軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

エピローグ・愛でる係は継続で

オラスは廃嫡後、僻地の廃城に幽閉された。

ヒロインのピアはかなりのショックを受けていた。

なんと夜会の前日に、オラスの求婚を断っていたそう。

彼の狼藉にはきっと、そのうっぷん晴らしも含まれていたらしい。

ピアは私に申し訳ないと泣いて謝るので、私は、あなただけが原因ではないのよと伝えた。

事実、オラスがそう証言している。私への『おしおき』と、シルヴァンへの『いやがらせ』だ、と。

けれどピアは貴族籍から離脱し、放浪の旅に出てしまった。

令嬢なのに放浪って大丈夫なのかと心配になる。けれど、そもそも『成り上がる』小説の主人公だもの。きっと大物になって成功するのよ。心の底から、彼女の立身出世を応援するわ。

それから、国王。彼は『持病の悪化により』退位した。

彼はシルヴァンが魔力暴走を起こしていると知ると、一目散に離宮に避難した。そこで倒れたんですって。

新しい国王には、第二王子がなる。即位にあわせて、婚約もする。相手はベルジュ公爵令嬢レティシア。つまりヴィクトルお兄様たちのお子ね。

だけど王子は五歳。

王妃陛下とヴィクトルお兄様が共同で摂政になるのですって。

一部からは、シルヴァンが次期国王に相応しいとの声が上がったみたい。

だけどシルヴァンは、

「あんなアホの後始末はしたくない」と言って断ったらしい。

魔力暴走を境に、彼は変わってしまった。

なにしろ『気持ちに忠実』が新しいモットーだから。

常に柔らかな笑みを称えて、誰にでも優しかったシルヴァンはもういない。

今はつねに無愛想で、嫌悪の感情を隠すことなく口にする。

その代わり、私には甘い。異常なまでに甘い。

いつだって蕩けるような笑みを浮かべているし、口を開けば『可愛い』『愛している』のオンパレード。時どき思い出したかのように、意地悪な口調に戻ってそれもまたキュンとする。

今や私たちは、一日中一緒に過ごしている。

私は雑用係に復帰したから、仕事中は当然同じ部屋にいるでしょ?

それからプライベート。シルヴァンたっての願いで婚約したのと同時に、私はドパルデュー公爵邸に引っ越した。

一応『花嫁修業のため』という名目があるけど、誰も信じていない。そんなものは王太子の婚約者時代に終わらせてしまっているもの。

でもみんな、シルヴァンが破壊力抜群の魔力暴走を起こすよりは、行き過ぎた溺愛を見守るほうがずっといい、と考えているみたい。

破壊しつくされた魔法省も、彼が魔法で直したし。魔力が黒かったことも、みんなスルー。

私もそれがいいと思うわ。

あの暴走、私が死ぬ恐怖と、愛することへの葛藤と、他の男へ渡したくないという嫉妬のコンボで起きたらしいのだもの。私はてっきりオラスへの怒りだと思っていたのだけど、違ったらしい。

ちなみに『他の男へ』というのはなんのことかと思ったら、私が結婚相手を決めたことをお兄様から聞かされていて、それで追い詰められていたのですって。

ヴィクトルお兄様は、シルヴァン様が私を傷つけたことをものすごく怒っている。更にシルヴァン様が婚約すらしていない私に手を出したと知ると、怒りのあまり卒倒した。

どうしてそこまで怒るのかと思ったら、シルヴァンが私に惹かれていることを知っていたからですって。

どんな事情があろうとも、あまりにタチが悪いとのこと。なんだったらオラスより最低だと言うから、さすがにそれはひどいと抗議しておいた。

でも、シルヴァンとの結婚を認めてくれた。

認めないと、シルヴァンに王宮を吹き飛ばされてしまうものね。多分その中にはヴィクトルお兄様も含まれるでしょうし。

お兄様との結婚式の打ち合わせを終えて、筆頭魔術師の執務室に入ると、シルヴァンがチェストの前でなにやらしている。

「どうしたの?」

と声をかけたとき、鼻に甘くフルーティーな香りが届いた。

「いれてもらっているばかりだからな」

と、シルヴァンが照れた様子でお茶の入ったカップを差し出した。

「まあ、嬉しいわ。ありがとう!」

「キスと言葉だけでは、やがて見捨てられるとアロイスが教えてくれた」

「素敵!」

一口飲んでみる。爽やかな香りとスッキリした味わいが口いっぱいに広がる。

「マスカットティーね」

「これなら君も飲めるだろ?」

「ありがとう!」

カップを置くと、背伸びをしてシルヴァンの頬にキスをした。

そのまま抱きしめられそうだったので、胸を押して離れる。

「せっかくいれてくれたのだもの。お茶を飲みたいわ」

「ならば、そのあとは俺のための時間だ」

シルヴァンは私を抱えたまま、椅子に座った。あとからカップが宙を漂ってやってくる。

それをキャッチして。

「シルヴァン! これでは落ち着いて飲めないわ」

「ロクサーヌが可愛いのがいけない」

ちゅっと首筋にキスを落とされる。

まあ、いいか。

雑用係になった理由は、彼の様々な姿を愛でることだったのだものね。

私は誰よりもシルヴァンを堪能しているわ。

《おしまい》