軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

7話 竜人帝国側『ますたー』達の最後の切り札

「……ここはボク達の最後の切り札、ダンジョン内部?」

竜人帝国側『マスター』達のリーダー格であるヒロが独り言を漏らした。

ダンジョンコアがある部屋には、ヒロ、カイザー、ヒソミが立っていた。他、ゴウ、 黒(ヘイ) 、ルカン、セスタは居ない。

ダンジョンコアの部屋にはソファー、テーブルセットがあり、壁際には一抱えある複数の玉が設置されている。

規則的に並んでいる玉はマジックアイテムだ。

他にも反対側の壁際には食料(缶詰などの保存食がメイン)、毛布、衣類など長期間、籠城するための備品が木箱に詰められ並べられている。

カイザーは怒りで顔を真っ赤にしながら、ヒロの胸元を掴みあげる。

「おい! ヒロ(エセ王子) ! あの黒髪のガキにいったい何をした!? 何をすればあれだけ恨まれるというのだ! 奴の口ぶりからアークを墜落させたのはあのガキの仕業だ! そんな奴のどんな恨みを買った! 言え!」

「し、知りませんよ! 色々動いていますから、どれが原因かだなんて……ッ」

「貴様はそうやって裏で動くから、余計な者から余計な恨みを買うのだ!」

「お、落ち着いてください、カイザー殿! 今は小生達で争っている場合じゃありませんよ! と、とにかく、落ち着いて現状を冷静に確認しましょう! 冷静に!」

ヒロを締め上げるカイザーに、細目のヒソミは慌てた様子で落ち着かせた。

彼の言い分ももっともなので、カイザーは歯がみしつつも、大人しくヒロを解放し下がる。

ヒロは軽く咳き込みながら、乱れた衣服を直す。

険悪な雰囲気になりかけている空気を払拭するようにヒソミが仕切る。

「とりあえず、現状を冷静に確認しましょう! 小生達が今居る場所は、皆で作った『この星に残した最終手段、籠城することになった場合に篭もる予定の海中ダンジョンのダンジョンコアルーム』ですよね?」

「……ですね。監視用のマジックアイテムボールもありますし、食料、衣類なども壁際に並べていますしね」

ヒロは改めて周囲を見回し、この星に残した最終手段、籠城予定の海中ダンジョン、ダンジョンコアルームに転移したことを改めて確認した。

もし仮に『C』に脱出を妨害され、この星から逃げられなかった場合、ヒロ達はこのダンジョンに籠もる予定だった。

もちろん、彼らはダンジョンに籠城した程度で『C』から逃げられるとは考えていない。

このダンジョンは『C』を倒すための攻撃的ダンジョンとして、長い時間をかけて竜人帝国側『マスター』達が作った最終決戦用ダンジョンなのだ。

では『対C最終決戦用ダンジョン』とは?

