軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

13話 疑惑

「この裏切り者がぁぁぁぁぁぁぁあッ!」

「……ッ!?」

魔人国第一王子ヴォロスの怒声が魔人国首都王城執務室に響き渡る。

怒声を浴びせられたディアブロは萎縮してしまう。

ヴォロスから『急報あり』とディアブロに一報が届き、彼は急ぎ魔人国首都王城へと向かった。

ディアブロ自身、『急報あり』の内容に予想が付いていた。言い訳をするためヴォロス王子に連絡し出向く予定だったが……。それより早く呼び出しを受けてしまったのだ。

執務室に顔を出すと、席で座り仕事をしていたヴォロスが血相を変えて先程のようにディアブロに怒声を浴びせた。

ではなぜディアブロがヴォロスに怒鳴られているのか?

ヴォロスは座っていた椅子から立ち上がり、机にあった手紙を掴むとディアブロへと詰め寄る。

「『巨塔の魔女』と繋がった国家の裏切り者め! よくも我の前に姿を出せたものだな!」

「ご、誤解ですヴォロス様! ミーは魔人国を裏切ってなどおりませんー!」

「ならこの手紙はどういうことだ!」

ヴォロスは手に持っていた手紙を突きつける。

ディアブロも手紙を読まずとも、同じ内容の物を受け取っていた。

この手紙は魔人国兵士達が賊に扮して人種王国の村を襲おうとした際、メラがわざと一部逃がした魔人国兵士達に託した手紙だった。

逃がされた者達の共通点は……少しでもディアブロと縁を持つ者達である。

ディアブロの領地に親戚が住んでいる、ディアブロに士官している者と友人同士、兄嫁の実家がディアブロの領地にある等……本当に縁ともいえない縁があれば危害を加えるどころか、手厚く保護され食料、飲料水、高級ポーションや多額の金銭まで渡され解放された。

その際、ディアブロ宛の手紙と一緒に、『「巨塔の魔女」様からの伝言で、ディアブロ閣下には是非とも「成功した暁にはくれぐれもよろしく」とお伝えしくれ云々』と言われたらしい。

では縁を持たない者達はどうなったのか?

無事だった者達の証言によれば――ディアブロと縁を持たなかった者達は、身長が2m前後ある美女が文字通りその場で生み出した怪物によって、生きたまま筆舌に尽くしがたい苦痛を与えられて喰われたらしい。

無事だった者達はその光景を見せられ、強いショックとストレスなどから年齢以上に歳をとった見た目になったり、精神に異常をきたす者達が続出している。

そんな生き残った彼らは再び山を越えて魔人国に戻り、律儀に伝言と手紙を届けてきたのである。

当然、ディアブロとは薄い縁しかなく、全員が全員彼に手紙を届けられる訳ではない。代わりに軍部からヴォロス第一王子に届くことの方が多かった。

ちなみに手紙の内容はというと――『以前、会って約束した通り、自分達「巨塔の魔女」と手を結び、ディアブロが魔人国国王になった暁には、「巨塔」を国家として認める声明を出して欲しい云々』や『 人種(ヒューマン) 絶対独立主義の容認』、『同盟関係を結ぶ密約は有効か』などについて書かれてあった。

当然、ディアブロは『巨塔の魔女』と会ったこともなく、『魔人国国王になりたいから、彼女達の協力を得るため条件を呑む』なんて話をしたこともない。

しかし、人種王国第一王女だったリリスがシックス公国会議で『巨塔の魔女』の力を得て現国王を引きずり下ろし、自身が女王として即位した。

本来ならば『魔女が協力した程度でどうにかなる筈がないだろ』と鼻で笑える内容だったが、実際に人種王国は魔女の力を借りて王の交代を果たしているのだ。

実例がある以上、ヴォロス第一王子が危機感を覚えるのは避けられなかった。

これに対してディアブロは本気で身に覚えがないため、青い顔で必死に否定する。

ここできっちり否定しないと自分の立場どころか、領地没収、反逆者として汚名を着せられ処断されてしまうからだ。

「その手紙は本当に知らないのですよー! 恐らく魔女がミーを嵌めるため、魔人国に不和をもたらし分裂、弱体化を狙った卑劣な奸計に決まっていますー! ミーは常に魔人国に忠誠を捧げておりますからー!」

「……本当か? だがオマエはシックス公国会議が始まる前に自領へと舞い戻っていたな……。あれは会議に『巨塔の魔女』が来ると知っていたからじゃないか? だから、会議で顔を合わせてボロが出ないように理由を付けて会議を抜け出したのではないか!?」

「違い、違いますー! 本当に顔を合わせたことも、話したことも何もありませんからー! どうか信じてくださいー!」

ディアブロは必死に自身の無実を訴える。

しかし、ヴォロス第一王子の疑惑は晴れない。

「本当に魔女とは顔を合わせていないのか? ならなぜ人種王国の懲罰として魔人国兵士を賊に見せかけ、人種王国領内にある村を襲わせ、警告を与える作戦が一度も成功していないのだ? オマエが裏から忌々しい魔女に我々の情報を売っているのではないか!? 確かオマエの領地は、人種王国への密入国のために登る必要がある山々の近くにあったな……。これはただの偶然なのか!?」

実際は、メラ自身の力で山中を監視しているだけだ。

ディアブロからの情報は一切受け取っていないが……それを証明する方法はない。

まさに『悪魔の証明』である。

もしこの場にライトが居れば、復讐対象のディアブロが苦しげな顔で必死に言い訳をする様を見て笑っただろう。

わざとディアブロと薄くでも縁のある者達を解放、手厚い待遇をし、手紙を預けて返すことで、魔人国の王族から疑惑の目を彼に向けさせているのだ。

これは手始めに過ぎない。だが、魔人国で貴族にまでなったディアブロにとって、その地位を失うかもしれないということは、心の底から恐ろしいことだ。

狙い通りヴォロス第一王子はディアブロを裏切り者扱いして、王城へと呼び出し、詰問を繰り返す。

その後もディアブロは必死に言い訳を並べるがヴォロスは耳を貸さず『裏切り者』、『売国奴』、『祖国を売ったクズ』などと罵る。

完全に疑心暗鬼に陥っているヴォロスは一通りディアブロを罵ると、『巨塔の魔女』との繋がりがないと疑いが晴れるまで、暫く首都での謹慎を命じた。

ディアブロは了承するしかなく、青いやつれた表情で部屋を追い出された。