軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

2話 状況確認

「ディアブロの動きが活発になっている?」

『奈落』最下層、執務室。

僕はシックス公国会議を終えて、人種王国へ転移で移動後、『奈落』最下層へと戻ってきた。

戻ってきて一〇数日後――僕はメイから書類を受け取り、内容にざっと目を通す。

メイは黒髪のポニーテールを尻尾のように揺らし、報告を続ける。

「はい、魔人国に出入りしている魔人種商人と、事前に潜り込ませた 私(わたくし) 共の手の者達からの情報です。他にも魔人国上層部が動きを活発にしているとか」

現在、魔人国には 恩恵(ギフト) 『無限ガチャ』カードから顕現した商人達が潜り込んでいた。

彼らの他にも、魔人国と他国を行き来している魔人種商人からも情報を仕入れている。

本来であればモヒカン冒険者達も魔人国内部に入り込み、情報収集してもらう予定だったが……。

シックス公国会議でリリス女王が誕生した結果、会議中に魔人国第一王子ヴォロスが人種王国を敵視するような態度を取り、人種王国との関係性を見直すと言及。

結果、魔人国側の人種入国が厳格化されてしまう。

その煽りを受けてモヒカン冒険者達が入国に失敗してしまったのだ。

(入国失敗に落ち込んでいたから『気にしないで』と励ましていたけど……。彼らは元気でやっているかな)

モヒカン達に限らず、『奈落』メンバー達は責任感が強いため、思い詰めないか少々心配である。

だが彼らの心配ばかりはしていられない。

メイの報告に意識を向ける。

「恐らく魔人国はシックス公国会議でメンツを潰されたのと、人種王国の完全な独立に反対しており、横槍を入れるための行動を起こすと予想できます。魔人国上層の動きが活発なのは何かしら、人種王国に対して悪意有る行動を起こすための準備かと。ディアブロに関しては情報が少なすぎてやや判断できかねますが……」

「ディアブロも一応魔人国の貴族、子爵だったかな? だから、お国のために忠誠心を見せるため動いている可能性もあるんだろうけど……」

メイの指摘通り情報が足りないため断言できない。

「ディアブロをもっともっと苦しめるためには、彼のより詳しい現状を知るべきだ。ディアブロと魔人国上層部、どちらの情報もなるべく多く手に入れるように指示を頼むよ」

「畏まりました」

メイがお手本のように一礼する。

彼女のポニーテールが揺れるのを見てふと思い出す。

「魔人国の情報といえば今、人種王国側――リリスから何か情報は入ってきていないのかな?」

公国会議で獣人連合国、 竜人(ドラゴニュート) 帝国、エルフ女王国、ドワーフ王国、魔人国から過半数の賛成を得てリリスが新たに人種王国女王へと就任した。

その中で最も反対したのは魔人国だ。

ヒューマン(劣等種) と人種を見下しているプライドが高い彼らが、その後何もせずに傍観しているとは考え辛い。

故に人種王国側は何かしら魔人国の情報を得ていると考えたのだが……。

メイは記憶を確認しつつ、首を振った。

「……いえ、アオユキ経由でもそれらの報告はまだ届いておりません。露骨に反対していた実兄に対する今後の扱い、帰国した元国王の処遇、即位後の掌握などに手を取られていて、魔人国の相手などしている余裕が物理的に無いのではないでしょうか?」

「それは……ありえそうな話だね……」

竜人帝国と魔人国の間者を、一族ごと自国から追放。

その中には人種王国上層部でもより高い地位につき、内部に食い込んでいる者達も居た。他にも武官、文官関係なく色々な部署の人材が居たが、竜人帝国と魔人国の間者の関係者は全て国外に追放したのだ。

