軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第302話、片方だけかと思ったら両方だった件

グレースランド王国を離れ、エンネア王国へ向かう。

グロース・ディスディナ城で、国王に出発と別れのあいさつをしに行ったソウヤ。昨日、婚約どうこうと言われて戸惑ったものだが、またも想定外の事態が待っていた。

リアハが、銀の翼商会に同行すると思っていたら、レーラも来ることになったからだ。

「不束者ですが、またよろしくお願いいたします」

「……はい」

どういうことだ?――ソウヤは首を傾げる。

グレースランド王は言った。

「しばし国で休養を、と勧めたのだがな、娘は聖女としての務めを果たすと言うのだ」

「世界には、魔族や魔物によって危機にさらされている人々がいます」

レーラは祈るように目を伏せた。

「また、魔王軍の残党が活動している今、私だけが安全な場所にいるわけにもいきません」

――君は充分、世界のために貢献したし、自分のために時間を使ってもいいんだぞ。

ソウヤは思ったが、父王の手前、発言は控えた。

「知っていると思うが、我が娘は言い出したら聞かぬ」

――わかります。

優しい聖女様は、こと責任というものにおいて頑固である。ソウヤにも、おぼえがあった。

「それに、目覚めて十年の月日が流れておる。レーラ自身、世界の今を見たいと強く願ったのでな」

ブランクを埋めるために、気持ちの整理をつけるために世界を知りたいのだろう。グレースランド王の発言から、意図を把握するソウヤ。

「もっとも、聖女が帰還したと知れば、教会からもまた頼られることになるだろう。私としても、しばらく彼女を休ませてやりたいが、そうもいかぬやもしれぬ。そう考えた時、誰のもとに預けるのが安心かと考えた時、真っ先に君の存在が浮かんだ」

要するに、当人と両親の思惑が一致したということだ。親御さんが承知しているのであれば、ソウヤとしても断る理由はない。本当はレーラの同行に反対している、とかだったら、板挟みになってしまうから。

「君の商会はいずれ世界中を回ることになるだろう。レーラの希望にも添う。できることがあれば、使ってやってくれ」

「承知いたしました」

娘さんをお預かりします――という言葉が浮かんだ、何だか意味が違って聞こえそうで、自重する。

「そして引き続き、リアハも君に預ける。彼女のことも頼んだぞ、ソウヤ殿」

こうして、姉妹揃って、銀の翼商会に同行することとなった。

・ ・ ・

ゴールデンウイング二世号は、グレースランド王国王都から離れて、エンネア王国へと向かった。

レーラとリアハの姉妹が引き続き一緒というのは、やはり皆も驚いていた。だが反対する理由もなく、これまで通りということで受け取った。

「なあ、これってアレじゃねえか?」

船室の一角。ライヤーは言った。

この場にいるのは、エルフの魔術師ダル、元聖騎士だったカーシュ、元カリュプスのオダシュー、アズマだった。

「アレとは?」

ダルが言えば、ライヤーは顔をしかめた。

「わかんねえかな、ソウヤの旦那の女関係が複雑になったってこと」

なお、当のソウヤはレーラとリアハと面談中で、ここにはいない。

「そうですねぇ。レーラ様は、ソウヤさんに淡い想いを抱いていたようですし」

「リアハ姫さんも、ボスに熱い視線を送ってるよな」

オダシューが言えば、アズマも頷いた。

「ええ、間違いないでしょ。これ三角関係ってやつ」

「ソウヤはモテモテだね」

カーシュが微笑むと、ダルは苦笑する。

「どうでしょうね。あの人が異性からワーキャーされるのは割とお馴染みなんですけど、あの人、異性に手を出すことってまずないじゃないですか」

「紳士だからね」

「紳士……紳士ねぇ」

ライヤーは頭をかいた。

「まあ、そりゃ旦那もいい歳だし、恋人くらいいてもいいけどさ……」

「僕は、他人の恋愛に首を突っ込むべきじゃないと思うんだ」

カーシュがやんわりと言った。しかしライヤーは首を振った。

「そりゃごもっともだがな、カーシュさんよ。その対象が、おれらのボスで、相手が聖女とお姫様とくれば、他人事じゃ済まされないんだぜ?」

「どう済まされないんだい?」

「第一、ソウヤの旦那の行動は、全部銀の翼商会に影響する」

ライヤーは指を数えた。

「第二、ゴールデンウイング号という狭い環境内だ。何かトラブルがあれば、関係なくてもその空気は全員に伝染する」

いちおう、この船の船長であるライヤーは、それが気掛かりだった。顔を合わせるたびに、気まずい思いをするのは願い下げだった。

「でも、そうは言いますがね、ライヤー君」

ダルは真顔になった。

「恋愛については、やはり当人たちの問題であり、周りがどうこういうものではないでしょう。ひとつ聞きますが、あなたにとって、どうなるのが理想なのですか?」

「どうって……」

ライヤーは考える。

「修羅場になってくれないことかな」

「どっちかがあの人と正式に付き合って、それを応援するとかではないんですよね?」

「そりゃ……そうさな。だって片方が決まれば、もう片方は断然居づらくなるだろ」

ライヤーがオダシューへと視線をやれば、山賊の親分みたいな彼は肩をすくめた。

「まあ、そうなるだろうな」

「自分勝手なことを言わせてもらうなら、おれはここが居心地がいいんだ」

その空間が壊れてほしくない、とライヤーは言った。アズマが口を開いた。

「そもそも、我らがボスは、どっちが好きなんだ?」

「さあ……」

カーシュは首を振れば、ダルも肩をすくめた。

「あの人に関しては噂は多々あれど、本人から迫った例がほぼありませんから」

「多々あったって?」

「お姫様とか貴族の娘が、勇者様とお近づきになったり、ですね」

ダルが言えば、アズマは手を叩いた。

「まさか、ミストさんだったり?」

「ドラゴンだって聞く前は、そうかもと思ったこともあったが――」

ライヤーは唸った。

「さすがに今は、それはないと思うな。恋仲っていうより相棒?」

あー、と一同が納得した。ドラゴンと人が結びつくというのが、どうにも考えつかない男たちである。

「正直に言うとだ。旦那が誰を選んでどうなろうと……おれはついていく。そう決めた」

ライヤーの言葉に、カーシュ、アズマが頷いた。

「そうだな」

「僕は状況によっては抜けるかも」

エルフの魔術師は冗談めかした。オダシューが口を開いた。

「おれもボスについていく。だが、おれらは聖女様にも救われた。ボスもそうだが、あの人にも幸せになってほしいなぁ……」

そうだな、そうだ――男たちは同意した。