作品タイトル不明
6話 復讐相手
海中から姿を現し、上空へと逃げる巨大な船、アークを僕達は追いかけた。
途中で僕が『転移』でアーク内部に乗り込もうとしたが、半透明な結界のようなものに阻まれて失敗。
次に『無限ガチャ』カードで攻撃するも、その半透明な結界に防がれてしまった。
このままみすみす竜人帝国の『ますたー』達を宇宙に逃がすなど、ありえない。
なので彼らが宇宙に逃げても追いかけるため、『SUR 宙城』を持ってきていた。
そのカードを追いかけるために使うのではなく、アークの半透明な結界を破壊するために解放した。
元々アークと宙城は同じ物だったらしい。
上昇するアークのすぐ上に、宙城を解放。
距離が近づきすぎるため、アークは回避できず、宙城と激突。
今まで僕の転移、攻撃を防いでいた半透明な結界は、同じ半透明な結界+莫大な質量に耐えきれず飽和。
半透明な結界を突き破り、宙城がアークへと激突し、崩壊、落下を始めた。
幸いなことに竜人帝国首都など、人口密度の多い場所に落ちることはなかった。
宙城+アークは重なりあい、一塊のまま竜人帝国北部山脈を越えて、『奈落』がある無人の森林、海沿い地点へと落下する。
その衝撃で大量の土埃が舞い、大陸全土が振動したような衝撃が広がり、山脈も一部が崩れ落ちほどだ。
さらには振動によって地震のような揺れが起き、可燃物に引火したのか宙城+アークは燃え、飛び火によって森も一部燃え出す。
もちろん、森にこれ以上火が燃え広がらないよう消火活動を指示するつもりだが……。
それより先に僕の胸を暗い喜びが支配する。
「これで逃げる手段を失ったね……さぁ、復讐を始めようか!」
僕は『SR 飛行』の能力で、まっすぐ宙城+アーク落下地点に誰より先に到着した。
落下地点は当然ながら、大きなクレーターになっていた。
「…………」
僕はクレーターの縁に立つ。
気配は七つ。
他は生きている者達の気配はない。
「クソ! クソ! クソがァ! あんなのありかよ、クソがァよォ!」
最初に瓦礫を蹴散らし姿を現したのはドレッドヘアー……恐らくゴウという魔人国側『ますたー』だろう。どうやら彼は、竜人帝国側『ますたー』側に寝返っていたらしい。
額からダラダラと大量の血を流している。
「あ、ありがとうございます、セスタ殿、ルカン殿。小生、一人だったら下手すれば死んでいましたよ」
「僕様ちゃんだって、ルカンさんの助けがなければめっちゃヤバかったんだけど!」
「ですが私達以外は、竜人帝国のお偉いさん達はほぼ間違いなく全滅でしょうね……」
水の膜が弾けて内から三人の男が顔を出した。
最初に口を開いた細目はヒソミだ。以前倒したフレッシュゾンビでの姿しか知らないが、本当にそっくりだ。
右目は眼帯、左腕、右足がぎこちない少年は、ナズナと戦った『ますたー』の一人、セスタだろう。
そんな彼らを水膜で守った男性がミキから聞いた特徴的外見を信じるならルカンだ。
クレーターの中心に近い位置から瓦礫が細切れになって吹き飛ぶ。
黒い影のような男が刀身まで黒い刀を手に立ち、そのすぐ側に頭からつま先までキンキラな男性が激しく咳き込み瓦礫の上に立つ。
「げほごほ! おい! ごほ! 余が長年かけて修理したアークがどうして墜落する!?
