軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第418話、伝説となったコング

「クレルが捕獲された!?」

カマルから話を聞いたコレルは、びっくりした。

「どういうことだ、カマル!?」

「言葉の通りだ。この辺りには生息しないギガントコングだから、当時は結構話題になったらしい」

カマルの説明によるとこうだ。

十年前、コレルら複数のメンバーが重傷でアイテムボックスに収容された後、ソウヤたちがデュロス砦を攻略した後、魔獣に襲われた難民たちのところに、ひょっこりとギガントコングが現れ、魔獣たちを蹴散らしたのだという。

その難民たちは、人間を襲わないコングに守られてどうにか近くの集落へたどり着けたらしい。

「だが、そこで警備隊にギガントコングは捕まったらしい」

難民たちと行動を共にしていたとはいえ、警備隊からは魔獣に見えたのだろう。ただコングは非常に大人しかったという。

「そこから別の場所へ移送されることになったんだが……脱走した」

「脱走……!」

コレルは絶句した。カマルは首を振った。

「用意された檻が柔らかかった。……いや、普通にコングのパワーが強かったんだろう」

「その後、どうなった?」

「姿を消した」

カマルは荷物から羊皮紙を取り出した。地図だった。

「この辺りに集落があってな。この近くにある森――ちょうど、集落とこの峠の間にあるんだが、ここにギガントコングが棲んでいる、と言われている」

「ギガントコング……クレルか!?」

コレルが地図に顔を近づける。カマルはそれを嫌がって少し距離を離す。

「さあな、だがその可能性は高い。ちなみに、この集落は例の難民たちが作ったもので、そこではギガントコングは守り神として崇められているのだそうだ」

自分たちを守ってくれたコングを敬っているという。コレルの表情が緩んだ。

「そうか……あいつ」

自分の獣魔が人の役に立って、嬉しかったのだろう。そんな魔獣使いの青年の姿に、ソウヤとリアハは顔を見合わせ、思わずほっこりした。

そういえば、クレル捜索の際、『ギガントコングが汚染されていないかもしれない』と言ったのは、リアハだった。

勘が鋭い、というか結構、要点を正しくついているとソウヤは思った。

カマルが口を開いた。

「で、探しに行くのか?」

「え……?」

「そうでござる。生きているのだから、会いに行くでござるよ」

フラッドも頷いた。

そう、死んでいないのは、フラッドが魂の交信ができなかった時点でほぼ確定している。

だが、当のコレルは何故か表情が晴れなかった。

「コレル殿?」

「……何というか、話を聞くまで探す気満々だったんだが」

コレルは俯いた。

「守り神なんて慕われて、森に棲んでるっていうのは……。あいつはあいつで、もうオレを必要としていないと言うか、立派にやっていると言うか……」

「コレルさん……」

「今さら会いに行っても、な……」

「そうだろうか?」

カマルが難しい顔になった。

「おれには、クレルはお前を待っているように思えるのだが」

「……オレを?」

「そうでござるよ」

フラッドも言った。

「十年前、難民たちを守ったのは、コレル殿と再び会うため。人と合流すれば、コレル殿が会いにきてくれると思ったのでは?」

「……!」

「それで村で警備隊に捕まったのも、ひょっとしたらお前に会えるかもと期待して、大人しくしていたのかもしれない」

カマルは腕を組む。

「だが、段々お前から遠ざかっていると思ったんだろう。それで脱走したんじゃないか?」

「然り。それでほれ、この森に留まったのも、コレル殿と別れたこの峠から近い位置で、いつか会えるのを待っていたからではござらんか?」

コレルは泣いた。大粒の涙がポロポロとこぼれる。

あれから十年経った。アイテムボックスの時間停止空間にいたコレルにとっては、わずか数週間前の出来事。しかし、ギガントコングのクレルは長いあいだ、ずっと主を待っていたかもしれないのだ。

その思いに感極まるコレル。カマルはそんな戦友の肩を叩いた。

「会いに行くよな……?」

「ああ」

涙を拭う魔獣使いの青年。ソウヤとリアハは思わずもらい泣きしてしまうのだった。

・ ・ ・

汚染魔獣の死体の処理は続く中、浮遊ボートを使ってギガントコングのいるという森へ向かうことになった。

メンバーは情報を集めたカマル、魔獣使いのコレル。リザードマンのフラッドとソウヤである。

ソウヤがいるのは、ボートのスペースの都合だ。コングを発見、連れ帰る場合、その大きさから定員オーバーと同様の現象に見舞われることが想定された。だからアイテムボックスが使えるソウヤが同行することになったのだ。

浮遊ボートの先頭にカマルは立つ。地図と下の様子を見比べながら、彼は言った。

「地元では巨人の森と呼ばれているようだ」

「あの森か?」

コレルがその森を見下ろした。空から見たところ、それほど大きな森ではなさそうだった。

「そうだ。……誰があの森をそう呼んでいるかは、見当がつくよな?」

「近くに住んでいる元難民たちだろ?」

ソウヤは風魔法噴射板の向きを変えて、ボートをゆっくりと森へと向ける。カマルは「そういうことだ」と頷いた。

「なあ、カマル。森の中に建物があるような……」

ソウヤは目をこらす。カマルも目を細めた。

「集落で聞いた話では、祠があるそうだ」

「コングの祠?」

「ああ、毎年、集落からお供え物をしているらしい」

「じゃあ、行ってみるか」

浮遊ボートは森の祠とやらに向かう。森の中に開けた場所があって、そこにボートを降ろした。

その奥は祠の敷地内である。