軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第427話、通信機バリエーション

水天の宝玉と魔力式通信機、クラウドドラゴンはどちらが使えるのか。

彼女の話は、ジンを経由してソウヤのもとに届いた。

「で、爺さん、どっちが使えるんだ?」

「相手も同様のものを持っているという前提でいえば、比べるまでもない。宝玉のほうが優れている」

ジンはきっぱりと断言した。

「かなりの遠距離でも、また海の底でも届くのだからな。こと交信ツールとしては、現状最強だろう」

「……これを通信機にも応用できるか?」

便利なものに仕上がるなら、その技術を応用したいと思うのが親心。

「これを作れるのがアクアドラゴンのみだ」

老魔術師は顔をしかめた。

「しかも何か装置を仕込んだわけではない。クラウドドラゴンから聞いた話ではアクアドラゴンの分泌物から作られているという……」

「分泌物?」

途端に胡散臭いものを感じる。

「まあ『涙』なんだけどね」

「涙……」

ソウヤは反応に困った。汗や涎とか、あるいは排泄物ではなくて安堵したが、涙とは――

「涙で宝玉ができるのか?」

「そう思うのが自然だ。だがそれを宝玉としてしまうところにドラゴンの恐ろしさがある」

ジンの言葉に、ソウヤも頷いた。

涙から交信用のアイテムを作るなど、正直信じられない。

「魔力を宝玉の形にして、魔法文字ではなく、『念』を封入して効果を発揮しているのだろう。文字は形だから残るが、目に見えない魔力を拡散させずに効果を維持するのは、さすがドラゴンの力と感心するね」

ジンは頷いているが、ソウヤにはよくわからなかった。専門家がそういうのだからそうなのだろうと納得しておく。

「アクアドラゴンに頼めば作ってくれるかな?」

「ひとつや二つなら、友人の君にプレゼントしてくれるかもしれない」

ジンは冗談めかした。

「いや、オレはアクアドラゴンと友達って関係じゃないぜ?」

「しかし一定の信頼は得ている」

「そうか?」

「でなければ、先のデュロス砦の際にクラウドドラゴンと共に戦ってはくれなかっただろう」

「おう、それそれ。そういえばあれは何で戦ってくれたんだろうな?」

銀の翼商会メンバーにドラゴンに参戦を促せる人材などいない。頼めたとしても、ソウヤ自身かミストくらいだと思っていたのだ。

ジンは顎髭を撫でた。

「あれは私がお願いした。念話で外の様子を確認していたんだが、ちょっと苦戦していたようだから、ドラゴンたちに念話を繋いで戦ってもらえないか相談した」

「……よくあの二人が、戦う気になったな」

人間のお願いで動くなんて、そうそうないことである。

「アクアドラゴンは焼肉とタレで釣った。クラウドドラゴンはブレスを吐いて暴れ回ってもいいと言ったら、やる気を出してくれた」

ジンは素知らぬ顔で言った。

――アクアドラゴンは案外、ちょろいかもしれない。

ソウヤは思った。クラウドドラゴンは食べ物には釣られなかったようだが、暴れ回れる云々とは、かなりストレスを抱えていたのだろうか?

「……話を戻して、ひょっとしたらアクアドラゴンって、食べ物で釣ったら水天の宝玉を量産しまくってくれたり?」

「人に涙を強要するのはどうかと思うよ、ソウヤ」

ジンは気の毒なものを見る目になった。もちろん、そんなつもりはなかったソウヤである。

「現状、水天の宝玉はアクアドラゴンしか作れない。それは量産化を目指すのなら、大きな問題だ。何よりドラゴンをその気にさせるのは難しい」

「確かに」

「それならば、魔力式通信機をより改造し製品化したほうが数は揃えられる。まあ、コストがどれくらいかかるはやってみないとわからないが、アクアドラゴンのみよりは量産できるだろう」

「そうだな」

それは明らかである。

「それで爺さん、通信機の開発についてだけど、そちらは進展があるかい?」

「初期のブローチ型は、銀の翼商会で使ってみて様子を見る」

ジンはスクロールを出して、それを机に広げた。

「製品化に向けた通信機のアイデアだが、設置型の大型通信機案」

町や村に設置して、連絡を取り合う。

「いきなり大きくなったな」

「移動するわけじゃないからね。売り込み先は国相手がいいだろう。この世界では、王様の一声でだいたい全土に広がるからね」

大事業だ、とソウヤは思った。

「行商の売り込むレベルのものじゃないような気がする」

「『何でも取り扱う銀の翼商会』というフレーズを信じるなら、あっても困らないと思うがね」

「皮肉はよしてくれ」

何でも扱えないし、理想ではあるが、危険物を簡単に手に入るようなことはしないつもりである。

「次は、携帯型だが大きめの通信機」

簡単な図面によれば、箱形である。ピンとアンテナが伸びているそれは――

「なんか戦争映画で観たことあるぞ」

「通信兵が背負う通信機だね。そう、魔王軍との戦いで人類側の軍が使用することを考えたものだ」

ジンは言った。

「先のブローチ型簡易通信機は、人数が多ければ多いほど聞き取りづらかったり混信しがちになる。だから戦場では部隊に数個程度に配備して、全体の数を絞る。周波数を変更したり、バッテリーとなる魔力もより強いものが載せられる」

「それでこの大きさか」

リュックサックを背負う感覚で運べる大きさである。

「あまり重いと、移動するのが大変だからね。それでなくても、通信機背負っている姿は周囲から目立つ」

的にされないように、運ぶほうにも機動性を持たせる。これ大事。

「これの小型版として、固定電話の受話器程度の大きさのものも作るつもりだ。より軽く持ち運びに便利なようにね。もちろん、小さい分性能は少し落ちるが」

そして最後の案は――

「売り物というより性能強化版」

最後に見せられた図は、先ほどのブローチ型や腕時計型、スマホ程度の小型のものだ。

「ほら、やっぱり通信機というより、電話が欲しくならないか? きちんと個人と話せるような」

老魔術師は、ニヤリと笑った。