軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

23話 11人目のマスター?

「魔人王国の城が、僕らが手を出す前に吹き飛んでいる?」

『はいですの。光が空に上った後ほぼ同時に、内側から粉々に吹き飛んでしまいましたわ。その後、王城跡の地下から人種らしき男が這い出て来たのですが、怪我も無く暴れ回っていて……』

『奈落』最下層の執務室でエリーからの報告を待っていると、彼女から念話が届く。

『予想より随分と仕事が早いな』と内心で思っていると、彼女から先程のような念話が報告された。

他にもエリーの念話報告が届く。

地下瓦礫から這い出た人種は手足に黒い霧のようなモノを纏わせて、理性のない獣の如く暴れ出す。

接近するのは危険と判断して、遠目から鑑定で確認したが名前、職業などが バグ(狂) っていて読めないが、レベルは9999であることを確認。

称号は他と同じように表記が狂っていて、『■神』や『■り神』と表示されている。彼の暴れる様子から、エリーの推測になるが『狂神』や『祟り神』的な表示になるのではないかと付け足す。

(魔人国に僕達同様レベル9999が居たなんて……。魔人国王城を吹き飛ばしたというのなら、こいつが僕の故郷を滅ぼした人物か?)

その考えにすぐさま首を横に振る。

エリーの言葉から推測するに、彼は暴走している状態だ。

レベル9000を超えているが、仮に僕の故郷を滅ぼした相手だとしたら今まで大人しくしていた意味が分からない。

次に『彼もますたーなのか』という疑問が湧く。

だが、以前、ミキに尋ねた際、『魔人種側に5人、竜人種5人の計10人でダイゴちゃんは殺されちゃったんでしょ? だからミキィが知る限りではこの世に9人しか「マスター」は居ないかなぁ?』と口にしていた。

暴れている彼が竜人種側の『ますたー』の可能性もあるが……。

情報が不足し過ぎて、何とも判断が付かない。

「エリー、今暴れている彼の情報はギラやドクの記憶にはないかな?」

「申し訳ございません。大罪人ドクに関しては自身の研究にしか興味がなかったらしく、たいした情報はありませんでしたわ。ギラに関しては興味深い情報はありましたが、彼に関することはさっぱりですの」

「興味深い情報?」

「はい、現状とはまったく関係の無い『C』というものに関する情報ですわ」

エリーが手短に『興味深い情報』の内容を伝えてくる。

ギラが所持していた情報は『C』に関するモノだ。

竜人側『ますたー』達は『C』という存在を敵視しているが、絶対に勝てない事を理解しているため、『プロジェクト・A』という計画を立てている。

『プロジェクト・A』は『C』から逃げる計画だ。

だが魔人国側『ますたー』であるギラはそんな強大な『C』を自らの手で切り裂き、打倒したらどれだけ気持ちいいだろうと考えていたとか。

ギラ自身、彼の切り札である『 愚者の坂道(フール・スロープ) 』を使えば、たとえ『C』といえど殺害できる自信を持っていた。

故にギラ自身が『C』を殺害したら、逃げようとしていた竜人側『ますたー』達がどんなマヌケ面を晒すか楽しみにしていたらしい。

(確かに興味深い情報ではあるが、今は関係がない内容だな……)

エリーからの情報を聞いて、僕も彼女同様の意見を抱く。

話を聞き終え数秒ほど考え込み――決断を下す。

「エリー、暴れている彼に手を出さず暫く待機していてくれ。僕はこれからミキに話を聞きに行ってくる。彼女なら何か情報を持っているかもしれないから。もし暴れている奴が襲いかかってきたら、すぐに逃げてくれ。情報も無しにレベル9999に挑むなんてしたくないからね」

『畏まりましたわ。では距離を取りとにかく監視しておきますの』

僕の指示を聞くと、エリーはすぐさま自分の役目を理解する。

監視はエリーに任せておけば大丈夫だろう。

念話を切ると、僕は現在魔人国首都で暴れている男の正体を探るため、知っているだろう人物――ミキとのアポイントメントを取るよう妖精メイドに指示を出す。

☆ ☆ ☆

「えっ、嘘!? 魔人国の首都でレベル9999が暴れてるって本当なのぉ!?」

「その口ぶりからだと、やはり何か知っているんだね」

アポを取ってすぐ元魔人国側『ますたー』であるミキが居る『奈落』最下層独房越しに話をする。

本来であれば礼儀として独房から出し、ちゃんと場を整えて話を聞きたいが、今はその時間すら惜しい。

ミキの態度から、彼女が何か情報を持っているとすぐに理解した。

彼女は独房の扉、上部が一部鉄格子になっている部分から顔を覗かせつつ、自身の中で情報を整理し出す。

「まさかアレを出すまであの ヴォロス第一王子(自己中王子) を追いつめるなんて……。それってつまりドクはともかく、 ゴウ(リーダー) も分かる形で倒したってことでしょ? ふ~ん、まさかあのリーダーまで倒すなんて。ミキィ、ライトちゃん達の評価を低く見積もり過ぎていたかも。評価を修正してあげないと駄目ねぇ……」

「…………」

こちらが聞いているのを理解しつつ、ミキはぶつぶつと呟く。

情報整理を終えると、にっこり笑顔を作りつつミキが声をかけてくる。

「現在、魔人国首都で暴れているレベル9999の男でしょ? 予想が当たっていればミキィ、そいつのこと知っているよぉ」

「ミキが知っているということは、やはりそのレベル9999は『ますたー』なのか? でも、ミキは以前言っていたよね」

彼女の発言を思い出しつつ、口にする。

「『魔人種側に5人、竜人種5人の計10人でダイゴちゃんは殺されちゃったんでしょ? だからミキィが知る限りではこの世に9人しか「マスター」は居ないかなぁ?』って。もしかしてあれは居ないはずの11人目の『ますたー』なのか?」

「ライトちゃん、それは正確じゃないよ。それじゃまるでミキィが嘘をついていたようじゃない。でも、ミキィも誤解させるようなこと言っちゃったしねぇ。う~ん、今回は対価無しでもいいかな? 情報は情報でもちょっと笑い話に近いしぃ」

ミキは1人納得し、意地の悪い笑みを作った。

「ミキィは確かに『魔人種側に5人、竜人種5人の計10人で~』とは言ったよ? でもその後に『他に復活してなければだけどぉ』とも言っていたよね?」

「なら、やっぱりアイツは復活したばかりの『ますたー』ってことか!?」

僕の驚きの声にミキは可笑しそうに笑う。

「ぷふふふ……もっと正確に言うなら魔人国がずっと『C』様と勘違いして復活の方法を捜していた偽『C』様だよ」