手が足りず、 恩恵(ギフト) 『無限ガチャ』カードから出た人材を大量に入れもした。

それでも手が足りず他国の情報など気にしている余裕が無くなっている可能性は十分考えられる。

「……ちょっと連絡をして、どうなっているか確認してみようか」

知らない仲ではないため、リリスの事が心配になり面会の約束を取り付けるため『SR、念話』カードを使用した。

リリスに直接ではなく、ユメ(偽)経由で連絡を取る。

☆ ☆ ☆

「ダークさま、ようこそいらっしゃいました。せっかくおこしくださったのに、このようなばしょでのおうたいになってしまいまことにもうしわけありませんわ」

「あ、はい、気にしないでください……」

ユメ(偽)に連絡を取り、リリスの都合が良い日時を確認した。

直接、リリスに尋ねるような不作法なマネはしない。

ユメ(偽)を通して面会日時を取り付け、冒険者ダークとして人種王国首都、居城――城というよりちょっと大きめの屋敷程度の規模だが、その執務室に案内される。

リリスは執務室机に座り、目を充血させ、濃いクマを作って呂律がやや回っていない舌で歓迎の言葉を告げた。

その間も、席から立つ気力もないのか、座ったままで山のように詰まれた書類対応をし続けていた。

僕は思わず尋ねてしまう。

「り、リリス様……失礼ですが、ちゃんと睡眠はとっていらっしゃいますか? 顔色が非常に悪いようですが……」

「すいみんってなんでしたっけ? ……ああ、ねむることですか……みっかすぎたらかぞえるのをやめてしまったんですよね。でも、だいじょうぶです。ねむけなんてあるいってんをこえるとふきとびますし、おちつくまでこうきゅうぽーしょんをのみつづければねなくてもしょるいたいおうできますから」

触れただけで死にそうな儚い笑顔で断言する。

元国王を廃して、実兄を強引に押さえ込み監禁、他国間者の一斉追放などしたため、急ぎ足場を固める必要があるのは理解できるが……いくら何でも無茶し過ぎだろう。

僕は『SSR、道化師の仮面』下でドン引きしながら、懐を漁る。

(何よりこのままじゃまともに会話も出来ないからな……)

僕は一枚のカードを取り出し、 解放(リリース) する。

現在、執務室に僕、ネムム、ゴールド、ユメ(偽)、リリスしかいないため問題はない。

リリスが不思議そうに僕の手に収まる瓶を見つめる。

「? ダークさま、それは?」

「不眠不休薬です。これを一粒飲めば、1日寝なくても問題なくなります。健康に害もありません」

『SSSR 不眠不休薬』

瓶に収まった粒状の薬で、1粒飲めば1日寝なくても良くなる。

睡魔も訪れなくなる薬だとカードには説明が書かれてあった。

健康に害もないため、今現在もっともリリスに必要なアイテムだろう。

「とりあえず、これを一粒飲んでください。ユメ、頼む」

「お任せください」

ユメ(偽)が僕から『不眠不休薬』を受け取ると、リリスへと近付く。

リリスはそんなユメに対して今にもふっと消えてしまいそうな笑みを浮かべる。

「だいじょうぶですよ、だーくさま。ひとはねなくてもしょるいしごとができるんです。わたしがそれをしょうめいしていますから。たまにしかいのはしでぴんくのごぶりんが、どどめいろのおーくとだんすしているのをみるぐらいでむしろふだんよりからだがかるくなってそのままめがみさまのもとへたどりつけるようなきぶんになるんですよ」

「姫様、いいですからダーク様から頂いたお薬を飲みましょうね」

リリスの意味不明な台詞を聞き流しつつ、ユメ(偽)が『不眠不休薬』を飲ませようとする。

僕は、リリスの台詞を聞いて『もっと早く様子を見に来た方がよかったな……』と若干後悔してしまう。

僕がもっと早く来るか、先に『SSSR 不眠不休薬』を渡していれば、リリスに『ピンクのゴブリンが、どどめ色のオークとダンスしている』なんて幻覚を見せずに済んだのに……。

(ていうかピンクのゴブリンとどどめ色のオークってなんだよ)

僕はリリスの見た幻覚に内心でドン引きしてしまったのだった。