軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第216話、グレースランド進攻計画

グレースランド王国を魔族から奪還する。

なお、魔族がかの王国の住民を魔獣化させて兵士とすると予想される期日まで、あと二日しかない。

世界の果てまでの往復に日にちを取られた格好だ。だが呪いを解ける聖女であるレーラが復活しないことにはどうしようもないので、やむを得なかった。

二日が経てば、その後、魔族がどう動くかわからない。魔獣化兵を周辺国への侵攻に使うのか、あるいは守りを固めて、次の行動のための準備期間とするのか。

行動が読めない以上、迅速に解決するべきだろう。国境が結界で封印されている間はいいが、もし結界がなくなり、魔獣化したグレースランドの民が解き放たれたら、魔獣と判断されて容赦なく殺されてしまう。

時間がないというのが痛い。わずかな人数で、目的を果たさなくてはいけない。

「では、その目的とは?」

ソウヤは口に出して言ってみた。何をするのかはっきりしない作戦など、意味がない。ミストが言った。

「魔族の駆逐」

「グレースランドの民を救うこと」

リアハが口を開いた。ジンが顎髭を撫でる。

「まずは、呪いの発生源を止めることだろう。民の魔獣化を阻止し、さらに呪いを解ければ、期日の問題は解決される」

魔族の撃破も、その後の救助も、十日の期日以降でもできるのだ。

「呪いの発生源ってのは……ズバリ、ブルハだな」

ソウヤは考える。ガルの視線が鋭くなり、リアハもまた顔をしかめた。

「おそらくグレースランド王都、その中枢である王城から呪いが拡散されていると思います。王都から脱出した時も、その後も、魔力の放射が見えましたから」

「地上から行くのは……時間的にも厳しいかな」

おそらく魔族も防衛線を敷いているだろう。下手したら魔獣化したグレースランドの民と事を構えることになるかもしれない。それは避けたい。

「となると、空から襲撃をかけるのが無難だな」

ゴールデンウィング二世号はメインエンジンが組み上がっていないので、自力航行は不可能。

そう言ったら、ライヤーが手を上げた。

「一応、補助エンジンが二基使えるから、まったく航行できないわけじゃねぇぜ。ただし、鈍足だけどな」

スピード重視の奇襲には使えないということだ。人数は運べるが、速度が遅いと、敵に迎撃の準備をとられてしまう。

「問題がある」

老魔術師が言った。

「結界内は、現在も魔獣化の魔法が継続されている。対策がないと、入った我々にも影響する。最悪、到着した頃には変調で戦闘どころではなくなる」

「そうなのか?」

ライヤーが疑問を口にした。

「十日も掛かる呪いなんだろ? 数時間くらい耐えられないかな?」

「それができるなら、王城を魔族に占領されなかったのではないかな?」

王城にも王国の騎士や兵士がいたはずだ。呪いの作用が遅いなら、抵抗できたのではないか。

「どうかな、リアハ姫」

「動けなくなるのは、かなり早かったと思います」

リアハはうつむいた。

「それがなければ、城の中枢を簡単に制圧されなかったはず……」

「仮に耐えられたとしても――」

ソフィアが眉をひそめた。

「呪いが発動している中を行くのは、精神上よくないと思うわ。聖女様の力で、呪いを避けられないかな?」

「こちらが王城を奪い返すまで、ずっと力を使えって?」

ソウヤは、レーラの顔を見て、すぐに首を横に振った。

「いや負担が大き過ぎる。そもそも移動手段を考えると……大勢で行けないのではないか?」

まず呪いを避けることができるのは、リアハの持っているお守りくらいではないか……。

「ドラゴンはどうだ?」

ソウヤはミストを見やる。彼女が霧竜であるのは、ここにいる一同は、例のアースドラゴンの島への道中で皆知っているので、堂々と聞ける。

「多少の魔法や呪いの抵抗力はあるから、ある程度は耐えられると思うけれど……」

ミストは小首をかしげる。

「さっきのソフィアじゃないけど、あまり気乗りはしないわ」

「魔法を防ぐ障壁を張れれば、おそらく今回の呪いは防げる」

ジンは言った。皆、驚いた。

「ガルの時の呪いも、結局のところは変身の魔法だ。魔法であるならば、魔法攻撃を防ぐ防御魔法で防げる」

しかし――と、ジンは難しい顔になった。

「とはいえ、どれくらいの強さなのか、我々は把握していない。その上で魔獣化を完全に対策するなら、魔力を通さない完全防護にすべきだが……」

「完全防護というと……」

ソフィアが顔を引きつらせた。

「魔法は防ぐけど、こちらからも魔法を撃てなくなるやつですよね?」

「完全にシャットアウトするということは、そういうことだ」

「つまり、魔法が使えなくなるということか?」

ソウヤの問いに、老魔術師は頷いた。

「攻撃魔法、補助魔法、治癒魔法――魔術師は戦力外となる」

逆に言うと――

「ソウヤやガル、セイジ、カーシュなどの武器攻撃組は、こちらの用意した完全防護のお守りを身につけていれば、結界の呪い効果範囲での行動と戦闘は可能だ」

「おれも戦えるな」

「私もです」

ライヤーとフィーアが言った。機械人形であるフィーアは特に、呪いの影響を受けないだろう。

ジンがテーブルの上に、そのお守りを提出した。一同、目を丸くする。

「これ、魔法カード?」

「そう即席だ。防護障壁の魔法を刻んでおいた。魔力の内容量から発動から半日は持つだろう」

以前、魔法が使えなかったソフィアのために開発し、その後商品化を目指して作られた魔力で作られたカードだ。刻んだ魔法文字や、あるいは術者のイメージを送り込んで魔法を発動する使い捨て魔道具である。

「本格的な魔道具を用意する時間はないのでね。あるだけマシというものだ。それに魔術師もこの魔法カードを時限式発動で使えば、魔法として使えるだろう」

「作ってよかった魔法カード!」

ソウヤは相好を崩す。

「これなら、ここにいるメンツ全員で乗り込めそうだな。後は乗り物か」

ミストや影竜がいても、直接乗れる人数には限度がある。あるいは二人にゴールデンウィング二世号を引っ張ってもらうという手もあるか。

「敵からの迎撃を考えれば、敵に気づかれにくい少数精鋭が望ましい」

ジンは、じっとソウヤを見つめた。

「そう考えるなら、最小単位は――」

「オレとミストのふたりだな。残りは、アイテムボックスで運ぶか」