軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

31. 王都にて(ラハルト視点)

王都エランディアの貴族街、その中でも特に華美な外観を持つライセン家のタウンハウスの前に立ち、ラハルトは呆然とした表情で自らの古巣を見つめていた。

家門を出てから数ヶ月も経っていないというのに、ライセン侯爵家のタウンハウスは彼の記憶とは全く異なる姿に変貌していた。

金箔が施された外壁は、徐々に沈み始めた夕日を浴びても、その眩い輝きが衰えることはなかった。広い庭には、ロンカエトでは育たないはずの、いかにも高価な花々が咲き乱れていた。

ラハルトが屋敷を後にする直前でさえ、ライセン家は破産寸前だった。

ラハルトの母はもちろんのこと、弟のロウェルも、妻であったエイミーでさえも、資産を蓄える能力など持ち合わせていなかった。ただひたすらにラハルトの名声だけを頼りに、借金を重ねる日々だったはずなのに。

(一体どこからこれほどの金が……)

そもそもロンカエトは、終戦から一年も経っていない。貴族や平民の区別なく誰もが困窮しており、王城でさえも質素倹約を掲げて夜会を減らしているほどではないか。

不吉な予感に背筋を伝って冷や汗が流れ落ちた。すでに引き返せない道を歩んでいる家門を見つめながら、ラハルトは目をきつく瞑った。

(……ロウェル。一体、何をしでかしたのだ)

ロウェルがカランの調教師たちを囲っていると知ったその瞬間から、取り返しのつかない段階に来ていることは分かっていた。しかし、ラハルトはライセン家の当主ではないか。

家門の没落は避けられないとしても、せめて彼自身の手ですべてを終わらせようとした。

責任感だけを胸にユフィの傍を離れ、王都までやってきたものの、すでに物事はすべて彼の意思から離れていた。もはや、彼一人の力ではどうすることもできない。

だが、だからこそ。

両手を強く握りしめたラハルトは、使い魔の背から降りた。そしてタウンハウスの正門へと歩みを進めた。彼が正門の前に立つと、警備に当たっていた二人の男がハルを見つめた。

見覚えのある騎士たちだった。ラハルトは重苦しい声で彼らに告げた。

「ラカン、アトゥス。門を開けろ」

「ここはライセン侯爵家の屋敷だ。お前のような名もなき風来坊が、みだりに立ち入っていい場所ではない」

「ラカン」

「無礼者が! 風来坊の分際で、準騎士の名前を気安く呼ぶな! 痛い目を見ないうちに失せろ」

古くからライセン家に仕えていた者たちだ。彼らとてラハルトに気づかないはずがなかった。しかし、騎士たちは頑なに彼を知らぬ者として扱うばかりだった。

「ロウェルが命じたのか? 私が戻ってきても門を開けるなと」

「痛い目を見ないうちに失せろと言ったのが聞こえなかったのか?」

剣を抜く騎士たちの姿を見て、呆れ果てるしかなかった。まさか門前払いを受ける羽目になるとは。失笑さえ出ないほどの扱いに、息が詰まりそうだった。

村にいた頃は、心身ともに酷く平穏だった。ユフィの冷ややかな態度は痛く苦しかったが、これほどまでに行き詰まることはなかったというのに。

(……)

一体どうすればいいのか。途方に暮れるような感覚に囚われた。

肩にのしかかる責任感が、ことさらに重く感じられた。ラハルトは諦めることなく、何度も屋敷に入れてくれと頼んだ。だが、騎士たちは一顧だにしなかった。

このような押し問答で無駄な時間を費やすほど、ラハルトには余裕がない。

(武力は行使したくなかったのだが……)

こうなった以上、強引にでも屋敷に入らねばならない。覚悟を決めたラハルトが騎士たちへ一歩近づいた。その瞬間だった。

「おや? これは誰かと思えば!」

聞こえてきた聞き覚えのある声に、ラハルトの視線がその声の主の方へと向いた。

タウンハウスの奥から、一人の男が歩いてくるのが見えた。どれほどの贅沢に耽っているのか、伸ばされた両手には大粒の宝石が嵌められた指輪がいくつも輝いており、上質な生地で作られた礼服は、それ自体が美術品と呼べるほどに贅沢極まりないものだった。

タウンハウスの敷地内に立つロウェル・ライセンの、鉄門の向こうにある黒い瞳が、ゆっくりとラハルトを値踏みするように舐め回した。別れる前と変わらず、やつれて零落したラハルトの姿に、ロウェルは口元を歪めて笑った。鮮明な嘲笑だった。

