軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

14・4 告白

いつの間にか眠ってしまったらしい。

王妃様たちのいなくなった部屋は、窓から入る朝の光に溢れている。

寝台に預けていた頭を起こすと、シルヴァン様と目が合った。半身を起こして私を見下ろしている。

「お目覚めになったのね。どうして起こしてくれなかったの?」

「夢でないか、心配だった」

そう言って彼は表情のないで手を伸ばしてきたけれど、私の顔に触れる直前で止めた。

その手を握り、頬に当てる。

「ほら。夢ではないわ」

「……そのようだ」

「シルヴァン様。あなたが好き。こんな私でよければ、おそばにいさせてくださいな。私、有用よ? 毎日あなたの好きなアップルティーをいれるもの」

シルヴァン様の顔は無表情のままだ。そんなお顔のまま、私をベッドの隣に座らせた。

彼は手を私の腰にまわしているけれど、顔は伏せて目をそらしている。

「どうして俺がアップルティーを好きか、本当に知らないか」

「知っているの。嘘をついてごめんなさい」

「俺が国王を憎んでいる理由は?」

「それも。ごめんなさい」

原因はお母様の死だ。そしてその死の原因は、国王にある。

当時、新種の流行病が都を席巻していた。死亡確率の高い恐ろしい病だったものの、病の特効薬は流通しており、それさえ服用すれば助かった。

ただ、生産が追いついていなかった。

シルヴァン様のお母様も罹患し、ようやくその薬が届くというときに、国王の妃が病にかかった。オラスがお腹におり、臨月だった。だから陛下は、シルヴァン殿下のお母様のものだった薬を奪ったのだ。

小説に寄れば、本人の承諾を得てのことらしい。

だけどお母様は次の薬では間に合わずに亡くなった。王妃はご回復されオラスを産んだ。七年前に病気でお亡くなりになったけど、私も彼女のことはよく知っている。子煩悩で素敵な母親だった。

国王の我儘のせいで大好きな母親を亡くした五歳のシルヴァン様が、どれほど絶望したかは想像もできない。

しかも王妃は子供に好きなだけ愛情を注ぎ続けることができ、オラスは愛情を享受することができた。

それは自分と母親が奪われた幸せだ。

「情けない理由だとは思わなかったのか」

ラスボスが弱々しい声で尋ねる。

「なにを言っているの? シルヴァン様が国王を憎むのは当然よ」

シルヴァン様がようやく私を見た。

「母を亡くしたとき、俺の世界は終わった。大切なひとを失う恐怖は二度と味わいたくないと思った」

私はシルヴァン様のあいた手を握りしめた。骨ばっていて私よりも大きい手。なのに、どこか頼りなく感じる。

「手に入れなければ、失うこともない」泣きそうな顔のシルヴァン様。「傷つけているとわかっていても、不在が耐えられないほど苦しくても、手を取る勇気もない。俺は本当は弱い男だ」

「問題ないわ。あなたの弱点は私が補うもの」

にこりと微笑む。

「魔術師が束になっても抑えられなかったあなたの魔力暴走を、私はひとりで止めたのよ。頼りになるでしょう?」

「そうだな」シルヴァン様のお顔が、少し緩んだ。「俺も、手に入れていなくても世界は終わると知った」

「それなら手中に納めていたほうが絶対にいいわよ」

シルヴァン様が微笑む。

『慈愛の天使』でも、『ラスボス』でもなかった。

とても自然で、幸せそうな笑顔。

「ロクサーヌ、好きだ。俺のそばにいてくれ」

「ええ。私も大好きよ」

引き寄せられ、シルヴァン様と唇が重なる。

キスだわ!

鼓動が早まり、ドキドキする音が大きすぎてシルヴァン様に聞こえてしまいそう。

シルヴァン様が離れ、優しい顔で私をみつめる。

それからもう一度キス。

ちゅっ、ちゅっ、と軽く、何度も角度を変えて繰り返す。

なにこれ。

頭がふわふわするわ……。

それにシルヴァン様が重い……。

寄りかかられて、ボスンと寝台に倒れる。

私の上にはシルヴァン様。

キスを首筋に繰り返される。

なんだかこの状況って……。

「あの、シルヴァン様?」

「ん?」

すこしだけ身を起したシルヴァン様が私を見下ろす。どこか悪そうな、いい笑顔。

「これからは気持ちに忠実でいることにした」

「なるほど?」

シルヴァン様が私は私の頬を撫でながら、

「今まで散々偽り、ロクサーヌを傷つけたからな。こんな俺はイヤか?」と訊く。

でもシルヴァン様がこれからしようとしているのって、アレよね?

頭の中を、『でも淑女として』とか『お兄様が知ったら』とか『まだ朝だけど』とか、いろいろな言葉が駆け巡る。

だけど、些細なことだわ。

私にとって一番大切なのはシルヴァン様だもの。

「そうね。私も本心のほうがいいわ」

シルヴァン様は満面の笑みを浮かべ、再び私にキスをした。