軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

6、『マリちゃんを見守り隊』の結成

「じゃあ、また明日な」

ジークが茉莉花を抱きあげて箱から出す。優しく床におろした。

とたんに。

「ギャー、ジーク! 人間ちゃんを立たすな!」

「スリングを使え!」

「人間は弱いんだぞ。軽く肩を叩いただけで複雑骨折をした、と記録に書かれているんだ」

「そうだぞ。握手したら骨がバキボキになってしまったらしいんだぞ」

「雨に濡れただけで高熱が出たとか」

「座っていただけで腰痛になったとか」

「驚かせたら心臓が停止したとか」

「太陽が熱くて失神したとか」

「とにかく人間ちゃんは繊細でか弱いんだ!」

と、冒険者たちの非難轟々が巻き起こった。

「うるさい」

ぴしゃりとジークが跳ね除ける。

「マリは、座れるし歩けるし健康だ。ダンジョンの百階で3時間いっしょにいたけど問題はなかった。それよりも腹がへったからメシに行くんだ。予定していた店では人間が食べられるものがあるかどうかわからない。人間が食べられるものがある店を知らないか?」

「パムの店はどうだ?」

「ああ、パムの店なら離乳食があるぞ。ミルクも」

「人間は固いものが食べられないんだろう?」

「魔獣肉を噛み千切れなかったらしいし」

離乳食。

16歳なのに離乳食。

茉莉花は黄昏れたくなってしまった。

しかし、冒険者たちが宣う人間の過去例を聞いていると、こちらの普通の食事が食べられるかは自信がない。

たぶん、茉莉花とこちらの世界の人間とは能力的に大差はないのだろう。

風邪もひくし、腰痛や頭痛にもなるし、動悸もするし、熱中症にもなる。色々な病気や怪我もする。

だが人間の百倍頑丈な他種族の目には、そんな人間が弱く映るのだ。

茉莉花は不安に思った。

自分はこの世界で生きていけるのだろうか、と。

震える茉莉花の指先をジークが掴む。

「マリ。手を繋ごう」

ジークの手があたたかい。

その温もりが心地よくて、茉莉花の不安が収まっていく。

冷えかけていた指先に体温が戻ってくるのを茉莉花は感じた。

「フローラさん、皆さん、ありがとうございました」

茉莉花は礼を言って、ジークに寄り添った。

細い身体を寄せられたジークは嬉しげに破顔する。

「行こうか。お腹がすいただろう?」

「実はぺこぺこです。ご飯が楽しみです」

手を繋いでギルドから出て行くジークと茉莉花を冒険者たちとギルド職員たちが見送った。

そして、すぐさま円陣を組む。

「ヤバいって。ジークは強いけれども番が人間なんて」

「人間は貴重だからな。どんな手を使っても欲しがる者は現れる」

「戦闘に巻き込まれたら人間ちゃんはイチコロだぞ」

「人間ちゃんはいい子そうだし、守ってあげたい」

「フローラ、なんかいい案はないか? 親族に人間を番にした者がいるんだろ」

「参考にはなりませんね。我が一族は執着と執念の竜ですよ。従兄弟は番を安全のためと言って監禁しています」

「監禁かぁ。論外だな」

「ジークと人間ちゃん、仲良さそうだし幸福になって欲しいよな」

「おう。奇跡の確率の番だもんな」

お互いに視線でせっついて唸りあう。

「いい方法はないかなぁ」

「人間ちゃんが泣くのは嫌だぜ」

スッ、とフローラが手をあげる。

「では、『マリちゃんを見守り隊』の結成をしませんか?」

「なるほど、見守るのか。直接に人間ちゃんを守るのはジークで、俺たちは影から守る役目か」

「その通りです。番に触れられることをジーク様も嫌がられますでしょうし、私たちもマリ様に触れるのは力加減がわからなくて怖いです。あくまで影からこっそりと守るのが役割です」

「賛成。俺は協力するぜ」

「俺もだ」

「俺も入れてくれ」

近隣にダンジョンを複数所有するヴァイリカスの冒険者ギルドは、ランクの高い冒険者が多く所属していた。

ジーク以外にもS級冒険者は幾人もいる。

A級、B級は国内最多の人数が所属していた。

そのヴァイリカスの冒険者ギルドで。

密かに『マリちゃんを見守り隊』が稼働することになったのだ。

「よし。これからは人間ちゃんをマリちゃんと呼ぶぞ」

「おう!」

「なぁ、なぁ、マリちゃんの肖像画はダメかな? メンバーの意識をまとめるためにも」

「……ジークにバレなきゃ大丈夫、か?」

「マリちゃんの会報も作ろうぜ」

「……ジークにバレなきゃ大丈夫、かも?」

「バレないようにするんだよ。俺たち高ランクの冒険者だぞ。やれる、やれるって」

「おう、そうだな!」

「よっしゃ! やるぞ!」

こうして『マリちゃんを見守り隊』は秘密裏に産声をあげたのだった。

「会員バッジを作ろう。デザインはちびマリちゃんだ!」

「ちびマリちゃんの人形も会員限定で!」

「ちびマリちゃんの絵のタオルも欲しいぞ!」

「ちびマリちゃんのマグカップも!」

「ちびマリちゃんの団扇も!」

「ちびマリちゃんのウサミミ付きのも!」

「ちびマリちゃんのクマミミ付きがいい!」

なまじ高ランクの冒険者が多数いて金銭的にも余裕があったために萌えグッズにまで手を伸ばしてしまい、結局は数日後にジークに露見してしまうことになった。

そうして『マリちゃんを見守り隊』は公式ファンクラブとなり、やがてヴァイリカスの最大勢力へと成長するのであった。