「兄上。お久しぶりですね。こんな辺鄙なところまで、一体何の用ですか?」

「……ロウェル」

「いつ果てるかも分からないお方が、このようにうろつかれては困ります。この付近で息絶えでもされたら、こちらの被る迷惑が甚大ですからね」

当然のように放たれる無慈悲な言葉。平気なつもりでいたが、やはり重苦しい痛みが彼の胸を抉った。かすかな息を吐き、ラハルトはロウェルを見つめた。

「お前が何をしたのかは知っている、ロウェル。もしお前に、私を家族と思う心が残っているのなら。最後に、一つだけ頼みを聞いてくれ」

「頼み、ですか……何でしょう?」

「屋敷にいるカランの残党を引き渡せ。そして今すぐ王城へ行き、自白するんだ」

「何を言い出すかと思えば……」

沈みゆく夕日は、血のように赤かった。ロウェルの軽蔑に満ちた視線がラハルトに注がれた。

「ロウェル。これ以上、罪を重ねないでくれ。彼らを引き渡して自白しろ。そうすれば、命だけは……」

ラハルトの言葉を遮るように、大きな笑い声が響き渡った。何がそれほど可笑しいのか、ロウェルは腹を抱えて笑っていた。

「アハハ! 兄上、正気を失ったのですか? なぜ私がそんなことをしなければならないのです? 彼らは兄上のような無能とは比べものにならないほど有能な者たちですよ。彼らを引き渡せだなんて、冗談がきつい」

「ロウェル。頼む、この通りだ。お前にはこれから生まれてくる子供もいるのだろう? だから……」

「くくっ、アハハ! 本当に滑稽で死にそうだ。一銭の金も稼いでこられない無能な役立たずが、大層な口を利くものだ」

「私をどれだけ罵っても構わない。これ以上、ここを訪ねることもない。だから頼む。今回だけは私の言葉を……」

「ユフィネル・エルピスに会ってきたからと、頭でも狂ったのですか? いや、最初から狂っていたからこそ、あの陰気な女の元を訪ねたのか」

「……今、何と言った」

ロウェルの口から出た懐かしい名前に、ラハルトが門を激しく掴んで引き寄せると、ロウェルの嘲笑はさらに深くなった。

「兄上の後ろをつけていた従者が言っていましたよ。兄上が前妻の元を訪ねたと。今更、愛乞いでもしに行ったのですか? いくら何でも、ユフィネル・エルピスだなんて!」

「……」

「私たちがその報せを聞いて、どれほど笑ったか分かりますか? 一体どこまで落ちぶれるつもりですか」

握りしめた拳に力がこもる。ラハルト自身のことなら、何を言われてもよかった。しかし、彼女は……。

「ロウェル」

「まさかあの女、兄上のその姿を見て逃げ出しでもしましたか? いや、そんなはずはないか。あの愚かな女はいつも兄上だけを見ていたのだから、すまないの一言でも言えば、兄上がどんな姿であろうと受け入れたのでしょうね」

「ロウェル!」

ラハルトの怒号にも、ロウェルの言葉は止まらなかった。むしろ彼の怒りを煽るようにラハルトの前に近づいたロウェルは、人差し指を左右に振りながら言葉を続けた。

「兄上。いや、ラハルト。お前はもうライセン家の家主でもなければ、王国の英雄でもない。朽ち果てていく肉体を持った浮浪者が、滅多なことで貴族に対して口を利くものじゃない」

「……」

「ラカン、アトゥス。勤務怠慢だな」

「申し訳ありません。追い払おうとしましたが、執拗にしがみつくもので」

「まあ、お前たちはあの無能な男に何年も仕えていたのだから、情が勝つこともあるだろう。今回だけは許してやる」

歪んだ笑みを浮かべていたロウェルが手を挙げると、庭の影からローブをまとった二人の男が歩み出てきた。

「いくら浮浪者とはいえ、願いを一つ叶えてやるくらいは造作もない。この浮浪者がお前たちを引き渡せと言っていたぞ。お前たちも、この役立たずに返す債務があると言っていたな? 債務を取り立てた後、遠くへ捨ててこい」

「御意」

言葉を終えたロウェルが背を向け、タウンハウスへと歩みを進めた。その瞬間だった。まるで時間が巻き戻ったかのように、暗くなり始めていた空に赤い光が戻ってきた。

騎士たちはもちろん、背を向けていたロウェルまでもが足を止め、空を見上げた。タウンハウスの向こう側から、凛とした女性の声が響いた。

「そう。ロウェル・ライセン。あんたの選択は、それなんだね」