う」

「魔王軍によって帝国は滅茶苦茶にされているもんな」

ソウヤは腕を組んだ。

「ここで魔王軍を追い出すなりできれば、皇帝陛下も人類側国家と協調路線で行くだろうな」

「魔族憎しの感情がたっぷりありそうだし」

ミストがニヤリとすれば、ジンは首肯した。

「では、我々の次の目的は、パルーチャ監獄を襲撃し、ニーウ帝国の皇帝を救出するということでいいかね?」

一同の視線が、ソウヤへと向けられた。銀の翼商会のボスであるソウヤは頷いた。

「やろう。以後のこともあるが、罪のない者たちを捕らえて玩んでいる魔族の悪逆を放置するわけにもいかない」

元勇者として、いや、ひとりの人間として、それは見過ごせない。

・ ・ ・

カラガンから聞き出した、パルーチャ監獄の大まかな位置をもとに、ドラゴンたちが魔力眼により偵察が行われた。

監獄の正確な位置、その外観や地形、特徴などを掴み、どのように皇帝や囚われている人々を救出するか、検討が必要だ。

ただ、闇雲に乗り込んで、そこにいる魔族兵を全滅させればいいというものでもない。ドラゴンにブレスで監獄を吹っ飛ばして、と頼むわけにもいかないのだ。

万が一にも収監されている一般人や、あるいは皇帝を人質とされた場合の対策も考えておく必要がある。

やがて、魔力眼で目的のパルーチャ監獄を発見。その元は城だったという監獄の外観がわかった。

かつては湖があった場所に建っている監獄は、湖が干上がったことにより、周囲を高い崖に囲まれる形となっている。出入り口は正面の門のみ。跳ね橋を上げてしまえば、陸の孤島の出来上がりだ。

「順当に言って、空から攻めるのが妥当だろう」

老魔術師は発言した。

「後は、皇帝の居場所がはっきりすれば――」

「いた!」

ミストが魔力眼を使いながら声を上げた。

「たぶん、この人!」