軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第532話、激突、1回

アイテムボックス空間内、模擬戦闘スペース。ソウヤとエイタ、そしてミストとレーラがいるだけの、空っぽの空間。

「最初に言っておく。これは椿の煽りを食らったせいではない」

エイタは言った。

「ただ、互いに実力ってのを知らない。今後どれくらい行動を共にするかわからないが、理解は必要だと思う」

「だから、レクリエーションだな」

ソウヤは、斬鉄を抜く。

「正直、加減は難しい」

「ああ、まったく」

エイタは金棒を持った。その体躯に見合わない鬼の金棒を軽々と持っている。

「俺も加減が下手クソだって言われる」

「ひょっとして、おたくもパワー系?」

「これは、椿じゃないが怪我前提になるか……?」

苦い表情を浮かべるエイタ。

「ソウヤ、あんたは体は頑丈か?」

「勇者補正がある。突っ込んでくるトラックを殴って腕の骨が折れることはないはずだ」

「そいつはよかった。だが、それを聞いて確信した」

エイタは金棒を構える。

「一発だ。お互いの得物をぶつけるだけで力量はわかる。たぶん、それ以上はやるだけ無駄だ」

「オーケー。じゃあ、一発だけ」

ソウヤは斬鉄を構えた。正直、どうしたものかと思う。どれくらいの力を入れればいいのか。基本、ソウヤが渾身の一撃を入れれば、ドラゴンクラスでなければ即死だ。

人間でその一撃を防げるものはおらず、武器に一発だけ当てると言っても、エイタを吹き飛ばしてしまうのではないかと、不安がよぎる。

では手加減すればいいかと言われると、その手加減の度合いを間違えれば、やはり吹っ飛ばしてしまうのだ。

そして実に厄介なことに、エイタの打撃がどれだけあるのか、まったく見当がつかない。彼の口ぶりからすると、どうもエイタもソウヤと同じように考えている節があった。

突っ込んでくるトラックを例に出したが、彼はそれを驚く素振りもなく受け入れた。少なくとも、それくらいの打撃をぶっ飛ばせるということなのだろう。

もっとも、ソウヤはトラックを例に出したが実際にぶつかったこともないので、想像でしかないが。

「ソウヤ」

「何だ?」

「俺のことは人間と思わなくていい。全力でいいぞ」

「いいのかい? オレの全力だと死ぬかもしれないぜ?」

「殺せるものならな。大丈夫、俺は死なない」

「冗談だよな?」

「割と本気だ。むしろ俺の一発で死んでくれるなよ」

知らないぞ――ソウヤは力を入れる。下手に手を抜くと、自分が押し負けて大怪我するパターンが見えた。さすがにそんな間抜けにはなれない。

睨み合う両者。制止する空気。ミストもレーラも固唾を呑む。

そしてどちらともなく、同時に突っ込んだ。激しい金属音、そして衝撃が拡散した。

「マジか……」

ソウヤとエイタは互いの得物をぶつけたまま固まる。

「呆れたね。どれだけパワーあるんだが」

「あんたもな」

ソウヤも苦笑する。まさか自分と本当に正面から衝突できる人間がいるとは。

「人間と思わなくていいって、本当は人間じゃないのか?」

「改造人間ってヤツだよ。……まあ、その辺は察してくれ」

エイタは武器を引いた。察しろ、と言われても何をどう察せというのかわからないソウヤだった。

だが、濁したところからしてあまりいい話でもないのだろう。ソウヤは深く追求はしなかった。

「まあ、そういうことにしておくさ」

「そうしてくれ。だが、人間かどうこうで言ったら、あんたも相当だと思うぜ、ソウヤ。さすが勇者だな」

「お疲れ様でした」

レーラがソウヤとエイタを迎えた。

「お怪我もなく済んでよかったです」

「せっかくいてもらったのに、悪いな」

「いいえ。治癒魔法を使わずに済むのが一番ですから」

にこにことレーラは微笑んだ。一方のミストはじっと黙り込んでいる。珍しいこともあるものだとソウヤは思った。

「どうした? いやに静かじゃないか」

「別に……」

「お前のことだから、エイタと戦いたいとか言うと思ったが」

「冗談。ワタシだって自分の力くらいわかってるわよ」

どこか拗ねたようなミストである。

「さすがに勝てないとわかっている相手に無策で挑むほど脳筋じゃないのよ」

「そうですか」

ソウヤが肩をすくめた時、空間内にリアハが入ってきた。

「ソウヤさん、今よろしいですか?」

「何だ?」

「まもなく、グレースランド国境です。私たちが王都へ向かうことは、もう伝えてありますか?」

「ああ、飛空艇3隻で向かうって先方には連絡してあるよ」

いきなり王都に近づいて、不審船認定からの攻撃は勘弁したいところである。前もって、飛空艇の販売についての相談があると、グレースランド王に申し出てあった。

「……おっと」

転送ボックスにお手紙がきた。どこから来たのか確認すれば、噂のグレースランド王国王都、グロース・ディスディナ城からだ。

さっそくお返事内容を確認すれば――

「王都、魔王軍の飛空艇の襲撃を受ける……だと!」

「え!?」

リアハ、そしてレーラがビックリする。彼女たちの故郷である。魔王軍と聞けば耳を疑うのも無理はない。

「被害は軽微なれど、本格攻撃の先触れの可能性あり。注意されたし――!」

魔王軍が動いたのか? グレースランド王国に対して、侵攻を開始したというのか。

――だとしたら、早すぎる!

ソウヤは歯噛みした。いや、早すぎるのではなく、人類側の対応が遅すぎたというのが正しいのかもしれない。

まだ本格的な攻撃ではないようだが……果たして。