軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第324話、深海魚の襲撃

「どこまで潜るんだ……」

潜水艇オーシャン・サファイア号の操縦室。ソウヤは、魔法による補正で明るくなっている窓の外を見やる。

隣の操縦席のジンは言った。

「深度400メートル。見たところ、まだまだ深そうだ」

「クラウドドラゴン。アクアドラゴンは?」

「まだまだ下」

気配を探っているのか、瞑想するように目を閉じている美女姿のクラウドドラゴン。

「だいぶ、弱い……」

「ソウヤー」

フォルスが窓の外、上方を指さした。

「何か、こっちへくるみたい」

魔法補正で目視できるそれは、巨大な魚のように見えた。

「爺さん?」

「鯨の仲間ではなさそうだ。バカでかいピラニアみたいな顔だ」

「オレ、本物のピラニアって見たことないんだけど、あんなツラしてるのか?」

「似ているという話だ」

ジンは手元のパネルを操作する。

「さすがに全部ひとりでやるのはしんどいな。ソウヤ、魔力ソナーを見るか、操縦するか、あるいは応戦するか、どれがやりたい?」

「あれは敵か?」

「一直線に迫る巨大なピラニアもどきが、平和の使者には思えないがね」

「じゃあ応戦する! どうやればいい!?」

「いま、魚雷管に注水した――手元のミニモニターが、武器の照準装置だ。中央の十字線に敵を捉えたら、そのスティックのボタンを押し込めば、魚雷もどきが発射できる」

早口で説明するジン。その間にも、巨大ピラニアがグングン迫っている。

「こいつで狙えばいいんだな!」

操縦桿のようにも見えるスティックを動かし、照準用ミニモニターを目標の正面に捉えるように動かす。

「ソウヤ、その武器は誘導範囲が狭いから直接狙うつもりでやってくれ」

「オーケー、爺さん。船を動かさないでくれよ」

真っ直ぐしか飛ばない武器と考える。その場合、潜水艇の向きなどを変えられたら、せっかくの照準もズレてしまう。船は極力固定してもらう。

「距離200……もっと引きつけろ」

ジンが、索敵装置が割り出した敵との距離を見ながら言った。

「距離150――」

「もう撃つぞ!?」

「まだまだ、もう少し……」

ひゃあ――後ろでフォルスが息を呑む。イリクとソフィアも手に汗握りながら注視する。

「距離100――」

「爺さん……?」

「いまだ、撃て!」

ソウヤはボタンを押し込んだ。

オーシャン・サファイア号から、プシュッ、と音がして魚雷もどきが発射された。

「ソウヤ、説明を忘れたが、魚雷もどきが当たるまで、照準はつけたままにしておいてくれ」

そうなの――ソウヤはスティックを握ったまま、ミニモニターの十字線を巨大ピラニアに合わせたままにしておく。

真っ直ぐ向かう魚雷もどき。正面から迫る巨大魚は怯むことなく突っ込んでくる。

――うわ、あの歯、めっちゃ尖ってる!

巨大ピラニアが歯を剥き出した。潜水艇の装甲に穴を開けられそうな鋭利さ。魚雷もどき命中まで、3……2……1……!

爆発。墨を溶かしたような黒と、多数の泡が発生して、巨大ピラニアがバラバラになった。

「お見事。命中だ」

ジンが言えば、後ろの面々が安堵した。ソウヤもスティックから手を離せば、しっとりと汗をかいていた。

「倒せてよかった。あいつに噛みつかれたら、この船も危なかったんじゃないか?」

「かもしれない。そうならないことを祈るよ」

老魔術師はオーシャン・サファイア号をさらに潜らせる。

深度600メートルを超えたあたりで、見える景色に変化が見られた。

「明るい……?」

「どうやら底が見えてきたようだ」

ジンは言った。ソウヤは目をこらす。

「見間違いかな、海の底に光のようなものがいくつか見えるが――」

「海中の魔力が見えるように設定しているからね。魔力の吹き出しがあって、それが光って見えるんだろう」

「綺麗……」

ソフィアが前にきて覗き込む。フォルスも一緒だ。

「わぁー。キラキラァ」

海底でいくつもの光が見える。魔力に反応してそう見えるだけで、実際に明るいわけではない。

だがポツポツした光が、まるで田舎の夜景のようで、どこか幻想的に感じた。

ソウヤたちが、普段は見られない光景を眺めているあいだ、ジンはクラウドドラゴンに声をかける。

「アクアドラゴンの反応は、感じられるかね?」

「ええ……もう少し潜って、あそこに気配がある」

「海底洞窟か。なるほど」

ジンは、潜水艇をクラウドドラゴンが指し示した方向へと進ませる。だいぶ海の底が近くなっていた。

「バカでかい海の化け物と遭遇するかも、と思ったが、幸いそんなこともなかったな」

「おいおい、爺さん。やめろよ、フラグみたいだ」

思わずソウヤがツッコめば、ジンは笑った。

「ここにアクアドラゴンがいるんだ。つまり、ドラゴンのテリトリーだ。水中最強のアクアドラゴンがいる近くに、大きな化け物はいないよ」

「そう願いたいね」

「まったく同感ですな」

後ろの席でイリクが同意した。

オーシャン・サファイア号は、海の底をゆっくり進みながら、海底洞窟へと侵入した。巨大なドラゴンどころか、もっと大きな生物すら通過できそうな巨大な空洞である。潜水艇でも余裕で通行できた。

しばらく下降。そこから上昇すると。

「おや、水面だ」

ジンは言った。オーシャン・サファイア号は洞窟内で浮上した。操縦席の窓から水のない洞窟内が見える。

ソウヤは問う。

「これ、外に出られるのか?」

「大気はある。有毒なガスの類も検知されない。出ても大丈夫だ」

「じゃ、行くか? アクアドラゴンはこの先なんだろ?」

「おそらくね」

クラウドドラゴンが席を立った。

ソウヤたちは操縦席を出て、潜水艇の外に出た。