飛行システムはアホほどチェックしているから故障などありえぬぞ! だいたい、さっきのフィールド飽和現象や巨大質量など、いったい何が起きているんだ! 誰か説明しろ!?」
「…………」
ゴールドのようにキンキラの男性は咳き込みながらも、怒鳴り散らしていた。
彼の側にいる頭からつま先まで黒い男性は、アーク墜落より僕を心底警戒していた。
キンキラがカイザーで、その彼の護衛者のような黒い男性が 黒(ヘイ) だろう。
どちらも僕のある意味、目的の人物ではない。
(まさか宙城とアークの落下で死んだのか……いや、気配はあるし、鑑定したわけじゃないけど、あの中で一番レベルも高そうだったしそれはないか)
僕が復讐相手の心配をしていると、一部燃える瓦礫の中から目的の人物が姿を現す。
彼は軽く咳き込みながら、炎のダメージなど一切ない様子で仲間達と合流する。
「けほ、こほ……あ、ありえませんよ。新品のように綺麗なアークがもう一つ、ボク達のすぐ上に出現するなんて……。あの少年はいったい何をしたんですか?」
「……みつけた」
周囲は未だに飛びした火によって森が燃えている。
その中で僕は、姿を現した彼を目にして喜びで無意識に呟いてしまう。
姿を現した男性――彼は 人種(ヒューマン) で、これから舞台で王子役でもやるかのように華美な衣装を身に纏っていた。落下に巻き込まれて若干薄汚れてしまっているが、それでも一般的な 人種(ヒューマン) がそんな衣装に袖を通したら衣装負けしてしまうだろう。しかし彼は負けるどころかあつらえたように似合っていた。
顔立ちも整い女性と間違ってしまうほどの美形で、背も高く、衣服の上からでも分かるほど無駄な脂肪がないスラリとした体型をしている。
人種(ヒューマン) 王国のリアル王子であるクローと彼が並び、『どちらが 人種(ヒューマン) 王国の王子か?』と質問したら、100人中100人がヒロを『 人種(ヒューマン) 王国の王子だ』と断言するだろう。
ミキから聞いた情報通りなら、彼こそがヒロ、僕の両親を殺し、村を滅ぼした人物。
アークのバルコニーでも姿を見ていた。
彼がヒロで間違いない。
『!?』
僕の呟きは、燃えさかる炎などによって本来なら聞こえるはずがない。
しかし、彼らはこの呟きを耳にしたかのように、クレーターの縁に立つ僕に気づき視線を向けてくる。
怯え、恐怖、驚愕、警戒心など複数の視線を向けられた。
現在、僕はいつも被っている『SSR 道化師の仮面』とは違うデザインのを被っている。
顔バレしないための処置だ。
そんな仮面の下で僕は壊れるほどの笑顔を作ってしまう。
僕はヒロに視線を固定し、再び口を開く。
「ようやく会えたね。貴方が僕の故郷を滅ぼした『ヒロ』っていうんだよね?」
『…………』
ヒロ以外のますたー達が、彼に思わず視線を向けた。
『ヒロ、故郷を滅ぼしたって、オマエ、こいつに何をしたんだ!?』と彼らは無言で思わず問い質してしまう。
ヒロ自身、『!? 故郷を滅ぼしたって何の話!?』と困惑の表情を作る。
僕が彼のそんな態度に苛立ち、声を荒げようとするが、
「お一人で突然、突撃するなんて!」
「にゃ!」
「しかし、さすがですわ! あのような方法で逃げるアークを空から落とすなど!」
「ご主人様! あたい、ご主人様の役に立ったか!?」
メイが怒り気味に、アオユキも彼女に同調し、エリーが褒め、ナズナが褒めて欲しそうに声をあげていた。
彼女達は、僕の後を先行して追いかけてきたようだ。
視線を向けると、レベル7777、他の者達が後に続いている。
メイ達はレベル9999のため、誰より速くこの場に駆けつけることが出来たらしい。
僕は『ますたー』達から、心配して側に来たメイ達に声をかけるため、視線を向ける。
「ごめん、どうしても彼らを逃がす訳にはいか――!?」
しかし、台詞を途中で止めてしまう。
クレーターを中心に巨大な魔法陣が姿を現したからだ。
『ますたー』達側の攻撃かと、彼らに視線を向けるが、
「!? ば、馬鹿な! これは最後の切り札だぞ! どうして勝手に!? 落下の衝撃で誤作動」
発言からアークを飛行できるまで修理したらしいカイザーが、困惑と原因の予想を口にするが、途中で物理的に遮られてしまう。
視界が眩しくなり、僕は反射的に腕で顔を覆ってしまう。
「…………」
光が収まり、腕をゆっくりと下ろすと……。
そこは燃える森の中ではなかった。
天井、床、壁、全てがごつごつとした洞窟のような場所へと移動していたのだった。