作品タイトル不明
第395話、魔族アジトへ突入
「相手は魔王軍の残党だ。初めての者もいるから言っておくが、基本は始末しろ」
ソウヤは攻略メンバーを見回した。
「降伏する素振りを見せたとしても油断はするな。背中を向けたら襲ってくるぞ。いいな、カエデ?」
「わかりました」
コクリと頷くニンジャ少女。
「もし生かす場合は必ず無力化させろ。それが自分や仲間の命を守る」
ちょっとした油断、手違いで十年前に手酷い目にあった。敵が降伏したと安堵した瞬間、刺された者もいた。
「今回は敵の拠点を制圧するのが目的だが、魔王軍の情報も欲しい。よって幹部かそれに匹敵する魔族を捕らえたい」
「見分けがつく?」
ソフィアが問うた。カーシュが口を開く。
「目星はついているのかい、ソウヤ?」
「ナールの証言にもあったトカゲ女……リザードマンの魔術師は殺さず生け捕りだ。心臓のことも聞きたいしな」
一同は頷いた。カーシュは首を傾ける。
「心臓で思い出したけど、もしそれを使って、人質策をとってきた場合はどうする?」
「やれるもんならやってみろの精神で突っ込め」
「無視するんですか?」
セイジが眉をひそめ、リアハも渋い表情を浮かべた。ソウヤは続ける。
「人質ってのは相手の動きを止めるために使うもんだ。呼びかけに応じて足を止めた時点で半分成功。だから聞こえないふりして挑みかかれ」
人質をどうこうする寸前、もしくは直後に自分がやられるとなれば、守りを優先せざるを得なくなる。
人質とは、相手がその価値を認めてこそはじめて効果があるのだ。認められない人質は価値はない。
「強引」
ミストが微笑した。反対意見ではなく、面白がっているようだ。下手に制限つけられるのはドラゴンの好みではないからだろう。
「とはいえ、人質は助ける方向で。人質策をとられた場合は速攻で対処。それ以外は見捨てたり、巻き込んだりしないように注意」
「了解」
カーシュとメリンダの騎士コンビが首肯した。
「場はそこそこ広いようだが、地下であることは忘れるな。特に効果範囲の広い魔法を使う時はだ。……いいな、ソフィア」
「わかってるわよ。……というか何で私に振った?」
「頼りにしているからだ」
「う、わかったわよ」
照れたように頭をかくソフィア。イリクはそんな娘の様子を興味深げに見ている。
「居住区画は閉所での戦闘になる。そちらの制圧はオダシュー、ガルとカリュプスメンバーに任せる。全員に言っておくが、前だけじゃなく、側面や後ろにも注意しろ」
暗殺者メンバーが目で頷くのを確認し、ソウヤは言った。
「隠し扉とかあると思って行動しろ。何なら真上や自分の足もとにも気を配れ。……何か質問は?」
「――ない」
「ありません」
攻略メンバーたちは答えた。ソウヤはジンを見た。
「爺さん、結界と外を頼む。新人は拠点の外を見張り、抜け穴から脱出する敵がいないか警戒。イリクさん、若い連中は任せます」
「任されました、ソウヤ殿」
今回は、銀の翼商会の古参メンバーとカリュプス組、元勇者パーティー組で挑む。これはソウヤがまだ新加入したメンバーを把握しきれていないのも影響している。
なお唯一の例外はカエデ。彼女はシェイプシフターを通して敵拠点を頭に入れているため、攻略メンバーに加えられている。いざという時のナビゲーションをあてにしている。
「よし、作戦開始だ」
・ ・ ・
ソウヤたちは盗賊のアジトから地下の魔王軍の拠点へと向かった。
階段を下った先に見張りがいたが、カエデの偵察ですでにわかっている。だから報告される前にガルとセイジが忍び寄って処分した。
――さっすが暗殺者。
ソウヤの中では、セイジも立派に暗殺者と呼ぶレベルである。
――しかし……。
セイジは例のティーガーマスケの仮面を被っていた。
「それ、気にいったのか?」
「これをしていると、ウケがいいんですよ」
新人たちからは、マスクをしていないと落ち着かないと言われたらしい。
「――おれは獣人の姿は好きではなかったが」
ガルがボソリと言った。
「よくよく見ると、案外悪くないと思う」
「それ、褒めてるの?」
かつて、呪いによって夜になると獣人の姿になっていたガルである。
呪いは解かれたが、ふと客観的に見た時、戦場においてはそう悪いものではなかったと見直したらしい。
攻略チームは進む。照明がある、という事前報告の通り、至るところに球形の照明があった。
「それほど明るくないのに、照明だけは妙にまぶしく見える」
ミストが目を細めた。
透明の球形の中に溶岩が満たされている――そんな照明である。これも魔法の類なのだろうか、とソウヤは思った。
通路を抜けて空洞に入った直後、魔王軍兵士が何人かいて、侵入者に気づいた。
『オマエラ何者――』
それ以上の声は出なかった。ガルが投げナイフで、その魔族兵の喉を貫いたからだ。
「突撃!」
複数人に気づかれた以上、もはや奇襲はできない。このまま一気に攻め込んで落とす!
『敵し――』
仲間に通報しようとした魔族兵が撃たれる。とっさに腰に下げていた武器をとった者もいたが、先陣を切ったミストやセイジ、カリュプスメンバーによって倒されていく。
「オレたちは魔術師の工房へ向かう!」
ソウヤは斬鉄を片手に先導する。人質は早いうちに助けるべきである。ついてくるのはカエデとカーシュ、メリンダ、ソフィア、リアハ、ダルだ。
移動の途中にようやく警笛のような音が空洞内に響き渡った。まだ無事な魔族兵たちが慌てて動き出すだろうか。
そう思った矢先、ソウヤたちの前にひょっこり魔族兵が顔を覗かせた。
「様子を見に来たって顔をしているぜ!」
斬鉄でその魔族兵の頭を吹っ飛ばした。カエデが言った。
「ソウヤさん、その先が工房です!」
さながら舞台のような場所に出た。パルテノン神殿とまでは言わないが、そこそこ太い柱がいくつも天井に伸びているそこには、研究棚と机が場違いのように置かれていた。
「侵入者!」
魔術師ローブをまとったトカゲ顔の女魔術師が吠えた。