軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編7 幸運探し

「クソ! どうしてメイド長は認めてくれないのだ!」

「ケケケケケケ! そりゃ当たり前だろ。休日とはいえ、ウサギの足を集めるため地上に上がりたいとか、そんなことが認められる訳ないだろうが」

夜、いつもの食堂ではなく、今回は『奈落』最下層を預かるメイド長メイの愚痴を漏らすため、アイスヒートは自室に親友のメラを招待して紅茶とお菓子を振る舞っていた。

テーブルには『奈落』最下層売店で買った夜に食べるにはカロリーが高そうなチョコ菓子、バターたっぷりのクッキー、油で揚げたポテトなどが置かれている。

アイスヒートの愚痴にメラが呆れたようにツッコミを入れた。

彼女の言葉に、アイスヒートは反論する。

「そうは言うが、現状を変えるために幸運の証らしいウサギの足を集めたいだけなんだぞ? しっかり書類も準備して提出したのに、何が駄目だったんだろうか?」

「ケケケケケ! 全部駄目なんだよな……。レベル7777のアタシ達がそんな理由で地上に出られる筈がないだろが」

メラは頭が痛そうに思わずこめかみを押さえてしまう。

さらにウサギの一件だけではなく、別件にもツッコミを入れた。

「ケケケケケ! しかもゴールドに相談して、部屋を黄金色に染めようとしたらしいな。黄金色に塗るんじゃなくてガチの金箔を張り付けようとしたって……。いつも飄々としているあのゴールドがマジトーンで止めたって聞いた時には、自分の耳を疑ったぞ」

「黄金は幸運を呼び寄せると聞いて、『ならば本物の黄金で部屋を塗り替えれば確実に運気は上昇、さらに集めたウサギの足も合わされば絶対に幸運になる』と思ったのだが……」

メラがその2つが上手くいった際のイメージをする。

金箔が張られた黄金の部屋に、ウサギの足がみっちりと飾られる……ユメやナズナが目にしたらガチで泣き出すレベルだ。

想像しただけで、より頭が痛くなる。

なぜこれほどアイスヒートが運気を気にするようになったのか?

少し前に、魔人国マスターであるミキが『巨塔』に侵入。

ライト達に代わってアイスヒート、メラ、スズが戦おうとしたが……ミキがスズに一目惚れし、『巨塔』に亡命することになる。

アイスヒートはエルフ巨塔討伐以降、ドワーフ王国、獣人連合国などでまったく出番が無かった。

そのため、対ミキ戦は敬愛するライトにアイスヒートの忠義を示す場になるはずだったが……。

あっさりとミキに亡命され(と言っても行き先は牢屋だが)、アイスヒートの意気込みが空回り。

以後、『自分は運が悪いのでは』と悩み、運気を気にするようになってしまったのだ。

メラは溜息を吐きつつ、フォローを口にする。

「ケケケケ! アイスヒートの悩みは理解できるが、いい加減気にし過ぎじゃないか? たまたま間が悪かっただけで、気にするほどじゃないだろ」

「メラはそういうが……気になるモノは気になるんだ……」

アイスヒートが肩を落としつつ、カップの縁をなぞる。

第三者からすれば大したことが無い悩みでも、本人にとっては切実というのはよくある話だ。

こればっかりは第三者が外から口を出しても、納得するようなモノではない。

肩を落としていたアイスヒートが顔を上げ、欲望に濡れた瞳で告げる。

「だから今度は猫が幸運を運んでくると聞いたんだ。『奈落』で最も猫っぽいアオユキ様にお願いして、アイスヒートの自室に寝泊まりしてもらおうと思うんだがどうだろうか?」

「ケケケケケケ! 絶対に止めろ」

メラがマジトーンで止める。

(アイスヒートとアオユキ様、どちらも頑固な面があるから、下手に話が拗れて争いになったらヤバイだろ……)

アオユキはレベル9999で、単騎での戦闘よりテイムしたモンスター達を指揮して戦う方が強い。

だが単独で戦えない訳ではない。

アイスヒートはレベル7777で炎や氷を自在に操り、単独&複数の敵どちらとも戦える力を持つ。

その2人が激突したら『奈落』にどれだけの被害が出るか想像もつかない。

2人ともライトに忠誠を誓っているため、彼に迷惑をかけるようなマネはしないと思うが……世の中に絶対は無い。

(ご主人さまのためにも、少しでも不安要素は消しておくべきだな)

胸中で敬愛するライトの姿を想像しつつ、メラは不満そうな表情を作るアイスヒートを説得するため口を開く。

「ケケケケケケ! 別に猫っぽいアオユキ様に自室で寝泊まりしてもらわなくても、本物の猫を用意すればいいだろ」

「アイスヒートもそれは考えたが、か弱く小さな生き物を飼うのは難しいからな。ユメ様の情操教育のためならともかく、アイスヒートのために飼うのはちょっと……。愛玩動物の世話をするなら、その時間をご主人様のために使いたい」

アイスヒートの主張にメラも同意する。

愛玩動物を飼って世話をするぐらいなら、その時間をライトのために使いたい。

だからと言って、『奈落』で一番猫っぽいからと言ってアオユキを拉致するのは却下だが。

「ケケケケ! なら世話が必要ない猫を貰ってくればいいんだよ」

「……アンデッド化でもするのか?」

「ケケケケケケ! 発想が怖いわ!」

アイスヒートの指摘にメラが思わずツッコミを入れる。

メラは咳払いをしてからアイデアを口にした。

そのアイデアとは――。

☆ ☆ ☆

「こちらの座っているのも可愛いが、こちらの寝っ転がっているのも可愛いな」

「にゃ~」

「…………」

スズ自室、リビングのテーブルに彼女自作の猫人形が並べられる。

スズの趣味は人形作りだ。

テーブルには彼女が自作した人形が並べられ、アイスヒートとアオユキが楽しそうに見て比較する。

彼女達の感想に製作者であるスズも嬉しそうな表情を浮かべていた。

「ケケケケケ! 悪いな猫の人形を譲って欲しいなんて言って」

『イヤ、気ニスル必要ハナイゼ、めらノ姉サン。相方モ、大切ニシテクレル相手ニナラ喜ンデ譲ルッテ話ダシ。褒メテモラエテ嬉シソウダシナ』

メラは本物の猫ではなく、人形の猫を代用品にする案を出したのだ。

スズが人形を作っていることは知っていたので、お願いをすると彼女は心よく了承してくれた。

最近はライトの人形を作り過ぎているため、他の人形を他者に譲ることでスペースを確保。

そのスペースにさらにライトの人形を置けるため、双方にとって得な話だった。

ちなみにアオユキがなぜこの場にいるかというと……彼女の趣味は猫グッズを集めることだ。

なのでどこかから話を聞きつけたのか、興味を持ち、いつの間にか参加していたのである。

「この柄の猫も可愛いな!」

「にゃ!」

「…………」

女子3人が集まり仲睦まじく人形を選び、出来を褒める。

その姿にメラは上手く収まる所に収まったのを確認して、安堵の溜息を漏らしてしまう。

『……ゴ苦労様、めらノ姉サン』

「ケケケケケケ! これも全てご主人さまのためだからな」

普段、スズの面倒を見ているロックが、アイスヒートの件で苦労するメラに奇妙な親近感を覚えてしまう。

華やかに楽しげに猫人形を選ぶ美少女達とは別に、彼女達から離れた位置でインテリジェンスウェポンとメラが種族を超えて互いに親近感を持ってしまったのだった。