軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第458話、いざ木材調達へ

飛空艇の見積もりが出た。

ルガードーク商業ギルドのギプスが、同町の飛空艇関係の工房の仕事状況などを確認の上で、銀の翼商会からのオーダーに対する回答を取りまとめたのだ。

「やっぱ船って高いよな」

ソウヤはギプスが出した資料に目を通す。ライヤーも覗き込み、ふっと口元を緩めた。

「以前なら『買えねえよ!』って言うところなんだがな……。1隻作ってもらうのに、こんなもんかって思える自分が怖ぇ」

銀の翼商会は色々稼いでいて、財宝も回収したことから、お金には不自由していない。

「爺さん、どう思う?」

「ふむ……」

ジンが各工房の見積もりを比較していく。いわゆる相見積もりである。

「悪くない。任せて問題なさそうだ」

老魔術師の言葉に、商業ギルドのギプスが頷いた。

「では、どの工房に発注いたしましょうか?」

「全部」

ソウヤはきっぱりと告げた。ギプスはポカンとしてしまう。

「はい……? いま何と……」

「この船が作れると回答した工房……えーと、中型3隻で簡易が5隻か。これ全部、発注したい」

「何ですと!?」

あまりの驚きにギプスは椅子ごと後ろへ倒れこんだ。

「おいおい、大丈夫か!?」

ソウヤとライヤーも立ち上がったが、ギプスは自分で起き上がった。

「あー、まさか全部の工房の注文を受けられるとか……。銀の翼商会さんってどれだけお金持っているんですか」

「スポンサーが優秀でね」

何せバックには古代の魔術王クレイマンがいるのだ。その彼が貯め込んだ莫大な財宝をもらった銀の翼商会からすれば、一国の国家予算など目ではない。

「お金は使ってこそだからね」

そのクレイマン王であるジンは顎髭を撫でた。しこたま貯め込んでいた人がそう言うのである。

「とはいえ、ギプス氏。おそらく全部に発注をかけた場合、おそらく予算はこの見積もりに収まらないと思うが?」

「はい……。おそらく主材料となる木材の調達で」

ギプスはボリボリと髭をかいた。

「1隻、2隻ならどうということはなかったんですが、一度に8隻ともなると……材料の取り合いになるでしょうね」

木を育てるのは時間がかかる。船を作りたいからとのべつ幕なしに木を切り倒しては、環境破壊待ったなしである。

「船を作るのに使う木材は膨大な数になる」

ジンが言えば、ギプスも同意した。

「海に浮かべる船の話ですが、大軍船を作るために山ひとつの木を全部使ったとか聞いたことがあります」

本当かどうかはわからない。その山は言うほど大きくないかもしれない。――今はそれはどうでもいい。

「そこで、提案なんですがね、ギプスさん」

ソウヤは、以前指摘を受けて木材調達案を練っていた。

「必要になる木材を、銀の翼商会が調達してきましょう。それを安く提供できれば、この見積もりの価格も多少スリム化が可能では?」

「確かに、遠方まで木材を調達するために遠征することなく、必要量を即時購入できるなら工程の短縮も、諸々の費用も抑えることはできるでしょうな……」

ギプスは顔を上げた。

「しかし、可能なのですか? 先の話ではありませんが、本当に山ひとつの木をすべて倒す必要があるかもしれませんぞ」

「うちは行商ですから」

ソウヤは不敵に笑った。

「欲しいものを調達し、持って行くのが仕事です」

「……もう行商の範疇に入らない規模だと思いますが」

ギプスは真面目だった。ソウヤは首肯した。

「とりあえず、買う買わないは別にして木の調達に行ってきます。さすがに物も確認せずに商売はできないでしょう」

「そうですね」

ギプスは腕を差し出した。

「飛空艇の一からの建造はドワーフの長年の夢でした。今回のことでルガードークは大きく飛躍することになるでしょう。よろしくお願いいたします」

「こちらこそ」

ソウヤはギプスと握手を交わした。

かくて、飛空艇を量産するための木材調達が始まる。

・ ・ ・

ゴールデンウィング二世号は、ルガードークを離れた。

船内会議室で、ソウヤはジンから説明を受けていた。

「本来、木を切り倒しても、建材となるのは時間がかかる」

倒しても、すぐに加工できるものではないのだ。水分を飛ばしたり、皮をむいたり、乾燥させたりと、木材にするまでに時間と手間がかかる。その工程は種類にもよるが軽く数週間、数カ月かかったりする。

「だが幸いなことに、これから行くダンジョンの木は、これらの加工や乾燥の工程が凄まじく短くて済む」

ダンジョンの木は建材向きだ、とジンは言った。さすがにゲームのように、木を切ったらその場で建材として使えるなんてことはないが、それでも数日程度で使用可能なものになるという。

「それ、材木に関わる人が羨む夢の素材じゃね?」

ソウヤは素直にそう思った。

「凄くいいもののように聞こえるが、その割にはダンジョン産の木材って聞かない気がする」

「そりゃあそうだよ、ソウヤ」

ジンは笑った。

「モンスターの蔓延るダンジョンに飛び込む勇気と力のある者たちでなければ、入手できないからね」

「あー……」

「それに、大木を持ち運ぶ手段も必要になる。冒険者が護衛について、業者がダンジョンの木を切ったとしても、それを安全な場所まで運ぶのは難しい」

なるほど、とソウヤは頷いた。

優良な木があるのに、誰もやらないのは、それ相応の理由があるのだ。

「幸い、銀の翼商会は戦闘員が多い武装系商人集団だ」

――何だよ、武装系商人って……。

勇者や騎士、魔術師が複数在籍する商会だから否定はできないが。

「さらに、我らがソウヤ君は、アイテムボックス持ちで、容量も重量も無視できる。これほど木材伐採と回収に向いた組織は他に存在しないと思うね」

「つまり、天職かもしれないってことか。……いっそ転職するか」

もちろん、皮肉である。