軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第392話、倒せない死体の対処方法

「くそっ、死体じゃなかったのかよ!?」

魔術団の魔術師アーチは、突然起き上がって襲ってきた盗賊に手にしたメイスを叩きつけた。

ソウヤとミストが蹴散らした盗賊たちの死体。それを一カ所に集めて処分しようとしたら、この死体が動き出したのだ。

「アンデッドか!?」

「ファイアボール!」

そこかしろで戦闘が勃発する。魔術師は魔法で対応、戦士たちは武器で応戦した。

「確かに死んでいたはずなのに! ……ソワン!?」

同じ魔術団から来ている眼鏡っ子魔術師のソワンが頭を抱えてうずくまっている。

アーチはライトニングの魔法で、同僚に迫る盗賊を撃った。

「大丈夫か、やられたのか? ――治癒術士!」

「あ、治癒術士は私です……」

青い顔をしてソワンは言った。

「すみません、昔からアンデッドは苦手で……」

魔術団から派遣されたメンバーの中で最年少のソワンは震えていた。

「この人たち、何で動いているんですかぁ?」

「知るか! アンデッドだからだろ」

アーチはメイスを構える。ライトニングを浴びせた盗賊が再び起き上がり、ニヤリとした。

「そんな魔法じゃ、おれは殺せんぞー?」

「アンデッドにしては喋りが流暢過ぎるんですがー!?」

ソワンが声をあげたが、アーチはメイスを叩きつける。盗賊は剣でそれを防いだ。

「諦めて降伏しな。そうすりゃ、殺さずに生け捕りにしてやるからよ」

「冗談じゃねえ! 不浄なる魔を焼――」

「おっと、馬鹿が!」

盗賊がメイスと剣のつばぜりから、無理矢理体当たりを仕掛けてアーチを押し倒した。

「この至近距離で詠唱なんてさせるかよ!」

したたかに背中を打ち付けるアーチ。上に乗っている盗賊は剣の柄で、アーチを殴った。

「降伏しろ! そうすりゃこれ以上痛い目にあわなくて済むんだぜ……っ!?」

その盗賊は、自分の頭のすぐ横に杖があってビクリとした。

「エアブラスト」

ソワンが短詠唱で、アーチの上の盗賊を頭から吹っ飛ばした。ソワンはすぐにアーチのそばに膝をついた。

「先輩、大丈夫ですか!?」

「ああ、大丈夫……鼻血か」

「すぐ手当てしますね!」

「お前、平気なのか?」

「何がですか?」

意味がわからず首をかしげるソワン。

「私、治癒術士ですから! 血では驚きません!」

「えー……そう」

色々突っ込みたいところだが、とりあえず手当てを受けながら、先ほどの盗賊を目で追い――

「……っ! ああ、クソが!」

顔面に魔法をくらったのに無事そうだった。アンデッドには大して効かなかったか。タフなやつだと、アーチは思った。

どうやったら倒せるだろうか……?

「凍土、氷結!」

新たな声が響いた。すると、先ほどの盗賊が氷に閉じ込められた。

「魔術師で氷の魔法が使えるものは、凍結系の魔法で対応!」

ソフィアが交戦する場を走りながら声を張り上げた。

「凍らせられないなら、何でもいいから動きを封じる魔法で足止めさせて。私が片っ端から凍らせて回るから!」

六色の魔術師が盗賊たちを氷漬けにしていく。しぶとく倒せない敵を、とりあえず氷で閉じ込めて封じてしまおうということか。

「さすが、ソフィアさんだ……」

対処に困っていたところで、的確な指示が出た。

「近接系戦士の皆さん!」

今度はティーガーマスケ、もとい、中の人であるセイジの声が響いた。

「敵の首を狙って飛ばしてください! そうすれば、敵アンデッドの動きが緩慢になります!」

「おう、スケルトンの対処と同じか!?」

東方出身の剣士ナダが叫んだ。セイジは「そうです!」と答えれば、戦士系冒険者たちが声を張り上げた。

「対処がわかればこっちのもんだ!」

すでにカリュプスメンバーらは、盗賊の首狩りをやっている。

胴体と頭が切り離されれば普通は死ぬのだが、この盗賊たちはそれでも死ななかった。だが頭を失った胴体は、壊れたロボットのように同じ動作を繰り返すばかりになり、頭だけのほうは動くこともできなくなる。

そうして行動不能になっていく盗賊らは、ソフィアや氷の魔術師たちによって封じ込められていく。

一時は混乱した銀の翼商会の新人たちだったが、ベテラン勢によって息を吹き返し、盗賊たちを全員行動不能にさせたのだった。

・ ・ ・

「――というわけで、外の敵は無力化しました」

イリクがソウヤにそう報告した。

心臓を抜かれた盗賊たちは、料理番の男の言うとおり再びこちらに牙を剥いてきた。

「対処法がわからないのなら、とりあえず氷漬けにして封じろ、とは、我が娘ながら機転が利きます」

どこか誇らしげなのは気のせいではないだろう。自分の娘の成長ぶりに感無量と言ったところか。

「それはよかった」

「セイジ君やカリュプスの者たちも素晴らしい活躍でした。魔術師らを守りつつ、うまく時間を稼いで敵を無力化させていきましたから」

「結構結構」

ソウヤは頷くと料理番の男を見た。

「表のお仲間は氷の中だそうだ」

「……」

「詳しい話を聞きたいな。魔王軍の残党に使われている経緯ってやつを」

ソウヤは自身の心臓あたりを親指で指した。

「どうやって心臓を持っていかれたのか……。話してくれ」

ミストが部屋の端で備え付けの斧を掴むと、その刃を撫ではじめた。

料理番は沈黙していたら首を刎ねられると想像し、渋々頷いた。

「わかりましたよぉ、旦那ァ。話しますって――」