軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第520話、化け物たちの襲撃

突然だったのは、ソウヤたちも同じだった。

接近する魔王軍の飛空艇の一番後ろが爆発と共に傾き、煙を引いて落ちていく。下はなにもない海上だ。仮に墜落となれば、生き残ったとしても海の魔物の餌食だろう。

ゴールデンウィング号で、戦いに備えていたソウヤは目を見開いた。

「いったい、何があった?」

「なに? もう戦闘始まった!?」

ミストがブリッジに駆け込み、ジンもやってきた。クラウドドラゴンが目を細めた。

「雲から何か出てくる……!」

その言葉通り、棒――マストが白い雲を割って飛空艇が姿を現した。魔王軍の飛空艇と形が違う。

「5隻目か!?」

見失っていた船かもしれない。その飛空艇から、電撃が走り、さらに健在の魔王軍飛空艇を攻撃した。

不意を突かれた魔王軍飛空艇の側面から爆発と煙が噴き上がった。

「何がどうなってやがるんだ……!」

ソウヤは状況が掴めなかった。5隻いると聞いた飛空艇。しかしうち1隻はしばらく消えていて、現れたと思ったら魔王軍を攻撃した。

つまり、魔王軍ではないのだ。個人所有の船か? 飛空艇は古代文明時代のリサイクルが主流だ。どこかの金持ちや冒険者が持っていても、珍しくはあるがおかしくはない。

魔王軍飛空艇は面舵をとるが、5隻目の船は足が速く追い越しつつあった。そしてすれ違いざまに電撃砲を叩き込まれ、火の手を上げる。

変針する敵船の前方に回り込みつつ、その船は砲撃を続行する。ソウヤたちに、その船は側面を向ける。

「綺麗……」

ミストが思わず呟いた。

魔王軍を攻撃する飛空艇は、鮮やかなブルーの船体色をしていた。スラリとした船体は、先鋭的で、近未来的な趣を感じる。

「なあ、ジイさんよ」

操舵輪を握りつつ、青い飛空艇を見ていたライヤーが老魔術師に声を掛けた。

「あの、船、おれ見覚えがあるんだけどさ」

見覚え、と聞いてソウヤは二人を見る。

「ジイさんの飛空艇コレクションの中に、あれによく似た色違いを見た気がするんだが、あんたは覚えはないか?」

・ ・ ・

魔王軍飛空艇、コマンダー・レーマーの旗艦は、突如現れた青い飛空艇の攻撃を受けていた。

左舷の飛翔翼がへし折られ、マストも吹き飛ばされた。浮遊装置に問題はなく浮いてはいるものの、その航行能力は大幅に失われた。

さらに撃ち込まれた電撃に、船首の電撃砲を始め、船体各所の武装を破壊され、甲板は炎に包まれた。

「何故だ!? 何故、こんな!?」

レーマーは吠えた。この正体不明の敵――海賊船の攻撃は適確だった。船首側を横切り、ぐるりと1周した敵船は、右舷側の翼と砲を破壊し、旗艦を完全に無力化させた。

「おのれっ!」

ミノタウロスの指揮官が憎らしげに注視する中、後方へ飛び抜けた敵船は、旗艦に後続する2番艦、3番艦を攻撃し、こちらも戦闘力を奪っていく。

「甲板の火を消せぃ!」

レーマーは叫ぶ。このまま延焼を許せば、トドメを刺されるまでもなく乗組員のステーキが出来上がる。

「3番艦が……!」

見張りの兵が悲鳴を上げた。浮遊装置をやられたのか、急激に墜落していく飛空艇。旗艦と同じくマストも主翼もやられたようで、おそらく姿勢を変えることもできず、海面に墜落だろう。

後続の2番艦は旗艦同様、航行能力を失い、炎上している。

「敵船、戻ってくる!」

見張りの報告を聞くまでもなく、青い飛空艇が旗艦に迫っていた。少し高度を高くとり、マストを失った旗艦の真上へと差し掛かり、そこで停船する。ロープが上からいくつも降ってきて――

「武器を取れェ! 敵が乗り込んでくるぞ!」

海賊船から海賊が来る。レーマーは腰から下げていた小斧を手に取る。船上での戦闘に備えて小型に作ってあるものだ。

魔族兵らも、それぞれショートソードや斧を握り、襲撃に備える。

ロープをつたって人影が滑り降りてきた。それは異様な集団だった。魔族兵たちも目を疑う。

頭がカボチャだった。いや、人型がカボチャの化け物の被り物をしているような格好だったのだ。

パンプキンヘッドたちは、こちらも船上戦闘用の斧や片刃の剣で魔族兵に斬りかかってきた。

たちまち船上で白兵戦となる。だが、異様なカボチャ頭たちとの戦いは、魔族兵たちを大きく混乱させた。

「化け物だぁ!?」

このパンプキンヘッドたちは、死ななかったのだ。

心臓を狙った一撃は、手応えがなくすり抜け、腰から両断したカボチャ頭は、分断されてもスケルトンのように動き、足を掴んできた。

しかも頭のカボチャはやたら堅く、突きでも斬りでも途中で刃が止まってしまった。

「グヌッ……」

カボチャ頭たちに部下たちがやられていくのを見て、レーマーは歯軋りした。そこへ上から人が降ってきた。

カボチャ頭ではない。黒髪をポニーテールにした凜とした女戦士だ。和風の出で立ちは珍しく、レーマーも初めてみた。

「ニンゲンっ!」

「総大将とお見受けいたす!」

その女戦士は腰の剣に手を添えた。

「妖刀『椿』、参る!」

「うおおおぉぉっ!」

レーマーは斧を振り上げ突進した。牛の魔族ミノタウロス。その体躯は逞しく、その筋肉から繰り出される渾身の一撃は人体を容易く切り裂く!

刹那、切り裂かれたのは、レーマーのほうだった。

パチンと鞘に刀が収まった時、ミノタウロスの巨躯は真っ二つとなった。

「……美味しい血でござった」

女戦士――いや剣士は恍惚とした表情を浮かべた。

「やはり戦士の生き血は格別にござるなぁ。妖刀冥利につきるでござる」