軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第128話、魔族 VS 白銀の翼

『強すぎるーぅ!!!』

師匠カイダ、その弟子マーロは同じ感想を抱いた。

漆黒の戦乙女――ミストに完全に力負けしている。

このままでは作戦どころではなく、殺されてしまう――二人は、これまた同じ思いに囚われる。

――まだ充分に魂を集め終わっていないのに!

ここで撤退して帰れば、実行部隊の同僚に何と言われるかわかったものではなかった。

だが、ここで踏みとどまっては、おそらく漆黒の戦乙女に討たれる。生きて帰ることは不可能。せっかく集めた魂も無駄になってしまう。

魔王復活のための魂回収は、実行部隊の最重要任務である。ノルマを果たせないのは、あってはならない。

再起を――カイダが言いかけたその時、嘲るような男の声が響き渡った。

「おいおい、クソ魔女コンビ! 何だって、こんなところにいるわけぇー?」

この、鬱陶しい声は――カイダは、声の主へと視線を飛ばす。

そこには白い仮面をつけた二人組が立っていた。

ひとりは大男。もうひとりは対照的に小男である。そして声の主は、小男のほうである。

「デ・ラ!」

「おう、トカゲババァ! ここはオレらの縄張りだってぇーの! どこかへ行きやがれ!」

「状況がわからぬか、デ・ラ! 今はそれどころじゃないのよっ! てか、いつからここがあんたの縄張りになったのよっ!?」

「今だ、今!」

デ・ラと呼ばれた仮面の男が吠えた。

「感謝しろよ、トカゲババァ。そこの美少女ちゃんの魂は、オレらで回収してやっからよ!」

「あらぁ、美少女ちゃんってワタシのことぉ?」

ミストは、新手と思われる仮面の男たちを見やる。小男、デ・ラは仮面で表情こそわからないものの、笑ったようだった。

「そういうこった、激ツヨ美少女ちゃん。ウヒヒ、さぞ、おたくの魂は美味なんだろうねぇ……! オラ、バルバロ! オレらでやっちまうぞ!」

「おう」

仮面の大男、バルバロは短く応じた。背中に下げていた巨大剣を抜く。デ・ラも両手に鎌を握る。草刈り鎌を二刀流にする姿は、どこかカマキリを連想させた。

「二対一だ! アマァ!」

「……いや、二対二だ!」

ガルが割り込む。デ・ラを狙った横合いからの攻撃だが、片手の鎌がそれを阻止した。

「あぶねぇ! 何だぁ、毛皮野郎! お呼びじゃねえんだよ!」

金属同士のぶつかる音が木霊する。

「そうなると、ワタシの相手はアナタかしらぁ!?」

ミストはバルバロに狙いを定める。槍を構え、突進――その一歩を踏み出した瞬間、強大な重力がかかり、ミストの動きが止まった。

「マーロ! 思いっきり掛けなさいなァ!」

「はいっ、お師匠様!」

魔女コンビが重力制御魔法を、ミストにかけ、その動きを封じにかかる。

「四対二だ! あたしら忘れるんじゃないよ!」

「バルバロさん! いまのうちに、やっちゃってぇー!」

ミストに迫るバルバロの大剣。まるで断頭台の刃の如く、重々しいその斬撃は、フル装備の騎士の胴すら両断できるだろう。

重力によって縛り付けられたミストに、回避の余裕はない!

ガシィンッ――激しい衝突音。バルバロの大剣は、しかし振り切れなかった。ミストの前に、斬鉄を構えるソウヤがいたからだ。

「オレの連れに何してくれるんだ、木偶の坊?」

「ぐぬっ!?」

仮面の奥でバルバロは驚いていた。自らの渾身の一撃を受けて、吹き飛ばない者などいない。たとえ、斬撃を防いでも衝撃で吹っ飛ぶのが普通なのだ。

だが、目の前の男は、まったく微動だにせず、バルバロの大剣の勢いを完全に防いでいた。

「三対四、だな!」

ソウヤが斬鉄を振り回す。その素早く、重い攻撃を、バルバロは正確に防ぐ。防ぐ! 防ぐ!

しかし、一歩ずつ、勢いに押されるようにバルバロは後退を強いられる。

「何者だ、貴様っー! この俺を後退させるだとーっ!」

バルバロが咆えた。ソウヤは冷徹に、敵の仮面の奥の目を射貫く。

「ただの勇者マニアさ」

「ぬんっ! 舐めるなーっ!」

バルバロの大剣、その刃が突然、轟音と共にチェーンソーの如く動き始めた。斬鉄の表面に激しい火花が散る。

「っ!」

――変なギミックを仕込みやがって!

おそらくロッシュヴァーグの作った斬鉄でなければ両断されていたに違いない。

「ソウヤ、後ろ!」

ミストの声に、とっさに背後の気配に気づく。仮面の小男――デ・ラが鎌を振り上げて迫っていた。

「チェーストォォー!!!」

――クソがっ!

体が反応していた。向かってきたデ・ラのそのがら空きの胴体に蹴りをぶち込む。

「グェェーッ!」

小柄なデ・ラは吹っ飛んだが、前方のバルバロの勢いに押され、ソウヤもまた倒されてしまう。

バルバロが追い打ちをかける。しかしソウヤは素早く身を起こし、叩きつけられた剣を避ける。刻まれる地面、跳ねる土。

「ケッ、あと一歩だってぇーのによ! よくも邪魔してくれちゃったな、美少女ちゃん!」

デ・ラは身を翻した。

「まずはオマエから始末してやるーっ! 魔女コンビ! しっかり押さえてろよ!」

「ミスト!」

「させん……!」

ガルがデ・ラの前に立ち塞がる。しかし彼はすでにデ・ラの攻撃で胸にV字の傷を負い、血を流していた。

「死に損ないがよー! だったらオマエから殺してやんよー! って、おおっ!?」

横合いから、ファイアボールが飛んできて、デ・ラは下がる。

ソフィアだった。村人の避難をしていた彼女は、魔法カードを使ったのだ。デ・ラは唸る。

「ちっ、思わず、あんな雑魚魔法をよけちまったぜ! これでもくらって大人しくしてなっ!」

デ・ラの目が一瞬光った。その光を直視したソフィアは、体が硬直してしまう。

「へへーん、金縛りってやつだ。後で料理してやるから大人しくしてんのよぉ? さあて毛皮野郎、もういっぺん、金縛りを受けてみっか!?」

鎌を構えるデ・ラ。

「ま。そこで一瞬でも目を逸らしたら、この鎌が切り裂いちゃうけどよぉ!」

ガル、絶体絶命!

だが、一陣の風が吹いた。

そこにいた誰もが、それに目を向けてしまう。

得体の知れない何かの気配。だが気にせずにはいられない、大きなそれに、誰もが一瞬自分の行動を忘れて、視線を向けてしまった。

フードを深々と被った人間らしきそれが、ゆっくりとした足取りでやってくるのが見えた。