軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第174話、バイクと遺跡発掘品の報告

町長――領主の館を辞して、アイテムボックスハウスへと帰還したソウヤ。

すっかり遅くなってしまい、ミストあたりが文句を言っているかと覚悟したが、ジンとフィーアが晩ご飯を作ったらしい。

他の面々が自由時間を過ごしている間に、ソウヤは、ジンとライヤーを相手に、イリジオ・バッサン男爵との会談の内容を報告した。

「北街道の盗賊退治ねぇ……」

ライヤーが面倒そうな顔になる。彼は、銀の翼商会で個人用浮遊バイクがあるのを知ってから自分用のバイクをジンの教えのもと製作していた。

「まあ、あんだけ派手にやりゃあ、頼まれるわな」

月下の盗賊団を半日で壊滅させた。捕らえた数も多く、色々と伝説を残してしまった銀の翼商会である。

「オレたち商人からすれば、街道は大いに利用するわけだ。綺麗なほうがいいさ」

「ちげぇねえ」

ライヤーは頷いた。

銀の翼商会にとって、街道の安全は結局自分たちに返ってくる問題でもある。頼まれなくても、盗賊が邪魔というなら排除するだけである。

話題は浮遊バイクの製造の話に移る。

「複数のタイプを作るのは賛成だ」

ジンは顎髭を撫でる。

「ただタイプを絞って作るのも賛成だ。量産性と性能を併せ持った型を作るにあたって、君が思っているより手間がかかるだろう」

「魔石か?」

「いや、魔石もだが、これは別だ。浮遊バイクがきちんと乗り物として使えるために刻む魔法文字が少なくない。当然、刻めるのは魔道具職人や、魔術師のみになるから、一台あたりの製作に時間がかかる」

「コストは抑えられる?」

「人件費が多少増える程度だろうね」

老魔術師は小首をひねる。

「性能を二の次にするなら、シンプルで済むんだが、乗り手が魔法の使える人間ばかりじゃないからね」

ジン曰く、魔術師などが動力である魔石に魔力をチャージするなら、半永久的にバイクを走らせることができる。

だが、魔法の使えない、魔力を操作できない人間は、そういうチャージができないため、バイク本体に魔力を吸収して自動チャージをする魔法文字を刻まなくてはならないらしい。

「ほら、この世界には、ガソリンスタンドがないからね。燃料である魔力を自分で何とかしないといけないわけだ」

「あー」

ソウヤは理解した。元の世界でのバイクは、燃料を給油する必要があって、そのための設備が町や村にそれぞれある。

だがバイク自体が、古代文明の発掘品しかなかったこの世界には、そういう燃料補給設備は存在しない。

ジンは浮遊バイクを製造するにあたって、その燃料である魔力の補給をバイク自体に取り入れさせる機構を乗せた。

これ自体は、魔道具職人が魔道具を製作する過程でやっていることだから、現地の職人でも可能だ。……ただし、職人の腕の良し悪しがあるし、機械化されているわけでもないので、結構な大仕事だったりする。

「それでなくても、魔石の魔力を利用して動く機構は、全部魔法文字に頼っているからね。職人たちの魔法文字の刻みの手間は多いよ」

そう考えると――ジンは、はっきりと告げた。

「部品のコストは抑えられるが、きちんとした製品にするには職人の能力に影響される上に、全部手作りだから、どうあがいても最初は高級品になる」

「ま、いいんじゃねーの?」

ライヤーが発言した。

「いきなり浮遊バイクがあっても、全員が全員欲しがるわけじゃねぇし。新しいもの好きなお貴族様や商人なら、必要とみれば多少高くても買うだろ」

「まあ、それもそうだな……」

ソウヤは腕を組んだ。

「噂が広がったところで、最初から爆売れするって保証もないしな。……いや、コメット号を見て欲しがる行商や旅人もいたから、需要はあるのはわかってる。長い目で見れば、必ず売れるのもな」

だが、すぐには売れないかもしれない。

「その点、ソウヤが提案したバイクレース。あれはバイクを売り込むためにはいいアイデアだと思うぜ」

「私も同感だ」

ライヤーの言葉に、ジンも頷いた。

「イベントが成功すれば、バイクの売り上げに貢献するだろうね」

などとバイクの販売に向けての話をした。改めて問題点を洗い出し、細部を詰める。

そして、とりあえずまとめ、この話は終了――というところで、ジンが別件で話があると切り出した。

「ここ最近の遺跡探索で、手に入れたものについて報告がある」

老魔術師は、真面目な顔でソウヤを見つめた。

「天空人の遺跡から回収した液体を調べた結果、面白いものがあった」

「へえ、どんな?」

古代文明研究者であるライヤーが興味深げに身を乗り出した。

「ひとつ、生き物を若返らせる薬」

「は!?」

「マジか!?」

ソウヤとライヤーはビックリした。

「若返りの薬だって? 何でわかったんだ?」

「私は『鑑定魔法』が使えるからね」

なるほど、と適当に頷くソウヤだが、ライヤーはさらに驚いた。

「ジイさん、鑑定魔法ってマジか!? 魔術師でも使える奴はほとんどいないっていう、クソ凄え魔法だぞ!」

「使えるんだから、しょうがない」

ジンは肩をすくめる。ライヤーはため息をついた。

「クソ羨ましい。おれも使いてぇよ、鑑定魔法。つか、それあるだけで、あんた一生食っていけるぜ」

そんなに貴重な魔法らしい。元の世界で異世界ラノベとかによくあった鑑定魔法とは、凄い魔法だったんだ、とソウヤは他人事だった。

「話を続けても?」

「どうぞ」

ソウヤは促した。ジンはひとつのビンを取り出した。キラキラと青く輝く液体。

「これは『生命の水』だ。これを体に振りかければ、あら不思議。あらゆる傷を癒やし、欠損した部位も再生させるという……」

「そ、それは――!?」

瀕死の、アイテムボックスに収容している仲間を助けられる薬ではないか。ソウヤが、行商をする一方で求めていた治癒アイテムがそこにあった。