軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第287話、嵐の原因

ジンが、メイドさん型機械人形と共に調査した結果、クラウドドラゴンについてわかってきた。

最初、聞いていた通り、ウィスペル島という名の、かつての浮遊島の一部をクラウドドラゴンが根城にしていた。

だがその巣穴が、地下の施設とぶちあたり、そこで双方が衝突する形になった。結果的に、クラウドドラゴンがウィスペル島から逃げ出すことになった。

そしてそれが、割と最近の話だったらしい。

ソウヤはミスト、リアハ、ソフィアと合流して、お茶をして休んでいたら、ジンがさっそく報告した。

「――この浮遊島の気象観測記録によると、興味深い事実が浮かび上がった」

地図を机の上に広げる。この世界地図は、ソウヤが元の世界にみたような精巧なそれだった。グレースランドなどで見た、いい加減な地図ではない。

その上で、写真を一枚、ジンは置いた

「この島は何かわかるかな?」

「例の大精霊の泉がある島だな?」

謎の大嵐に囲まれ、近づけないという島。ソウヤたちの当面の目的地であり、この嵐を解除するためにクラウドドラゴンを探しにきたのだ。

「嵐はどこだ?」

「そう、この時点では嵐は起きていない。ちなみに、クラウドドラゴンがまだウィスペル島にいた頃だ」

「……?」

ソウヤとミストは顔を見合わせる。意味深な言い方である。ソフィアが口を開いた。

「どういうこと?」

「――次にこれ」

ジンが新しい写真を出した。大精霊の泉のある島が、黒雲に覆われつつある。

「これはクラウドドラゴンが、ウィスペル島を追われて二日後だ。それで――」

もう一枚の写真が上乗せされた。島は完全に大きな雲、いや嵐に覆われて見えなくなった。嵐の真ん中に台風の目のような穴があって、それがとても不気味だった。

「三日後以降は、ずっとこの調子だ」

ジンは次々と写真を重ねていったが、まるでコピーしたもののように変化がほぼなかった。

「クラウドドラゴンがウィスペル島から逃げた方向、その進路上にこの島がある」

「つまり……」

リアハが小さく首を振った。

「この嵐は、その……クラウドドラゴンが発生させていると?」

「その可能性が高い」

ジンはミストを見た。

「どうだね、ミスト嬢。クラウドドラゴンなら、この嵐は可能かね?」

「そりゃ嵐を操れるんですもの。消せるなら、自身で作り出すこともできるでしょうよ」

ミストは机に肘をついて、ため息をついた。

「まさか、クラウドドラゴンの仕業かもしれないなんて……。考えもしなかったわ」

「何故、クラウドドラゴンは島を嵐で囲った?」

ソウヤは疑問を口にする。ジンは腕を組んだ。

「おそらく、ウィスペル島の防衛行動の結果、クラウドドラゴンは重傷を負ったのだろう」

「ドラゴンに怪我させた?」

ソフィアが目をパチクリさせた。

「そんなことができるの?」

「うちの科学力を侮っては困る」

ジンは自信たっぷりだった。

「ともあれ、こちらは飛空艇を持っており、ある程度追跡が可能な状態だった。深手を負ったクラウドドラゴンは、それら追っ手が近づけないよう嵐を形成したのだろう」

「それをよりによって、大精霊の泉のある島でやるとはな……」

ソウヤは思わず愚痴る。どこか他の場所でやってくれれば、面倒がなかったのに。

「仕方ないわよ」

ミストが同情的に言った。

「昨日、龍脈の話をしたでしょう? 大精霊の泉がある場所も、そうした魔力の通り道の上にあるのよ。だからクラウドドラゴンはそこで自身の傷を再生させながら、豊富な魔力で嵐の障壁を同時に展開させているのよ」

普通の場所では、回復と大嵐同時は無理らしい。

「大精霊にとっては迷惑以外の何物でもないな」

ソウヤは苦笑した。クラウドドラゴンが居座ったおかげで、本体に戻れなくなったわけだから。

「ただ、この嵐の原因がクラウドドラゴンにあるなら、この嵐の突破方法のひとつに、『待つ』という選択肢が出るわね」

「どういうことです、ミストさん?」

リアハが首をかしげた。我らがドラゴン美少女は笑みを浮かべた。

「再生のための防御なら、傷が癒えれば、嵐を展開させて防御する意味もなくなるわ。そこに留まる必要もね」

「つまり、放っておいても、そのうち勝手に嵐は消えるというわけか」

理解した。ソウヤは頷いた。

「それで、あとどれくらいで再生が終わる?」

「さあ、ワタシは、クラウドドラゴンがどの程度の傷を負ったか知らないわ。ただ、思いの外、時間がかかっているみたいだから、ひょっとしたらかなりの重傷なのかもね」

「だが、いずれは再生が終わる」

ならば待つのは、大いにありだ。

「傷が癒えた後のクラウドドラゴンが怖いんだけれどね。まあ、ワタシたちは直接関係ないし、島から出て行ってくれれば、面倒な交渉もしなくて済む」

「面倒っていいやがった。仮にも同族だろ?」

解決の糸口が見えたことで、ソウヤは自然と軽口が出た。数日待てば、何の面倒もなく大精霊の泉に行けるかもしれないとあって、気分が軽くなった。

大精霊の分身を本体に会わせて、泉の水をわけてもらい、レーラの魔力欠乏を回復させる薬を作る。何だか、うまく行きそうな予感がしてくるソウヤだった。

「それじゃ、嵐が消えるまで、どこかで時間を潰すか?」

「そうねぇ。任せるわ」

ミストは考えるのを放棄した。ソフィアがジンを見る。

「ジン師匠。ここって、魔法などの資料ってあります?」

聞けば、クレイマン王のいた頃の魔法などを研究したいのだそうだ。勉強熱心なことである。

「たぶん、ライヤーさんも、ここで調べ物がしたいんじゃないでしょうか」

リアハが小さく笑った。

クレイマンの遺跡で一番ワクワクしていたのが、ライヤーだ。また転送魔法陣のところで門番よろしく見張っているダルも、浮遊島にきてみたいだろう。

「いっそ、ゴールデンウィング二世号の皆もここに呼ぶか。……ああ、もちろん、主である爺さんがいいと言うならだけど」

いちおう、彼の島、彼の城である。かつての王であった老魔術師はにこやかに告げた。

「構わないよ。メイドたちがいるから世話をさせよう。我が島へようこそ」

冗談めかすジン。朗らかに笑うソウヤたち。

だが、この時、ひとつの問題が発生していた。転送ボックスを通して、ゴールデンウィング二世号を呼び寄せようとした時、向こうから急用の手紙が送られてきていたのだ。