軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

53話 幼馴染だからこそ、私はあなたを許せない

放課後になり、杉原先生は3名の生徒を空き教室に呼び出していた。

呼び出しを受けた生徒はこの俺と星良、そして双葉の3名で、先に俺と星良は指定場所で待機している状態だ。

双葉に関しては杉原先生が直接連れてくると言って今しがた空き教室を出て行った。

恐らくは先生なりの配慮なのだろう。

被害者と加害者が一緒に指定場所を目指すとなれば、はっきり言って気まずいという次元ではない。その点の判断から時間差を置いて双葉を直接連れてこようとしてくれたのだろう。

先生と双葉の到着を待つこと数分、ついに扉が開き二人がやって来た。

「待たせたな二人とも」

「………」

杉原先生の後ろに居る双葉の表情はもう絶望に染まっていた。

思えば昼休み明け、教室に戻って来た時から彼女は青ざめていた。その段階でもうこの未来を予測していた、あるいは告げられていたのだろう。

中央に用意されている二つの机、俺と星良は並んで座り、対面するように杉原先生と双葉が着席した。

「さて、それじゃあ始めるぞ」

重い口調で先生が開始を告げる。その言葉に俺と星良の表情はより引き締まり、逆に双葉は更に気落ちしたものへと変わった。

「まず、今回の件で呼び出された理由についてだ。昨日の昼休憩時、大道は2年のサッカー部員複数人から謂れのない暴言と共に、リンチ行為を働かされそうになった。厳密に言えば2年の中島には暴行を振るわれもした。その件に関して三日月、何か思い当たる節はあるか?」

もう証拠も出そろっているが、それでも先生はあえて双葉に心当たりの有無を問う。

きっとこの言及は少しでも双葉の口から罪を認めてほしいという先生なりの表れなのかもしれない。自分の教え子に、せめて罪の自覚は持った上で償ってほしいという表れ。

だが双葉はその想いを汲み取ろうとはせず、なおも自己を護ろうと足掻く。

「知りま……せん。私は何も……」

この期に及んで否定を述べる双葉に、俺だけでなく星良と先生の顔にも失望の色が強まった。

もはや何も言う気など失せるが、それでも杉原先生は教え子に現実を丁寧に告げる。

「そうか、そうやってまだ認めようとしないんだな。だがな三日月、どれだけ否定しようとも言い逃れなんてできないんだよ」

そう言うと先生が机の上にボイスレコーダーを置いた。

「この中には2年の中島の自白音声が入っていた。俺も一度確認している。疑うなら三日月もこの場で聴いてみるか?」

「そんなの中嶋先輩が私に罪を押し付けようとしてるだけ。私は……悪くないです……」

「じゃあこれならどう説明するの?」

ここで声を上げたのは星良だった。

彼女はスマホを取り出すと、昨日の録音した音声を流し出す。

再生された音声には、感情が爆発した双葉の自白がしっかり記録されていた。

教室内に彼女の身勝手極まりない自論が拡散され、全てを流し終える頃にはもう彼女は完全に顔を下に向けていた。

「申し訳ないけど、昨日のあなたとの会話を録音していたの。これでもまだ、あなたは言い逃れようとする気なの?」

「………」

「あなたの行いで誠也君は身も心も傷ついた。その報いはきっちり受けてもらいます」

「……い」

「それに、あなたは無関係の先輩達まで巻き込んだ。もちろん真偽も確かめずあなたを信じた彼等にも問題はある。でもね、あなたが騙さなければ誰も処分を受けずにすんだ。あなただってこんな場所に来ることもなかった」

「う……い……」

「何より、これだけの真実を突き付けてもあなたは誠也君に謝ろうとしない。たとえかつての幼馴染だからといって、ううん、幼馴染だからこそ私はあなたを許さない」

「うるさぁぁぁぁぁいぃぃぃ!?」

これまで俯いていた双葉は勢いよく顔を上げ、そして獣の様な咆哮を飛ばしてきた。

「あんたは、あんたはどこまで私の人生を足蹴にすれば気が済むのよ!?」

「おい三日月、落ち着きなさい」

「うるっさい! 幼馴染ですらない教師が首を突っ込んで来るじゃないわよ!?」

星良だけじゃ飽き足らず、あろうことか杉原先生にまで三日月は噛み付き出した。しかも身まで乗り出して、星良の髪を掴もうとしたのだ。

「危ない!」

咄嗟に俺は星良を抱きしめるように庇う。

杉原先生も即座に双葉を後ろから羽交い絞めにして止めにかかる。

「よさないか三日月!」

「はなしてよ! あいつが、あの女が全部悪いんだぁぁぁ!!」

もはや怒りを超えて殺意にすら濡れている双葉を前に、星良は一切気圧されずに真っ向から向かい合っていた。

そんな彼女の態度が更に癪に障ったのか、なおも過激に罵声を飛ばす。

「私と誠也の幸せな人生を台無しにして、お前なんか死んでしまえぇぇぇ!!」

その言葉は俺の限界を超えるには十分過ぎた。

頭の中でブチリと音が響いた気がした。そして、自らの罪科を自覚しない愚か者に、他でもない俺は最後の止めを刺す為に口を開いていた。