軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第329話、オーシャン・サファイア号、浮上

クラーケンを撃破した。

窮地を切り抜け、操縦席に歓声が湧き起こる。

「やったー!」

フォルスは喜んだが、すぐに座席にぐったりともたれた。

「魔力を使い過ぎたー」

潜水艇を守る障壁の維持に魔力を使ったのだ。ドラゴンと言えど、なかなかハードだったのだろう。何よりフォルスはまだ子供だ。

「小童、少し休め」

アクアドラゴンが労りの言葉をかけた。伝説の古竜も、子供には優しいらしい。

「フォルス、よくやったぞ」

ソウヤは声をかける。

「うん、いっぱい頑張ったよ!」

「頑張ったな。アクアドラゴン、あんたもありがとうな。おかげで助かった」

「ふむ。私の力が役に立ったのならよし。お主らも、クラーケンをよく倒した。やるではないか!」

ドラゴンからお褒めの言葉をいただいた。てっきり『当然』とばかりに威張られるかと思ったが、案外話がわかるドラゴンかもしれない。

「ソフィア、イリクさんもお疲れ!」

「魔力をごっそり持っていかれたわ……。もうヘロヘロよ」

「私も魔力量には自信があったのですが……これは地上に戻っても立てるかどうか」

それだけ消耗したということだろう。ソウヤは首を振った。

「爺さん。皆、魔力をかなり失ったみたいだぞ」

「それだけ、クラーケンが恐ろしい敵だったということだ」

ジンは苦笑した。

「魚雷への魔力装填、潜水艇を守る防御障壁……。いずれも魔力を大量投入したからね。魔力特化メンバーでよかった。ライヤーには悪いが、彼だったら危うかっただろうね」

「じゃあ、クラウドドラゴンやミストがいたら、もっと安全だった?」

「いや、その場合、魔力板の回路がオーバーロードを起こしていたかもしれない。……今でも結構ギリギリだった」

ドラゴンの魔力に、機械が耐えきれなかったかもしれなかった、ということか。

「じゃあ、今回はベストメンバーだったということか。……オレ以外」

「いや、君がいたからこの危機を乗り切れた」

ジンは微笑した。

「私は操縦で忙しかったし、特に説明しなくても、君は照準をつける操作をうまくこなしてくれた。後ろのメンバーにやってと頼んで、それがとっさにできたと思うかね?」

――無理だろうな。

ゴールデンウィング号の電撃砲を取り扱ったことがあれば、多少は応用できたかもしれない。が、残念なことに、ここにいるメンバーはその経験がなかった。

ソウヤにしたところで、元の世界にいた頃のゲームや映画などで『何となくこう!』とわかっていたからに過ぎない。

「言ったろ? 君がいれば成功率は三割上がると。いなけりゃ沈んでいたね」

「じゃあ、オレ大活躍?」

「ああ、もちろんだとも」

老魔術師は笑った。

「さあ、無事なうちに帰ろうか。長居は無用だ」

「せっかく倒したのに、クラーケンの素材を取れないのは残念だ」

ソウヤが言えば、ジンは苦笑した。

「君もすっかり商人の考えに染まっているようだな」

「だってクラーケンだぜ? 地上じゃ珍しいだろ」

「そりゃ、海の化け物だからな」

ジンは冗談めかした。ソウヤは気になっていることを聞いた。

「さっきの戦闘で結構揺れたけど、船にダメージは?」

「障壁が主なダメージになりそうな衝撃を防いだ。どこか異常は……なしだ。大丈夫」

計器などを一通り確認したジンは言った。

「そいつはよかった」

せっかくクラーケンを倒したのに、潜水艇が壊れて浮上できない、なんてことがなくてよかった。

やがてオーシャン・サファイア号は海面へと浮上した。

南海の夕日が孤島を赤く照らしていた。

・ ・ ・

南の島で、満天の星空の下、バーベキュー。

アクアドラゴンが空腹をさらに加速させたので、クラウドドラゴンと銀の翼商会の面々は、例によって魔物肉を焼いてパーティーとなった。

今回、イリクはゲストとして参加した。

「おお、これが噂のショーユを使った焼肉ダレですな!」

たっぷり甘辛いタレをつけて、焼き上がった肉をパクリ。

「国王陛下や姫君が、お求めになられていたのは存じておりましたが、まさかご相伴に与れるとは」

「まさか、まだ口にしたことがなかったの?」

ソフィアが意地の悪い顔になるが、イリクは味に夢中で気づかない。

「ああ、何せ王都でも限られた者しか味わうことができない調味料だからな」

まだ生産量が少ないせいだ。ただ一部――エイブルの町の丸焼き亭などは一般人でも醤油ダレを経験できる場所でもある。

「こ・れ・が!」

何やら声がすると思えば、水色髪のツインテール少女――アクアドラゴンが焼肉を体験していた。

「美味なるぞ、美味なるぞ!」

――何で二回繰り返したんだ、わかりません。

ソウヤの感想をよそに、クラウドドラゴンとミストが、ニタニタと同族を見ている。そんな空気を読まず、フォルスがアクアドラゴンに「おいしいねー」と自分の分の肉を食べながら笑った。

――子供は癒し……。

ソウヤもニッコリ。

「なんであんたも、ちゃっかりお肉を食べてるのよ!」

ミストが吼えた。何事かと見れば、そこには影竜がいて、ちゃっかりバーベキューに参加していた。

「それを言うなら、お前も何もしていないだろう? 知っているんだぞ、ミスト」

影竜は言い返した。銀の翼商会と仲間たちでやっているパーティーなので、正直何かしていないと参加していけない決まりはない。

ご近所さんもまとめて呼んで皆でワイワイやれればいいと思っているソウヤだから、このドラゴンたちの争いは不毛もいいところだ。

「それで、アクアドラゴンさんよ。あんたはこれからどうするんだ?」

「うーん、どうしようか」

肉をモグモグしながら、ツインテール少女は考える。

「とりあえず海から出られれば、どこか適当に空を飛んで、海のない新たなテリトリーを探そうと思ったんだけど……。保留!」

「はい?」

「私自身、どれだけ寝ていたかわからないし、この肉の味もしばらく忘れられそうにない。しばらく行動を共にさせてもらう」

アクアドラゴンは、にっかり笑った。

――まーた、ドラゴンが増えちまった。

何だかんだ、クラウドドラゴンもいつの間にか一緒に行動している。また一人増えたところでどうということはないが――

「何と、伝説の四大竜を従えてしまうとは……!」

イリクが呆然となった。銀の翼商会の面々にとっては慣れつつあるが、部外者からみれば驚天動地の光景だろうことは想像に難くなかった。