軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

26話 ライトvsドラゴ4

メイ、アオユキに協力してもらい『 神葬(しんそう) グングニール』を再度封印。

右腕だけではなく、カードの力で体中についた傷を癒やす。

当然、僕だけではない。

『終末の槍』を破壊したドラゴの傷もカードで癒やす。

血が止まり、真っ青だった顔色は、カードで癒やされたお陰で『顔色が悪い』程度に収まる。

メイが簡単ながら床に倒れているドラゴの診断をする。

「……体力は消耗していますが、脈拍、体温、顔色も問題ありません。許容範囲です。命に別状はありません」

「ありがとう。メイがそういうなら問題はなさそうだね」

メイは基本なんでもこなすことが出来る。

彼女が言うなら、本当に問題はないのだろう。

「一応念のため、『奈落』最下層に戻ったら、改めてエリー辺りにチェックしてもらおう。『すぐに死にました』では意味が無いからね」

「にゃ」

『 神葬(しんそう) グングニール』で灼けた右腕にメイの『 魔力糸(マジック・ストリング) 』で応急処置している僕の台詞に賛同するようにアオユキが鳴く。

「僕達の方は無事にドラゴを確保できたけど……。他はどうなっているんだろう?」

「特に時計屋の所が心配ですね。ウルシュが向かっているので大丈夫だとは思うのですが……」

「にゃ~」

僕達は無事に戦いを終えると、他『巨塔』地下訓練場の戦いがどうなったのか気に懸けた。

「うぅッ……」

僕達の会話がうるさかったのか、ドラゴがうめき声を上げて、瞼をゆっくりと開く。

彼は直接床に寝て、僕達が見下ろす形になる。

彼が目を覚ましたことに気づくと、その場で膝を突き、安堵の笑みを零す。

「ドラゴ、どこか命に関わるような不調はあるかい? 治癒はしたんだけれど、『終末の槍』の影響が残っているかもしれないからね……」

「ライト……」

彼は僕の姿を見つめながら、口を動かし名前だけを呼ぶ。

暫くして、彼は僕から視線を外し、『巨塔』地下訓練場の天井を見上げた。

見上げながらぽつぽつと語り出す。

「……『終末の槍』に意識を奪われ、途中から自分で自分を止めることが出来なくなっていた。槍に自分の命を吸われているのを自覚しながらだ。しかしそれでも体はいうことをきかず、このまま死んでしまうと思ったが……」

ドラゴは天井から改めて僕へと視線を向け、恥ずかしそうに笑う。

「まさかライトが助けてくれるとは、な。ライトが助けてくれなければ俺自身、確実に命を落としていただろう。本当に助けてくれてありがとう」

ドラゴは 竜人(ドラゴニュート) 種、『種族の集い』の元パーティーリーダーとしてではなく、ドラゴ自身の素直な気持ちで助けてくれたお礼を口にしてくる。

僕自身、彼の真っ直ぐな気持ちに応えるように素直な自分の気持ちを吐露する。

「気にしないで――だって、あのまま死なれたら、ドラゴに対して僕が復讐出来なかったからね。そんなの僕自身、絶対に許せないから『終末の槍』を破壊しただけだし。お礼を言われるほどではないよ」

「……うん?」

ドラゴは僕の返答を耳にして『言葉は通じているが、内容が理解できない』と言いたげに小首を傾げた。

彼は暫し、僕の発言を脳内でかみ砕き、理解しようとする。

「……ライト、俺を助けたくて、あれほどの労力を払ってくれたんじゃないのか?」

「……助ける? ああ、ある意味そうだね。だってあのまま死んだら、ドラゴに死よりも深い苦しみを与えることができないからね。簡単に楽に死なせるなんて絶対に許されないよ」

僕は笑顔で答えて続ける。

「ドラゴには約三年前、偽『ますたー』だからと殺そうとした復讐を身体、心にしっかりと刻みつけないと僕の気が済まないからね。だから、無茶をして『終末の槍』を破壊したんだから」

「ッッッ!?」

ドラゴがようやく現在、置かれている自身の立場を理解したのか、顔色が『終末の槍』で負ったダメージとは違う意味で青くなった。

彼は慌てて立ち上がり、出口から逃げだそうとするが。

「ぐぅぅぅッ!」

『終末の槍』でレベル9999の僕と互角に戦うため 増幅強化(ブースト) された反動で上手く立ち上がれず、再度倒れてしまう。

体中の傷はカードで治癒したが、 増幅強化(ブースト) された反動までは癒やされていなかったようだ。

僕としては都合がいい。

僕は心底の笑顔で、再度倒れたドラゴの顔を覗き込む。

「これでみんな揃ったよ。元『種族の集い』のみんなが。ガルー、サーシャ、ナーノ、ディアブロ、みんなが地下でドラゴを待っているよ。僕の復讐を身体、心に刻まれながら、死にたくても死ねない責め苦を受けながらね。これでみんな一緒だよ。もうどこにも逃がしたりしないから」

「ッゥ!?」

ドラゴの顔色がより悪くなる。

まるで『自らの死を悟った囚人』のような顔色の悪さだ。

ドラゴがたまらず叫ぶ。

「ふ、ふざけるな! 助けてくれたんじゃなかったのか! どうして責め苦をうける話になるんだ!」

「どうしてって……僕が受けた裏切りの絶望をドラゴ、みんなにも味わわせるために決まっているじゃないか。そのためにあんな武器程度でドラゴを楽に殺させないため、僕自身、危険を顧みずに働いたに決まっているだろう?」

『どうしてそんなことも分からないのか』と僕は言外に含む。

ドラゴは立ち上がることは出来ないが、頭のおかしい怪物から少しでも逃げるように、床を這ってでも距離を取ろうとする。

「化け物! 化け物が! 狂った頭のおかしい ヒューマン(劣等種) め!」

「ドラゴ、みんなが待っているよ。さぁ、一緒に行こう」

「離せ! 離せ! 離せえぇぇぇぇぇぇぇええぇえぇぇぇッ!」

僕は這ってでも逃げようとするドラゴの片足首を掴むと、出入り口に向かって歩き出す。

今の僕はまるで高原の爽やかな青空の下で歩くような清々しい気持ちで、『奈落』最下層へ向かって歩き出す。

現在、転移阻害が働いているためまずはエリーと合流して、状況の確認をしよう。

他の者達の戦いが終わっているのなら、転移カードを使って『奈落』最下層――みんなが居る場所に戻ろう。

僕の後をメイ、アオユキも笑顔で続く。

「おめでとうございます、ライト様。ようやく全員捕らえることが出来ましたね」

「にゃにゃにゃ!」

「ありがとう、二人とも。『種族の集い』のみんなを捕らえることが出来たのもメイ、アオユキ、他皆のお陰だよ」

「離せ! 許して! 離してくれッ! 悪かった! 殺そうとして悪かったから……ッ!」

僕は笑顔で二人に返事をした。

ドラゴは床に爪を立てるが、当然、抵抗など無意味だ。

真っ白な床に10本の赤い線が生まれる。

ドラゴが必死に抵抗する証だ。

「嫌だ! 折角助かるはずだったのに! どうして死よりも苦しい痛みを受けなくちゃならないんだ! なら、あの時、殺してくれればよかったのに! 嫌だ! 離せ! ライト! 離してくれぇぇぇぇぇぇぇッ!」

今まで生きてトップ5に入るほどの清々しい気持ちで、エリー達と合流するため、出口へ向かって歩く。

その際、響き渡るドラゴの悲鳴を聞くたびに、僕の気持ちはより清々しい、晴れ晴れとなっていくのだった。