軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第203話、アラの多い計画ほど気をつけて

ジン曰く、成功率を上げる必要があると言う。

「もし、何かの手違いがあって、石化されてしまった時点で、この計画は破綻する」

アースドラゴンとの交渉役であるミストにしろ、石化した聖女とミスリルを運ぶソウヤにしろ、どの段階ででもコカトリスやバジリスク、アースドラゴンの石化攻撃にさらされたらアウトである。

「現状、何かあった時のバックアップができない」

ミストとソウヤ、どちらか、あるいは両方が石化になったり、命を落とすようなことになった場合、世界の果てにたどり着く手段がほぼなく、他の方法で仮に行く方法が見つかっても、島に到着するのがいつになるか見当もつかない。……影竜が協力すれば、話はまた別だが、やりたくない者に強要はできない。

「だから、多少、島に行くのが遅くなっても、バックアップ手段を確立してから行動すべきだ」

老魔術師は諭すように告げた。ソウヤは腕を組む。

「具体的に、バックアップ手段とは?」

「飛空艇が運用できるまで」

ジンは断言した。

「飛空艇があれば、皆で行動できる。ミストの交渉やソウヤが目的地に到着するまで、島の魔獣の目を引きつける囮にもなる。……万が一、君が石化されてしまうようなことがあっても、回収して出直すこともできるだろう」

「……」

聞く限り、もっともらしく聞こえる。ソウヤとしても、石化が恐ろしいところであると認識している。ようやく見つけた解除手段といえど、そこまでのハードルは高い。

だが――

「オレは、できれば早く、彼女を――レーラを助けてやりたい」

聖女、レーラ・グレースランドは、優しさの塊だ。聖女と言われるだけあって、癒やしの力は抜きん出ていて、彼女に救われた者も多い。正直に言えば、勇者パーティーでアイテムボックスに収容している仲間でも、レーラが健在ならば救えた者もいた。

「あー、つまらない質問をしてもいいか?」

ライヤーが口を挟んだ。

「その聖女さんって、旦那と恋仲だったり?」

「恋仲!? まさか……」

はっ、本当につまらない質問だと、ソウヤは思った。

「彼女は美少女だ。それは認める。多少好意は抱いてたよ。ただ、それは彼女を知る独身野郎は皆思ってただろうけどな」

「待つといっても、二、三週間程度のことだ」

ジンは、ライヤーを見た。

「それだけあれば、飛空艇の修理は完了して、テストくらいはできるだろう?」

「ああ、部品も揃ってるだろうし、今のペースでも一ヶ月はかからねえと思うぜ」

「ソウヤ」

ジンは、穏やかな調子になった。

「仲間を助けたいのはわかるが、少なくとも石化した聖女を、一日二日で救わねば手遅れになるということはないだろう。空白の十年をみれば、一ヶ月程度の遅れは大した差はないと私は思う」

「それは……」

今から数ヶ月とか一年かかるというなら、別の方法を採用すべきである。しかし現実はそうではない。

「ソウヤ、失敗は許されない。成功率を高められるのに、焦ってすべてをフイにするべきではない」

ジンは、じっとソウヤの目を見つめた。

「切迫している状況ならば、必要ならば無理をすることもあるが、今はその時ではない」

「…………わかった」

ソウヤは頷いた。

「成功率を高められるなら、そうしよう。爺さんの言うとおり、数日中に何とかしないと誰かが死ぬってこともないしな」

本音を言えば、早々に決着をつけたいところだが、思い留まったのは、勇者時代の経験だった。

慌てて行動する必要もないのに、行動をする時は、大抵ミスや失敗をするものだ。

勢いに乗ってしくじった時のミスは、多くの場合、取り返しがつかなかったりする……。

・ ・ ・

というわけで、ソウヤは、聖女復活計画の延期を皆に伝えた。

アースドラゴンのいる世界の果ての島へ行く手段の増強――つまりは飛空艇の完成を待って行動する。

これに対して、反対意見を出す者はいなかった。ソウヤ以外で聖女を知るカーシュでさえ、成功率を上げるため、の説明に納得した。そうならば、他の者が敢えて言うことはなかったのだ。

やはり、今日明日で死ぬわけではない、という切迫感がないのが影響しているようだった。

銀の翼商会は、飛空艇の修理が完了するまでは、ルガードークに留まる。ドワーフの工房に注文したパーツのいくつかが、まだ完成していないからだ。

ライヤーを中心に、現時点で出来上がったパーツを受け取り、修理を進める。

機械方面で手伝えないミストとソフィア、ガルは、ルガードーク近くのダンジョンなどへ行って、モンスター狩りや能力向上に時間を使う。

ソウヤは、セイジとライヤー、フィーア、ジン、カーシュと共に飛空艇の修理やチェック作業を進めた。

そうやって一週間が経った頃、アイテムボックスの転送ボックスに、手紙がきた。

差出人は、カマルだった。

ひょっとして、瀕死者を救う復活アイテムでも手に入れたのではないか――そう期待しつつ手紙を開封したのだが……。

『グレースランド王国で異変が起きた。お前、何か知っているか?』

「……」

オレが知るか!――と思わずツッコミを入れたソウヤだが、じっと文面を見やる。

グレースランド王国――ソウヤたちが救おうとしている聖女レーラの出身国だ。そこで異変が起きたというのは、穏やかな話ではない。

あまりにそっけない内容は、具体性に欠けているので、ソウヤは早速、詳細を送れと返事を出した。

……まるでメールかと思われるくらい、早い返事がきた。

『突如、グレースランド王国の国境が魔法的な障壁によって封鎖された。魔術師の報告では、その障壁は国全体を覆っている可能性があり、現在のところ出入りが不可能。専門家によると、このような大規模な障壁は、かつて魔王軍が用いていた結界と類似しているとのこと』

魔王軍……。ますます嫌な予感がした。

ここのところ魔王軍の残党が静かだと思っていたが、本格的に行動を開始したのか。

由々しき事態である。国境を封鎖する障壁とか、ただ事ではない。