軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第9話 疑念

『SUR 異界迷宮(アナザーワールド・ラビリンス) 』で、 カメーナエ(Camenae) と邪神を閉じ込めたアーミラ、アリアが迷宮を脱出。

元の世界へと帰還した。

カメーナエ(Camenae) と邪神は未だに姿を現さない。

どうやら時間稼ぎが成功しているようだ。

その間にエルフ女王国の港街から住人を全員避難させる。

『SUR 異界迷宮(アナザーワールド・ラビリンス) 』はただの時間稼ぎだ。

カメーナエ(Camenae) と邪神はいつか元の世界へと戻ってくる。

そうなったら周囲を庇いながらの戦いはできない。

港などの物質的損失は『無限ガチャ』さえあれば、あとからどうとでも修復可能だ。

しかし、死亡者はどうすることもできない。

妖精メイド主導で避難を急がせる。

当然、従わない者達も出るが、そういう彼らは気絶させて強制的に避難させた。

住人の避難が終了次第、妖精メイド達もエルフ種港街から撤退する予定だ。

元の世界に戻ってきたアーミラとアリアは、『奈落』最下層へと転移。

『奈落』最下層に帰還すると、僕の指示で執務室に顔を出す。

彼らからも カメーナエ(Camenae) と邪神の話を聞く。

情報は少しでも多い方が良いからだ。

僕は席に座り、メイ、アオユキ、エリーは会話の邪魔をしないように壁際に並び黙って立っている。

ナズナはこの後ある カメーナエ(Camenae) &邪神戦のため休憩を取らせていた。

決して、作戦会議&情報共有の邪魔だからではない。

僕は改めてアーミラ達に向き直り、頭を下げてお礼を告げる。

「突然、難しい仕事をお願いして申し訳なかった。でも、皆のお陰で『女神』を自称する者達を倒す作戦を立てたり、港街から避難させる時間が作れたりできたよ。本当にありがとう」

「何を言っているッスか! ライト様(総長) のカードの力のお陰で、全然危なくなかったッスよ!」

「ですです~」

『奈落』最下層メンバー内でも個性が強いアーミラとアリアが返事をした。

僕は微苦笑を漏らし、二人に問う。

「『SUR 異界迷宮(アナザーワールド・ラビリンス) 』で、迷宮に移動した後、 カメーナエ(Camenae) と邪神に何か変化はあったかい?」

「邪神には特に変化はありませんでしたッスけど、自分達が作戦通り 無限虫(むげんちゅう) とかを解放した後、逃走したんッス。虫達に対処するため邪神の上にいたガキが命令っぽい動きをしたら、口からモンスターを吐き出したッス!」

アーミラが 異界迷宮(アナザーワールド・ラビリンス) での様子を思い出しながら告げた。

僕は続けて質問する。

「そのモンスターは何か変わった様子はあった? 見たこともない見た目だったりとか」

「自分達、逃げるのに集中していたので詳しく見ていたわけじゃないッスけど……。普通のモンスターだと思うッス」

ドワーフ王国が秘匿していた過去文明遺跡を最下層まで攻略した際、邪神のような宗教画を発見した。

その宗教画から推測するに、モンスターが邪神の大きな口から吐き出されているようだった。

(やはりあの宗教画に描かれていたのは邪神だったのか……)

女神教が広めている『世界創造』話――邪神は女神様を愛して、自身のものにしようとしたが大地が塞がって表に出られなかった。だから隙間である暗い穴(一般的にダンジョンの比喩とされている)から、自身の体で作り出した魔物を大地に吐き出す。

という話とも一致する。

(自称女神が邪神を従えている時点で、『世界創造』話もどこまで本当かは分からないけど……)

僕は胸中で溜息を漏らした。

他に気になった点はないかと尋ねる。

アーミラは首を横に振った。

今まで大人しく黙っていたアリアが口を開く。

「たいしたことではないのですが……気になった点として、『女神』を自称している少女が、『SUR 異界迷宮(アナザーワールド・ラビリンス) 』で移動した時、普通に驚いていたんですよ~」

「?」

アリアの意図が読めず、頭上に『?』を浮かべてしまう。

僕だって、突然、『SUR 異界迷宮(アナザーワールド・ラビリンス) 』に移動したら驚く自信がある。

というか大抵の人物が驚くと思うんだけど……。

彼女は説明を続ける。

「なんていうか~……あの驚いた姿が彼女の素で、今の態度が演技っぽい感じがしたんですよね~」

「アリアは彼女、『女神』と名乗る カメーナエ(Camenae) が、演技で『女神』を演じているって言いたいの?」

「はい、そうです、そうです~。さすがライト様々~」

「…………」

彼女のぽわぽわした口調とは裏腹に、なかなかエグイ内容が飛び出てきた。

ナズナ並の頭脳であるアーミラは、『だから、なんだよ? 他者と接する際に態度をかえるぐらい、自分だってするぞ』と言いたげに首を捻っている。

一方、僕と壁の際で話を聞いていたメイ、アオユキ、エリーも顔をしかめた。

(仮にアリアの言う通り、『女神』を名乗っているのが演技だった場合……そうするように彼女に指示を出した存在が居るってことか?)

自称『女神』&邪神に上から指示を出せる人物――正直、僕の頭では想像も付かなかった。

とりあえず、気持ちを切り替えてアーミラ達に声をかける。

「話を聞かせてくれてありがとう。凄く参考になったよ。この後、また出番があるかもしれないから、2人は鋭気を養ってくれ」

「 ライト様(総長) のため、皆のためなら自分、いつでも気合い十分ッス!」

「ではお言葉に甘えてお酒を飲ませて頂きますね~」

アーミラ、アリアの順番にお礼を告げて執務室を出て行く。

三人を見送った後、メイ、アオユキ、エリー達が執務室の机の前に移動する。

内容は当然、アリアの発言についてだ。

「皆はどう思う? 自称『女神』&邪神に命令し、動かしている存在が居ると思う?」

「正直……想像できません」

「にゃ~」

「あくまでアリアさんの印象からの推測でしかありませんから……。ですが無視するには少々気になりますわね」

メイ、アオユキ、エリーが順番に意見を口にした。

彼女達も僕同様、『神に命令できるさらに上の存在など想像もつかない』と考えているが、『ありえない』と却下することができずにいた。

「殺さず、捕らえることができればわたくしが記憶を確認することができるのですが……」

「さすがに今回の相手にそんな余裕はないよ。やはり作戦通り、生け捕りなんて考えず、殺害するべきだろうね」

エリーの一人ごとを僕が否定した。

生け捕りなんて考えて、逆にこちらが痛い目にあっても馬鹿らしい。

「あいつらが異界迷宮から抜け出したら、すぐに作戦を実行する。皆、準備をしておいてくれ」

変な迷いを抱かないように、僕は皆に有無を言わさず、自称『女神』 カメーナエ(Camenae) の殺害を強行したのだった。