軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第270話、正体不明の飛空艇、接近してくる

「ウィスペル島ってのは、ドラゴンのテリトリーじゃなかったのか?」

ソウヤはデッキに出て、船橋に上がった。

「ミスト!」

「間違いなく飛空艇」

魔力眼で見ているのだろう。彼女の目に魔力の光が浮かんでいる。

「この島に行って帰ってきたのは最初にたどり着いた組だけだって話だよな?」

ソウヤはライヤーを見た。

「ああ、そういう話だ。その後、行って帰ってきた奴はいねえ」

「なら、あれはオレたちより少し先に来ていた先客ってことか?」

「そう考えるのが、妥当かもな」

頷くライヤーだが、ミストは首を横に振った。

「残念だけど、話はそう単純じゃなさそうよ」

「どういうことだ?」

「あの飛空艇の甲板に人間はいないわ」

「え……?」

聞き違いかと思った。

「人がいない……?」

「じゃあ、何がいるんだ?」

ライヤーは目を剥く。

「幽霊船だとでも言うのかよ?」

「ゴーストではないわね。……人形、いやゴーレムかしら。体の細いゴーレムが飛空艇を操っているみたい」

「ゴーレムが船を操っている? ハッ、そんな頭のいいゴーレムがいるもんか」

ライヤーは肩をすくめた。

「まさか、フィーアみたいな、古代文明時代の機械人形ってか? まだ幽霊のほうが信じられるぜ」

「残念、フィーアほど可愛くないわ。いるのはカカシみたいなやつよ」

カカシのようなゴーレムが飛空艇を操っている……。にわかには信じがたい事態ではある。だが、ミストが嘘をいうとも思えず、現実として受け入れないといけない。

『あーあー、ブリッジ。ソウヤ、聞こえるか?』

伝声管からジンの声がした。老魔術師は、制御室で魔力レーダーを見張っているのだ。

「何だ? 爺さん」

『嫌な予感がする報告なのだが、逆探が反応を示している』

「ギャクタン……? なんだ、そりゃ」

『……あー、簡単に説明すれば、飛んでくる魔力の波を拾う装置のことだ。こちらが放った魔力波と別の魔力波が飛んできている』

「つまり、どういうことだ?」

『信じられないかもしれないが、接近中の飛空艇も、魔力式レーダーを使っているということだ。要するに、あちらもこちらの位置を掴んだ上で、接近してきている』

ソウヤは絶句した。このゴールデンウィング二世号は、古代文明時代の飛空艇を回収したものだ。それに積まれていた魔力レーダーとかその他の機械は、現代の技術では普及していない代物である。

つまり、現れた謎飛空艇は、この世界の現代人が作り出した船ではなく、少なくとも古代文明時代に作られたものである可能性が大ということになる。

「ただでさえ、飛空艇と遭遇するなんてイレギュラーなのに……」

向こうも掘り出し物のレア飛空艇を使っているとは、どういう偶然か。

「乗っているのはゴーレムっぽいし……。この場合、どういう対応をするのが正解だ?」

敵か、はたまた味方か。

何故、二隻はこちらに近づいてきているのか。乗員がゴーレムというが、交渉できるような相手なのか? 文明の遺産程度で、人間がいるとは思っていない場所で遭遇した人工物。――ドラゴンはどうした、ドラゴンは!?

「何が何だかさっぱりわからん」

しかし、その間にも、この謎船は接近しつつある。

『こちら見張り台。飛空艇を目視した』

マストの上から、ガルが伝声管で報告した。東の空に黒い点がかろうじて見える。

ライヤーが口を開いた。

「知らない間に、この島は、どこかの国の領土になっていて、そこに侵入したから向かってきた説」

「だとしたら、あちらさんは、こちらを領空侵犯で撃沈できるな」

ソウヤは口元を引きつらせた。この世界には少数ながら飛空艇がある。元の世界のような厳密な領空ルールはないが、その分、領土の上で見かけたら即攻撃、撃沈なんてのもまかり通っていたりする。

「まあ、そうかもしれないけれど……」

ミストが言った。

「どこかの国の領土になっていたかはわからないわね。もしかしたら、ダンジョンでよくある防衛行動かもしれない」

「防衛行動?」

「ダンジョンの番人に、侵入者を自動的に攻撃するゴーレムとかモンスターっているでしょ。あの飛空艇、乗員が人間じゃないから、案外それかもしれない」

『その説は有力だな』

聞こえていたのか、伝声管からジンの声がした。

『テリトリー侵犯に自動迎撃。それなら、ここに向かった者たちが帰ってこなかった理由も合点がいく』

遺跡捜索に乗り込んだ者たちを返り討ち――

「まて、それなら、クラウドドラゴンは?」

『さあ、この謎飛空艇によってテリトリーを乗っ取られたか……あるいは、クラウドドラゴンが、この飛空艇を操っているとか?』

ジンの説に、ソウヤは目を丸くした。いや、ドラゴンがゴーレムを操って飛空艇を動かす?

ソウヤはミストを見た。

「爺さんは、そんなことを言ったが、クラウドドラゴンにそんな芸当できるのか?」

「ソウヤ、ドラゴンは馬鹿ではないのよ」

ミストはどこか拗ねたように言った。

「その気になれば、やってやれないこともないわ」

つまりやる気になって勉強すれば、ミストにだって飛空艇の操舵はできるし、機械の使い方もわかるようになる――という意味だろう。

「……だとしたら、クラウドドラゴンは、ずいぶんと挑戦的な思考を持っているんだな」

今でも信じがたいが。ソウヤは伝声管を掴む。

「爺さん、魔法障壁を頼む。相手の出方を見るが、もし攻撃してくるなら、返り討ちにしてやる!」

こちらも黙ってやられるわけにはいかない。

「各砲座、配置につけ。ただし、向こうが撃ってくるまでは、絶対に撃つな」

相手が何の目的で近づいてきているのかわからない。もし平和の使者だった場合、問答無用で攻撃したら取り返しのつかない事態になってしまう。

――先制を許す状況ってのは、好きじゃないんだが。

だが、どうしても後手にならざるを得ない。歯がゆい。ソウヤはじっと、接近してくる謎の飛空艇二隻を見つめた。