軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第327話、帰りは怖い

安否確認のはずが、連れ出すことになった。

潜水艇オーシャン・サファイア号に人化したアクアドラゴンを乗せ、ソウヤたちは帰途についた。

「ほう、お主もドラゴンなのか?」

「そうだよー」

フォルスの隣の席につくアクアドラゴン。ちなみに、クラウドドラゴンは用は済んだから、一足先にソウヤのアイテムボックスハウスへと撤収している。

「影竜かー。知らんなぁ」

「そうなのぉ」

ドラゴン同士でお話。その様子を後ろの席から見守っているのがイリクとソフィア親子。

ソウヤは、操縦席のジンを見やる。

「アクアドラゴンはクラーケンって言っていたけど、この辺りにいると思うか?」

「行きはいなかった」

老魔術師は、魔力ソナーを確認しながら、操縦桿を倒した。

「でも、帰りも出くわさないという保証はない」

「もし、クラーケンと出くわしたら?」

「対抗策かね? うーん、難しいな」

ジンは皮肉げに言った。

「ただ、私たちの後ろにいるドラゴンと魔術師の魔力を総動員すれば、切り抜けることはできると思う」

「そりゃ、よかった」

そのための人選ということだろう。

「出くわしたら打つ手なし、じゃなくて」

ソウヤは首を捻る。

「オレも、十数ものクラーケンなんて地獄は見たくない」

「私もだよ、ソウヤ。だが、これまでの状況を考えると、もしクラーケンがいたとしても一匹か二匹だと思う」

「二匹でも多い。……でも、そう思う根拠は?」

「まず、ドラゴン同様、クラーケンは群れない」

老魔術師は考え深げに言った。

「それが群れたとしても、一時的なもので、それが過ぎたら、たぶん共食いを始める」

「共食い?」

「巨大な化け物が密集したら、食べるものの取り合いになるのが普通だ。だがすぐに周辺の魚を食い尽くすのはわかりきっている」

「だろうね」

体が大きいということは、食べる量も相応なものになるだろう。

「彼らの飢えを癒すために、一番大きな獲物……つまり同胞を食らうわけだ。そうやって数を減らす」

「だから、仮にこの辺りに残っていたとしても、数えるほどしかいないってことか」

ソウヤは納得した。

「潜っている時に、クラーケンの姿はなかったから、もうこの辺りにはいないのかもな」

「だと、いいのだがね」

「……やっぱいると思うか?」

「行きの時に遭遇したのが、巨大ピラニアもどきだけだった」

ジンは眉をひそめた。

「もう少し、海の魔獣と交戦する可能性も考えていた。……もちろん、この周辺はアクアドラゴンのテリトリーだから、魔獣があまりいなかったのかも、とも思ったが――」

「が……?」

「ドラゴンが空腹になるほど長い間引きこもっていた。外に出てこない以上、ドラゴンのテリトリーと気づかず、他の生き物が流入してもおかしくない。にもかかわらず、生き物の姿はほとんど見かけていない」

「つまり……」

ソウヤは正面の海を見つめた。

「クラーケンか、それに近い化け物がこの辺りにいる可能性が高いってことか」

「……間もなく、海底洞窟を出る」

ジンは正面を睨んだ。

「嫌な予感がしてきた。全員、聞いてくれ」

ジンは振り返った。

「それぞれのシートの橫に、魔力板という魔力を通す装置がある。悪いが、君たちはその魔力板に手を置いてくれ」

「これー?」

フォルスがさっそく、手を置いた。イリクとソフィアも、それぞれの自分の席にある魔力板に手を置く。

「何かありましたかな?」

「何かあった時のための用心だ」

イリクにそう言ったジンは、アクアドラゴンを見た。

「ほら、アクアドラゴンさんも」

「私もぉー?」

露骨に嫌そうな顔をする水色髪のツインテール少女。ジンはやんわり言った。

「クラーケンに出くわして、海に放り出されたいなら構いませんが――」

「それは困る! こ、こうか……?」

本当に海がトラウマになってしまったようだ。とはいえ、潜水艇の中から海は見えるのでそこは平気そうだ。

ただ、放り出されるというワードに反応したところからして、海水に触れられない、あるいは触れたくないようだった。

「爺さん?」

「ソウヤも覚悟しろ。入ってきた時にはなかった巨大な物体が、洞窟のすぐ外にいる」

索敵装置の反応を見たらしいジンは言った。ソウヤは苦笑する。

「何かあった時? もう起きてるじゃないか!」

「そういうことだ。魚雷に魔力を装填」

ジンは、潜水艇が搭載する魚雷もどきに、魔力を投入した。手元の魔力板が光り「おおっ」とフォルスが声を上げた。

ソウヤは唸る。

「それでどうにかなるか?」

「少なくとも、巨大ピラニアの時より威力は上がる」

ジンは肩をすくめた。

「さあて、その正体を拝むとしよう。クラーケンか、それとも何か別のものか」

「クラーケンだったら、ぶっ放してもいいんだよな?」

「ああ。……少し距離が近いから、防御障壁を強めに張っておこう」

潜水艇は進む。魔力により窓の外が比較的明るく映し出されていたが――

「何だ、この黒い壁は……?」

「クラーケンだ!」

アクアドラゴンが叫んだ。

「あいつ、まだこの辺りをうろついていたか!」

「だ、そうだ、ソウヤ」

「魚雷発射っ!」

ソウヤはボタンを押し込んだ。オーシャン・サファイア号から、魚雷もどきが放たれ、それは壁としか形容しようがない巨大な物体にぶち当たった。