軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

19話 甘々なお弁当タイム

「あっ、誰もいないみたいだね」

屋上の扉を開くと澄み渡った青空が広がっていた。

時折だがこの場所は、自分たちのように屋上で昼食を食べる人間は居るが、今回は他の生徒はおらず、この広々とした空間には俺と星良の二人だけだった。

「えへへ……本当に二人だけの時間になったね」

嬉しそうにはにかむ星良に俺も似たような顔で笑い返す。

どちらが寄り添うでもなく、俺たちはお互いに自然と隣に座って弁当箱の蓋を開いた。

そして星良の弁当を見て、俺の口からは『おお~』っと感嘆の声が漏れる。

蓋を開けられて出てきた弁当は卵焼きやハンバーグ、ウインナーにミートボールなど、複数のおかずが鎮座していた。

品数も多く綺麗に彩られている中身に感激していた俺だったが、何故か星良は申し訳なさそうにしていた。

「その、ごめんね。実は卵焼きちょっとコゲちゃって。それに他のおかず失敗して冷凍ものなんだ」

そう言いながら謝る星良だが、俺にとってはそんなのミスでも手抜きでもない。

いやむしろ、慣れないお弁当作りを俺の為に頑張ってくれた事実がより嬉しさを加速させてくれた。

「あれ、でも星良って普段は教室で友達とお弁当だったよな?」

「あはは……実はね、今までのお弁当ってお父さんが作ってくれたんだ」

おいおいマジか、それはそれで驚きの事実だぞ。

まだ交際する前に一度だけ、偶然だが星良の弁当箱の中身を見たことがある。

その中身はかなりファンシーだった。例えばたこさんウインナーやハートマークのかまぼこ、そしてご飯はキャラ弁と。

あの愛らしさ全開の弁当が父親作成の物とは。なんだがイメージ湧かないな……。

よくよく考えれば俺は星良の父親について何も知らない。

小学生の時だって母親と面識はあったけど、父親については皆無だったからなぁ。

いったい星良の父とはどんな人間なのか考えていると、隣から不安げな声が聴こえてきた。

「誠也君、お弁当に手を付けてないけど嫌いな物でもあった?」

「あ、違う違う。ちょっと考え事してただけだからさ。それじゃあ早速いただきます」

彼女にいらぬ誤解を与えないため、俺は卵焼きを勢いよく口に放り込む。

「んぐ、んぐ……うまいよ星良」

「ほ、本当!」

俺が味の感想を伝えると、彼女は心の底から喜びを表す。

その反応が愛おしく、思わず自分の表情筋が緩んでしまうのを自覚した。

「お世辞でも嬉しいな。頑張って作った甲斐があったみたい」

「お世辞なんかじゃないって。本当にうまいよ、ありがとな星良」

「でも卵焼きなんて焦げちゃってたし……。ほんとはちょびっと変な味とかしなかった?」

「全然苦くなんてなかったぞ。それにさ、その焦げだって星良の頑張った証だろ」

そこから俺たちはお互いに他愛ない話をしながら弁当に舌鼓を打った。

恋人からの手作り弁当、そして二人きりの時間、それがとても幸せで俺も星良も笑顔が絶えなかった。

昼食が終わると俺たちのそのまま屋上で残りの時間を過ごす。

「ごちそうさま。できればこれからも星良の弁当が食べたいな」

俺があえてきざっぽく笑ってそう言うと、星良はクスクス笑った。

「そう言うセリフってなんだか誠也君に似合わないんだー」

「そんなハッキリ言わなくてもいいだろ。容赦のない恋人だな」

そう言いながら俺は彼女の頭をそっと撫でてあげる。

柔らかな髪を撫でると、彼女はくすぐったそうにしつつも、気持ちよさそうに目を細める。

完全に無意識から取った行動に、俺は自分で驚いていた。

うわ、愛らしすぎて自然な流れで撫でてしまった。

なんだか今朝のクラスメイト達への立ち回り以降、俺の中で何かが大きくなった気がする。

これまでは内気なタイプだった俺が、今はこうして自分から恋人の頭を撫でる。これまでの自分ならちょっと考えられない行動だ。

俺に頭を撫でられている星良も同じことを感じたらしく、こんなことを言ってきた。

「なんだか誠也君、少しずつ昔みたいに戻って来たね」

「えっ、昔の俺ってこんな感じだったっけ?」

てっきり男らしくなったとか言われると思ったので、予想外の指摘に首を傾げる。

だがよくよく考えれば星良の言っている事も的外れでない気がする。

まだ小学生時代、星良が転校する前までの俺は活発だったと思う。あの頃は男友達だと思っていた星良と一緒に色々な場所を巡って遊んだものだ。

だが星良が転校していってからの俺は双葉の尻に敷かれる事が増え、そして気が付けば高校では『便利君』と呼ばれるまで落ちぶれた。

もしも星良と再会しなければ、あの校舎裏で彼女に助けてもらえなければ、俺はきっと腐ったままだったんだろうな……。

「星良と再会できて良かったよ」

そう言いながら俺はまるで祈るように彼女に懇願した。

「これからも、一緒に居てくれ」

「そんなの当然だよ。もう二度とお別れなんてせず、ずっと……一緒に……いよ」

俺たちはいつの間にか抱き合うように密着し、互いの頬を当てて相手の温もりに包まれていた。

結局昼休み終了のチャイムがなるまで、俺と星良はそのまま寄り添って時間を過ごし続けていた。