別に難しい話ではない。

制圧した海中ダンジョンの一つに竜人帝国側『マスター』達が長い年月をかけて物資を溜め込み、極悪トラップを仕掛け、自分達が戦いやすいフィールドなどを作り出した。

こうすることで、『C』に攻め込まれた際、逆に始末できるよう準備したダンジョンのことだ。

当然、帝国側『マスター』達も『対C最終決戦用ダンジョン』程度で、『C』を始末できるなど考えていない。

無事にこの星からアークで脱出できれば、それが一番よかった。

とはいえ、最悪を想定して『もし脱出できなかったら』の保険を用意するのは当然の帰結である。

何より、この『対C最終決戦用ダンジョン』で『C』を始末できる可能性はゼロではない。

竜人帝国側『マスター』達は、とある部屋に長い年月をかけて、他の攻略したダンジョンコアを収集連結。

『C』が侵入したら、ダンジョン丸ごと吹き飛ばすほどの威力がある『大量のダンジョンコア爆弾』を起爆する予定だったのだ。

もちろん本当に自分達ごと吹き飛ばすつもりはない。

爆発する刹那、自分達のいる部屋を一時的に空間から隔離。ダンジョンそのものに影響を及ぼさないように設定してある。

当然、そんな無茶な仕様を実行した場合、彼らが居るダンジョンコアは魔力を大量に消費。再度、最低限の魔力が溜まるまでまともに機能しなくなる。

つまり、ダンジョンコアを使ってモンスターの追加、罠の再設定などが一時的に不可能になるということだ。

そのリスクを負っても、『C』を始末するため、『大量のダンジョンコア爆弾』を起爆する予定だ。

『C』さえ始末できれば、竜人帝国側『マスター』達に敵はいない。

彼らは『大量のダンジョンコア爆弾』の威力に自信を持っている。

セスタなど暇な時間により強化するため、追加で爆弾を設置しているほどだ。

しかし、それでも『C』を確実に殺害できるとは限らない。

あくまで最終手段、最後の保険である。

カイザーが過去を懐かしむように語る。

「過去文明時代、『C』に襲われた際、富裕層が生き延びるために考えられた思想を余達なりに転用したのだが……」

「カイザー殿から聞いた施設に比べると、『ダンジョンコア爆弾』以外は小生達のは子供の秘密基地程度レベルですけどね」

ヒソミがカイザーの言葉に自嘲し肩をすくませた。

実際、彼らの『対C最終決戦用ダンジョン』思想の元になった過去文明に作られた対C迎撃基地は、このダンジョンの比ではない。

山脈をくり抜き地下深くに都市を形成。

その上に侵入してくる『C』、その配下達に対抗するための自己再生無限兵器、人工モンスター、食料兼迎撃海洋生物などが作られたのだ。

早い話が、ライト達がドワーフ王の要請で攻略することになった『大規模過去文明遺跡』のことである。

ヒロもヒソミに習い自嘲する。

「でも、殆ど『C』に無力で破壊されたらしいじゃないですか。開発途中で放棄されたのもあるらしいですが」

そう、結局、地下都市を造り出せるほどの過去文明ですら、『C』に敵わず、滅ぼされたのだ。

過去に失敗している作戦に自分達の命を懸けるより、この星からさっさと脱出することを選ぶのが当然の選択と言えるだろう。

ヒソミが軽く咳払い。

話を続ける。

「ですがこれはあくまで保険、最終手段、切り札中の切り札。小生達は意図してここに来た訳ではありません。では、どうしてここにいるのか? 答えは一つ。アーク撃墜で、メインコアが壊れ、強制転移が暴走したということでいいんですよね、カイザーさん?」

「……それ以外、考えられぬわ!」

カイザーが心底不快そうに吐き捨て、ソファーに体を投げ出す。

彼は魔術光が光る天井を見上げながら、力が抜け、絶望感が体の底から湧き出てくるのを実感しながら一人漏らす。

「……元々、『C』に追い詰められた際、奴を『対C最終決戦用ダンジョン』に引きずり込むため、アークのコアを自壊。『C』を強制的に『ダンジョンコア爆弾(仮称)』転移。爆発させる計画だった。余達にとって本当に最後の切り札だ。だが、アークのコアさえ残っていれば、まだ再建は可能だった。当然、再び長い時間がかかるがな……。しかし、アークのコアが破壊されたことでもう余達は二度と、この星から脱出するための手段はなくなった。永遠にな」

「「…………」」

つまり、現状、竜人帝国側『マスター』達は、二度と星から脱出することができなくなったということだ。

その現実にカイザーだけではなくヒロ、ヒソミですら、絶望感がジワジワと内部からしみ出すように溢れ出す。

『……………』

暫し、三人の間を沈黙が降り積もった。

カイザーは無言で勢いよく、絶望を振り払うようにソファーから立ち上がる。

「カイザー殿?」

ヒソミの問いに振り返らず、彼は壁際に並ぶマジックアイテムの玉の前に移動しつつ、答える。

「現状は理解した。絶望的だということもな。次に確認すべきは 黒(ヘイ) 達と、アークを破壊した黒髪達だ。あいつらも強制転移に巻き込まれたのは確認している。絶対にこのダンジョンに転移されているのは間違いない。無駄に時間を浪費するより、どこに居るのかまず確認すべきだろ」

「……カイザーさんの言う通りですね。ボクも手伝います」

「小生も手伝いますよ。ただ黙って時間を無駄にしても意味はないですからね」

ヒロ、ヒソミもカイザーに倣い壁際に並べられたマジックアイテムの玉へと移動した。

この玉は少々特殊なマジックアイテムで、とある海底ダンジョンで発見された物だ。

この一抱えはある玉が画面で、小さなビー玉サイズの玉と連動している。

ビー玉サイズの玉に移った画像が、この一抱えはある玉に映るというものだ。

早い話が監視カメラである。

とはいえ画質はあまり良くない。

音声も拾えない。

しかし、ダンジョンコアのお陰で魔力切れを起こさず、壁に埋めるだけで映像を送り続けることができるのだ。

彼らは万が一に備えて『C』の動きを監視するため、ダンジョン各場所にビー玉マジックアイテムを埋め込んでいるのである。

その監視カメラを使って、この場に居ない者達がどこにいるのか探そうというのだった。

では、この場に居ない者達はいったいどうなっているのかというと……。