作品タイトル不明
第411話、わからないことが多すぎる
「そう言われてみれば妙だな……」
カマルに汚染魔獣関係について聞いてみれば、情報畑の人間である彼も首を傾げていた。
「それなりの数の汚染魔獣がいたのに、問題になっていないのもおかしい」
「わかった。ちょっと調べてみる」
一度カマルはゴールデンウィング二世号から浮遊ボートに乗って、近場の調査員と接触すべく移動した。
このトルト峠付近に人は寄り付かないので、地元民が若干距離が離れているが、それでも何故寄り付かないのか、噂くらいは聞けるだろう。
「というわけで、これからの予定だが――」
ソウヤは休養中メンバー以外の全員を集めて朝礼よろしく通達する。
「レーラ、汚染魔獣の治療をよろしく頼む」
「わかりました」
聖女様は今日も笑顔だった。
「オレとコレルは、下に降りて汚染魔獣の捕獲ないし駆除をする。荒事確定だから、同行することになるメンバーは準備を怠らないこと。戦闘組はローテーション組んでやるから、自分が何組目か確認してくれ」
ソウヤが見渡せば、商会の戦闘メンバーたちは頷いた。
「で、これとは別にデュロス砦の調査をするグループを編成する。かつての魔王軍の拠点だが、今どうなっているのか確認だな。この辺りの汚染魔獣の件で何か関係があるかもしれない」
これには元勇者パーティー組を中心に派遣する。魔王軍残党などがいたとしても、彼らなら対応できるだろう。
「砦捜索グループはジンに指揮してもらう。頼んだぞ、爺さん」
「任された」
一通りの指示を終えて、それぞれの行動に移った。
・ ・ ・
ソウヤたち汚染魔獣討伐グループは順調に魔獣を見つけ出し、狩り出した。
見た目よりパワーアップしている汚染魔獣だったが、これに後れを取るような素人はいない。
とはいえ、やはり無傷とは行かず負傷者は出るもので、上空待機しているゴールデンウィング二世号に浮遊ボートを使って退避したりした。
「なかなかギガントコングがいねえな……」
思わずぼやくソウヤ。ソフィアが表情を歪めた。
「使い魔は飛ばしているんだけどね……。いたらわかると思うんだけれど」
「本当は、もう……」
リアハが沈痛な顔になる。コレルは言った。
「だが、フラッドはクレルの魂と交信できなかった。つまり、生きているということだ」
「左様」
リザードマンのフラッドが周囲を見渡しながら言った。
「昨夜、コレル殿ともう一度試したのだが、魂は呼び出せなかった。ここが十年前に彼を最後に見た土地で、もし死しているならほぼ確実に呼び出せたはずでござる」
「ここにいない、という可能性は?」
リアハは考え込む。
「生きてはいるけど、このあたりにクレル君がいないから、呼び出せなかったというのは?」
グレースランドの姫騎士の発言に、コレルは肩をすくめた。
「だが、汚染魔獣はこの一帯から動いていないって話じゃないか。この辺りにいないっていうなら、周りじゃもっと騒ぎになっているんじゃないか?」
「その、汚染魔獣になっていない、という可能性もありませんか?」
「え……?」
ソフィアが目を丸くした。
「どういうこと?」
「テンロウ、タイガ、そしてウメルカ。ここでは汚染魔獣として遭遇しましたけど、クレルは可能性が高いというだけで、汚染されたって証拠はないじゃないですか?」
確かに――ソウヤは考える。だが、汚染魔獣となっている可能性のほうが遥かに高い。
「ここにはいない可能性……。汚染魔獣になっていない可能性、か」
コレルは目を伏せる。東方出身の剣士ナダがやってきた。
「とりあえず、ここの魔獣を狩りまくればよろしかろう。それで見つかればよし。いなければその時、改めて考えればよいのでは?」
不採用から一転、度胸ひとつで採用を勝ち取った剣士は、実に前向きだった。
捜索を続ける。しばらく進んでいると、唐突に、ソフィアが変な声をあげた。
何事かと見れば、彼女は頭上――ゴールデンウィング二世号を見上げていた。
「――ジン師匠が呼んでるで間違いないのね? わかった」
独り言を呟いているように見えたソフィア。おそらく魔力念話だろうと見当をつけるソウヤに、彼女は振り向いた。
「砦捜索に行ったグループから呼び出しよ。こっちへ来てほしいって」
「トラブルか?」
デュロス砦に敵がいたか。
「わかんない。来たら説明する、だそうよ。念話だと説明が難しいみたい」
なるほど、それなら仕方ないとソウヤは頷いた。
間違ってもつまらない話ではないだろう。わざわざ念話で呼び出すくらいだから。
「ゴールデンウィングに戻る。ソフィア、船に念話」
「はいはい。……あ、お父様? 私たちを回収してってソウヤが言ってる。それから砦に向かうって――」
念話で上空の飛空艇に呼びかける。相手は父のイリクなのは、やりとりでわかった。
・ ・ ・
ゴールデンウィング号に戻ったソウヤたち。コレルはギガントコングが見つからない理由についてあれこれ考えていた。
笑顔のレーラが出迎えた。
「コレルさん、三頭とも元の状態に戻りました」
「!?」
それを聞いたコレルは、アイテムボックスハウスのほうへ駆けていった。レーラはニコニコして、その後を歩いて追う。
――まあ、コレルの気持ちもわからなくはないな。
つい先日まで、死にかけ同然なほどくすぶっていた青年である。家族とも言える魔獣たちと、生きて再会できたことがうれしくないはずがない。しかも死んだと思われていた二頭とも、また会えたのだから。
ソフィアがイリクと話し込んでいる。おそらく砦捜索に向かったジンからの話の詳細を話し合っているのだろう。
「ライヤー、船をデュロス砦に」
「アイ・サー、ボス!」
ライヤーがゴールデンウィング二世号を操舵する中、ソウヤは、イリクとソフィアのもとへ向かった。
「それで、何か見つかったのかい?」