軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第159話、巨大石像

未発見遺跡と思われる奥に、鎮座するような石像。胴体に埋め込まれた球体が、ミストの感知していた魔力の正体のようだった。

ジンが口を開く。

「まるで、脚部のない巨大ロボットかゴーレムのような姿だな」

「……こいつが動くってか?」

その場合、侵入者を排除とかいって襲ってくるのではないか。ソウヤは口元を引きつらせた。

ソフィアが、胡散臭そうに石像を見上げる。

「この石像が? 動くって? まさか。足がないのに?」

「足がなくたって浮遊すれば移動できるのではないかな?」

ジンは指摘した。セイジは首を振る。

「石像が動く……大昔のゴーレムみたいですね」

「動いてないわよ」

ミストがその石像に近づく。槍を手に、もし石像が動き出しても、すぐに対応できるように注意しながらだ。

「でも魔力を発生させているのは魔石かしら? これはかなり強い魔力を秘めているわ」

「動力源だろうか」

ジンが睨むが、ソウヤは首をかしげる。

「これ、魔石を取ろうとしたら襲いかかってくるトラップの一種かな」

「可能性はある……」

ガルが魔石をそれぞれ指さした。

「人間の手は二つ。ひとりでは三つ同時には取れない」

「二人なら……届きそうな足場が狭くて、二人は乗れないか」

罠と決まったわけではないが、もしそうなら、実に嫌らしい配置をしている。

「目に見える三つすべてを同時に取らないと動きだす?」

「あるいはそれすら罠かもな」

ジンは楽しそうな顔になる。

「目に見える三つ以外に、実は死角にひとつ隠してあって、三つ同時に取っても動くとか」

それはとても嫌らしい罠だと、ソウヤは思った。ミストが振り返る。

「で、どうするの? せっかく見つけたんだから、放っておかないわよね?」

遺跡保護の観点――は、誰の管轄でもない場所には適用されない。ダンジョンなどの危険場所に潜る冒険者には、そこで見つけたお宝を回収しても罪には問われない。もちろん、管理している組織があって、そこで違法と訴えられた場合は、罪に問われて没収されるが……。

21号遺跡は、モンスター出没遺跡で、現在、どこかが採掘権を持っていない。つまり見つけたものは、見つけた人でどうぞご自由に、である。

「……持って帰るか」

ソウヤは許可した。この遺跡への入り口を無理やりこじ開けた以上、他の冒険者なりが来ることができるようになっている。彼らがこれを見逃すはずもなく、どうせ他で持っていかれるのなら、先行者特権で回収してしまおう。

ガルが石像を検分して罠らしいものがないか確認する中、ソウヤはジンと話し込む。

「この遺跡、何だと思う?」

「さて。……見たところ、研究施設か、あるいはダンジョンかもしれないね」

ジンはそう見立てた。

「ダンジョン?」

「ガーディアンがいまも稼働している点。対して、この遺跡内に、人骨などの人の形跡がなかった」

これまで見てきた範囲では、人の居住施設はなかった。白骨化した遺体などもなく、また動物などの姿も見ていない。

「古代の研究者がこもっていた研究所か、あるいは魔術師のダンジョンかもしれない」

「地下の秘密研究所ってか……」

それらしく聞こえて、ソウヤは納得した。だが疑問もある。

「ダンジョンって割には、トラップの類いはなかったな」

「そこだ。私が研究所説も挙げたのは」

ジンは石像へと視線を向けた。

「自分の家に落とし穴や致死性のトラップを仕込むものはいない。普段から施設内を行き来するなら、そういう罠は自分が引っかかる恐れがあるからね」

「守りは警備員だけで充分、か」

「施設が隠されていたなら、そうそう侵入されることもなかっただろうしな」

なるほど――ソウヤも石像、正確には宝玉を取ろうとしているガルを見る。

「研究所だとしたら、いったい何を研究していたと思う?」

「さあ。まだここの全部を踏破していないからね。今のところ推測できる材料は、あのガーディアンの製造施設とか、あるいはあの石像が実はゴーレムで、その巨大ゴーレムの開発施設だった……とかかな?」

「……やっぱ宝玉を取ったら動き出すのかな?」

「研究所説を採るなら、逆に取ったら動かなくなると思う」

ジンは眉を潜めた。

「つまるところ、動くなら、今だろう」

ガルとミストが、宝玉を石像から外した。……何も起こらなかった。

「拍子抜けだな」

「何も起こらないほうがいいんじゃないか?」

ジンが意地悪な顔になった。

「お宝を手に入れた瞬間、施設が崩壊するというのは定番だ」

「嫌な定番だ」

しかし、遺跡が地震に見舞われることもなく、静かだった。

「……ほんと、何も起きないな!」

「そうそう映画やマンガみたいなことは起こらないということだな」

「ソウヤ!」

ミストが手に入れた宝玉を投げて寄越した。アイテムボックスに入れろ、ということだろう。ガルが回収した分も受け取り、収納する。

「他に見るものなけりゃ、こんな退屈な場所からさっさとおさらばするか!」

何のイベントもない遺跡に用はない。そう思った矢先に「ソウヤさーん!」とセイジに呼ばれた。

「ここからさらに地下にいけるみたいです!」

セイジとソフィアが、さらに奥を見つけた。長い下り階段である。ソウヤは肩をすくめる。

「さて、どうするよ?」

「せっかくだし、行ってみましょ!」

ミストが歩き出せば、ジンも続いた。

「探索残しがあるのは、気持ち悪いと思う性質でね」

「……そうですか」

それならば探索しましょ――ソウヤたち一行は幅の広い石の階段を下っていく。長い階段だ。帰りに登るのは大変だろう。

到着した先は、陸上競技場を思わす広さの地下フロア。そこにあったものに、思わずソウヤは呟いた。

「研究所だって……?」

数百体に及ぶ石像が、軍隊のごとく整列していた。

――中国にこんなのなかったっけ? 兵馬俑だか何だか。

あれは人型だったが、こっちはマッシブなゴーレム像で、遥かにガタイがいい。これが本当に石像なら、壮観な眺めなのだが……。