軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第391話、心のない盗賊たち

ソウヤとミストが洞穴アジトに入ると、カーシュと数人のグループがすでに制圧を終えていた。

「残っていたのは四人。うちひとりは料理番だった」

「オレたちのほうへほとんどが来ていたんだな」

とくに強い者がいたわけでもなく、組織としても弱かった。

「いや、ソウヤやミストさんが強すぎるんだよ」

カーシュが苦笑していた。

「中を調べてみたんだが、ちょっと変なんだ」

「変とは?」

「こういうアジトに付き物のお宝をしまっておく宝物庫がない」

カーシュが奥を指さした。通路の両端には寝床と思われるござのようなものが敷かれていた。居住性はあまりよくなさそうだ。ついでに臭い。

地面を掘って作られた地下アジトをぐるっと見て回るが、確かにお宝部屋がない。

「貧乏な盗賊なんだな」

「貧乏だから盗賊をやっていると思うんだが」

カーシュがそう突っ込んだ。

お金がなく、ろくな物も手に入れられないから暴力に訴える――それが盗賊。裕福ならそもそも、こんなことはしない。

「最近ここにやってきて、まだ盗賊業を本格的に始めていない説」

「……」

「ああ、わかったわかった。隠し部屋がどこかにある……だろ?」

ソウヤが言えば、カーシュは頷いた。

「あと不審な点がもうひとつ……。ここの連中が使っている武器が、そこそこ質がいいのが揃っている」

アジトの至る所にある武器置き、そこにある斧や剣を見る。

「量産品だな」

「同じところで作ったものみたいで、形もサイズもピッタリ揃っている」

あるものをかき集めて使っているとなると規格もバラバラなら、鎌などおおよそ武器とはいえない代物が混ざっていたりする。

だが、ここにあるものは綺麗に整っていた。

「個人的な感想を言ってもいいかな、ソウヤ?」

「どうぞ」

「まるで、城や砦の備え付けの装備みたいだ。贔屓の工房からまとめて卸したような……」

「普通の盗賊では、ちょっとあり得ないな」

武器というのは高い。どこぞの工房からまとまった数の武器を調達するのは資金力がなければ無理だ。

そしてその武器を自力で一括購入できるのなら、そもそも盗賊などやらずに、冒険者でも傭兵にでもなれたのではないだろうか。

「でも、ここの装備、まるで軍隊みたいだ」

「どこかの軍から脱走してきた連中か?」

「最近ここらで戦争でもあったのかな……?」

カーシュは苦笑した。だが急に真面目な顔になる。

「もしかして、行方不明になっていた領主の兵たちだったり?」

領主の調査隊だったが、脱走して盗賊になったとか?

「オレたちが村にやってきた時の口上は、どう聞いても盗賊のそれだったけどな」

ソウヤは腕を組んだ。

もし、領主の兵だったなら少々厄介なことになる。

カーシュが、とある部屋を指さした。

「料理番を捕虜にしている。そいつを締め上げよう」

「そうしよう」

何にせよ情報が必要だ。腑に落ちないことを解決するためにも、尋問といこう。

・ ・ ・

捕虜となった料理番は小男だった。偏屈そうな顔をしていて、どこか小悪党じみた空気をまとっている。

カーシュによれば、何やら料理を作っているところを捕まえたらしい。

ソウヤとカーシュ、そしてミストとオダシューが同席する中、小男の尋問は始まった。

「オレたちの正体? 盗賊だよ、盗賊」

小男は認めた。

「ここらを根城に通りかかる連中を襲う。金目のものを奪い、人をさらえと命令されているのさ」

「……誰から命令されてるんだ?」

盗賊のボスか?

「そいつをオレが喋ると思っているのか?」

「ここの連中はお前を残して全滅した。いまさら隠し立てても何もならないんじゃないのか?」

「そう簡単な話でもないんだな、これが……」

歪な笑みを浮かべる料理番。ミストが眉をひそめた。

「一発、殴っとく?」

「ミスト姐さんがやると、こいつの頭蓋が陥没しますぜ」

オダシューが腕を鳴らした。

「おれがやりますよ」

「いやいやいや、暴力はんたーい!」

料理番は降参したように両手を挙げた。

「別にふざけてるわけじゃねえし、オレは真面目に答えてるよぉ!」

しかし、そのオーバーな仕草はどこか胡散臭かった。

「なら、早く言え」

ソウヤは腕を組んだ。料理番は舌打ちする。

「魔族だよ。オレたち盗賊を裏で操っているのは、魔王軍だ」

「魔王軍だと!?」

「そう。オレら善良なる盗賊をとっ捕まえて、その兵隊にしちまったのさ。ここにある武器や装備は全部魔族の支給品だ」

あの備え付けの武具は魔族が作ったものだった。なるほど、ただの盗賊にしては装備が整っていると思った。

カーシュが口を開いた。

「とっ捕まったと言ったが、魔族に誘拐されたのか?」

「あー、似たようなもんだ。オレたち、次のアジト探して移動していたら連中に襲われて、このザマさ」

そう言うと、男はその粗末な服の前をはだけさせた。胸にはぽっかりと穴が空いていた。ソウヤたちは目を見開く。

「心臓が、ない?」

「そう、魔族の何とかって魔術師に心臓を抜かれちまった。つまり、オレらは生きているが死体も同然。心臓を握られちまっている以上、オレらは奴らの言いなりってこった」

「ちょっと待て」

ソウヤは聞き逃さなかった。

「オレ『ら』は?」

「ああ、そうだ。オレら、だ。……あー、ひょっとして旦那ァ、他の連中を殺したと思ってる?」

料理番の男はニヤリとした。

「残念、オレら死んでないのよねぇ――」