軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第410話、復活する特性

汚染魔獣は聖女の力で回復可能。

「まだ一例だ。必ずしも助けられるという保証はない」

ジンは冷静にそう指摘した。

「たまたま上手くいっただけかもしれない。最低でももう、二、三試したほうがいい」

「……コレルがそんなに待てるとは思わないけどな」

ソウヤは、先ほどからそわそわしている魔獣使いを見た。

一日捜索に当たったから、休息や睡眠をとる仲間たちが多い中、コレルは眠くないとばかりにフロアをウロウロしているのだ。

「君も見ただろう。治療を始めた時、ワイルドウルフはかなり暴れた」

老魔術師の言葉に、ソウヤは頷いた。

「ああ、かなりヤバイ感じだった」

囲いに頭をぶつけたりしていたら、危なかったかもしれない。

「眠らせるなりしたほうがいいんじゃないかな?」

「次はそうしよう。ちゃんと効くかどうかもまず確認しないといけないがね。その上で、きちんと汚染から回復できるか……」

ジンは顎髭を撫でた。

「十年の汚染を取り除いたのは、さすが聖女の力と思う」

「1分で1年分か」

ソウヤは微笑した。レーラはよくやってくれた。

「汚染魔獣の回復については明日レーラに任せるとして、ギガントコングの捜索だが……どうだろう、複数のチームに分けて捜索範囲を広げるというのは?」

「というと?」

「あの峠周辺に捜索隊ひとつは少ないと思うんだ。手分けしたほうが捜索時間を節約できる」

「時間経過無視のアイテムボックスを持つのは君だけだぞ、ソウヤ?」

「別に魔法なりで動きを封じられれば、後から駆けつけても問題なくね?」

「ふむ……」

「ギガントコングなら、コレルでなくても初見でもだいたいわかる。同じ種類の別個体だったとしても、とりあえず無力化した後に、コレルに見てもらえばいいわけだし」

「一理あるな」

「不安はある」

コレルがやってきた。座れ、とソウヤは椅子を勧めた。

「オレたちは、クレルとウメルカを探しにきた。だが蓋を開けたら、天狼と大牙がいた。もしかしたら、他にも……」

「汚染魔獣として生きている可能性がある、か……」

ソウヤは頭を抱えた。

コレルの使役していた魔獣については、ソウヤも全部覚えていない。複数のチームで捜索したとして、コレルがいないパーティーが、コレルの従魔と遭遇した場合、それと気づかず倒していまうなんてことがあるかもしれない。

そいつらは諦めろ、とは言えない。それが言えるなら、クレルとウメルカを探そうなんて言わない。この従魔は助け、他の従魔を助けないという選択肢は初めから存在しないのだ。

「効率は悪くても、それを見逃さないようにコレル入りのパーティーだけで捜索するか?」

「あるいは手当たり次第、全部無力化してアイテムボックスに収納するか」

ジンの意見を採用するなら複数のチーム案も可能だ。後処理が少々面倒になってしまうが。

考えていると、サジーがやってきた。ソフィアの兄であるガッチリした体躯の魔術師である。

「ソウヤ殿、よろしいですか?」

「どうした?」

「例の汚染魔獣の死体……いや、もう死体ではないのですが、動き出しました」

「動いたか」

ソウヤはジンを見た。

「爺さんの推測通りだったな。あの汚染魔獣は不死属性があるようだ」

「推測が当たっても、特にいいことはないがね」

そう皮肉るジンと、ソウヤたちは回復させたワイルドウルフとは別の囲いに入れていた汚染魔獣のもとへ行く。

ガシャンと囲いの壁を叩く音がした。

「……あれが死んでたって? 信じられないな」

汚染ジャイアントリザードが壁への頭突きを繰り返している。外に出たいようだ。もっとも、出すつもりはないが。

「傷が回復していっているな」

ジンがリザードを指さした。肩口のところにあった切れ目が小さくなっている。

「ただ回復するだけなら治癒や健康面で大いに研究できただろうが、この汚染は他の生物に感染する上に、その思考を殺意と攻撃のみに支配してしまうという……。危険極まりない代物だ」

「今のところ汚染を取り除くのは、レーラの力だけか?」

感染と凶暴化、これが始末が悪い。放置しておけば、この汚染が他の生物に広がり――

「妙だな……」

ソウヤはそれに思い至る。

「十年前、あの汚染された魔獣は大体倒したし、それを操っていた魔王軍の連中は倒した」

だが生き残りがいて、ここ十年生き続けていた。汚染した魔獣は死んでも回復して存在し続けた。

「おかしいな。十年も経っているのに、この汚染魔獣が広がったって話はないようだし、カマルも特に何も言ってなかった」

「人が寄り付かない土地としか聞いていない」

コレルも腕を組んだ。

「確かに妙だ。今日だけでも、そこそこの数の汚染魔獣と出くわした。この規模なら、もっと拡散して騒動になっていてもおかしくない」

「カマルに調べさせよう。この辺りの集落を当たって情報を集めさせる」

ソウヤは決めた。何だか陰謀の臭いを感じる。この地の魔王軍の企みは、まだ潰えていないかもしれない。

「使い魔でも何でもいいから、どの辺りまで汚染魔獣がいるか調べたほうがいいな。どこまで汚染が広がっているのか、その境界線があるなら、その中心には何かあると見るべきだ」

「怪しいのは、例の砦か?」

デュロス砦――かつて魔王軍に支配された拠点である。十年前の汚染の策を用いた敵がいたのもここだ。

まだ何か、前回見逃したものがあるのかもしれない。

「今回は汚染魔獣を徹底的に処理しておこう。この復活する特性を十年前に気づいていたなら……」

確実に処理ないし、隔離などできたかもしれない。死んだと思い、放置した結果、再生してまた徘徊していたに違いない。

忙しくなってきた。